「豪快! 両国夢想」第4話「在住奪還作戦」その8
「霊的なモノだし、まあそうだろうな」
化野弾正ナントカ音音と紹介された女の子は、
そうつぶやいたあとくるっと後ろを向くと、
弾正府の船シノダに向かって、
「葛葉ねえさまっ~~!」
といきなり叫んだ。
すると船のほうからふわふわとこっちに向かってなにかが飛んでくる!
長い髪と金色のケモノ耳と複数の尻尾…、
巫女装束に身を包んだ彼女が
弾正府の五尾の狐の葛葉さま…。
妖狐九尾の狐が変化した殺生石から生まれた
3人姉妹の一人だって、
以前かあさんに教えてもらった。
妖狐ではなく善狐に属した、
とても優しい方だとも言ってた。
「はいはい。
飯綱の珠ですね~。
確かに彼から大きな力を感じますので、
あるのは間違いないのです~」
在住の傍らに降り立った葛葉さまは
手をかざして飯綱の珠がどこにあるか探し始める。
「……たぶん、左腕の内側にあるんじゃないかな?
在住、そこになんかあるって気にしてたから…」
前に在住が言ってたことを、ふと思い出した私がいうと、
葛葉さまが在住の左腕を集中して探し始める。
「あ、あったのです~♪」
葛葉さまはそう言うと、そのまま手を在住の腕に当てると、
ずぶずぶと中につっこんでいく。
(心霊手術…こんなこと本当にできるんだ…)
「く…っ…」
在住が少しうめくと同時に静葉さまが珠を掴み出した。
「これが飯綱の珠…あっ!? …これ母様の…」
そう言った直後に珠が金色に輝きはじめ、
光が収まるとすでに葛葉さんの姿が消えていた。
「ね…ねえさま…?」
音音さんが驚いたように呟く。
まったく意外な出来事だったようで、
その場が一瞬騒然とする。
そこに船から猛スピードで飛んできたのは
葛葉さんと同じように巫女服を着ている
ケモノ耳に1本尻尾のツインテールな小学生ぐらいの女の子。
「今、一瞬かあさまの気配がしたけど…
葛葉ねえさまは? 飯綱の珠はどうしたのですか?」
と音音さんにまくし立てた。
「瑞葉…じつは…」
音音さんから、てきぱきと事情を聞いた瑞葉という名の少女巫女は、
しばらく考えたあとに、
「飯綱の珠の正体はかあさまのメモリーで、
葛葉ねえさまが乗っ取られた可能性が高いのですっ!」
と叫ぶと、
「急いで弾上府に戻らないと、
静葉ねえさままで取り込まれたら、
間違いなく妲己かあさまが復活してしまうのです!!」
つづく




