「豪快! 両国夢想」第4話「在住奪還作戦」その5
…なにこれ…。
「南関東ガス田から採取したガスに点火した。
この江戸川ゲットーのガスタンクの多さは、
お前達も知ってるだろう?
あれがすべて爆発してるんだよ。
みんな火の海に飲まれればいい。
もう江戸川ゲットーはおしまいだ。
みんな死ぬんだよ、あはははははっ………」
音もなく跳躍したタチアナが艦長の脇に降り立つと、
銃を構えようとする兵士を一瞬でなぎ倒した。
そしてその細くて小さな腕で艦長の襟首を掴んで持ち上げたかと思うと、
「死にたいなら一人で死ね…」
と呟いて水の中に放り込んだ。
「アメ連兵士諸君、
貴官らの指揮官は死にたい気分らしいが、
おまえたちまでそれにつき合うギリもなかろう?
今から10分攻撃を停止する。
貴様らもゲットーから脱出しないと死ぬことになるぞ」
それだけ言うと踵を返してこっちへ戻ってくる。
「ここは危険だ。
こちらも一旦本部まで引く。
少尉、脱出経路を割り出せ」
戻ってきたタチアナは、テキパキと指示を出したが、
「自爆とはな………宗谷を使ったのは失敗だったか…」
と呻くように言った。
「本部に戻るよりも、この周囲の建物を破壊して、
火よけ地を作った方が…」
「火災旋風が起きたら…」
「出来るだけ大きな空き地を作るしか…」
「弾薬が足りないが…」
スタッフが脱出案を検討しているが、
決定的な策が出せない。
広げられた地図には、ガスタンクの位置が赤字で書き込まれているが、
それはある程度の間隔をあけてあったが、
ゲットーの周囲をぐるりと囲むように配置されていた。
「…こ…こんなに…!?」
「住民に心理的圧迫感を感じさせないように偽装してるものもあるからな」
足元でこんなことが起こってたなんてぜんぜん知らなかった…。
でもこれが同時にバクハツして火災になったら、
火災が火災を呼び、間違いなく火災旋風が起こって…。
つづく