「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その2
『わかりました。
静葉ねえさまにそちらに行ってもらいます。
葛葉ねえさまは武道棟1階の更衣室へ。
すぐに着替えを持って行かせます』
そう答えながら、なにか釈然としない感じが…。
あれ? なんだろう、なんかちょっと違和感?
………葛葉ねえさまの説明が理路整然としすぎてる?
そう思った私は瞬間的に嘘をついていた。
今、静葉ねえさまは、
検非違使の組織人員をそっくり引き継いだ
飛鳥コーポレーションのラボに出かけていた。
新兵器の起動試験に
静葉ねえさまぐらいの霊力がないと危険なのだそうで、
今後、第1、第2契約者たちが擁する
聖人たちとの戦いが激化するまえに
どうしても実用化しておきたい心霊兵器らしい。
急に決まったことで
静葉ねえさまがどこにいるか、
葛葉ねえさまは知らないはず…。
名指ししてきたということは
もし何か裏があるとすれば、
静葉ねえさまがターゲットな可能性が高い。
「静葉ねえさまに秘匿回線で連絡入れて。
連絡が取れたら、別命あるまでラボで待機するように伝えてね。
Qちゃん先輩、あとはよろしく。
三狼、いっしょにきて」
指揮所をあとにすると、厨房へ向かう私に、
「更衣室は反対方向だけど?」
と三狼が聞いてくる。
「ねえさま、お腹もすいてるだろうから
油揚げをもらってこようと思って」
ホントは、私の守護狐さまの葛葉ねえさまのこと疑ってるなんて言えない。
万が一違ってたら、今後の士気にも関わるもん。
とはいえ勘が当たっていたときのことを考えると
三狼には少しは緊張していて欲しい。
「まあちょっと気になることもあるから…」
三狼が背負っている狼部司の証
六尺斬馬刀を見ながらつぶやいた。
つづく




