「豪快! 両国夢想」第4話「在住奪還作戦」その1
第4話
弟・在住を追い、
南東に向かうヴォスネンスキー鬼兵団の軍用トラックの中で、
だまって俯いているわたしにネバダが話しかけてくる。
「…ボクの両親はリベラルアメリカのエージェントで、
10年前のあの日、
ボクは両親からエージェントになるか、
帰国するかの選択を迫られたんだ」
10年前のあの日―――。
あの日、鎌倉と横浜の間にある山で大きな爆発があって、
東京湾に向かって大きな穴が開いた。
公式には隕石が落ちたことになってるけど、
一説ではマイクロブラックホールが衝突したとも言われてる。
その年、サハリン共和国が北海道、
五族共和国連合が富山に侵攻し、
日本政府の要請を受けた在日アメ連軍と太平洋艦隊が参戦した。
自衛隊と交戦していた共和国連合軍は撤退を余儀なくされるが、
安保条約を結んでいるアメ連参戦は、
どう考えても織り込み済みのはずだったので、
巷にはアメ連のシナリオによるフリだったのではないかという憶測も流れていた。
「エージェントになるなら、
誰にも何も言わないということが条件だった。
それが出来ないなら、本国に帰国するしかない…。
だから凪にも何も言えなくて…」
「………」
「今は信じてくれなくてもいい…だけど…
”飯綱の珠”はアメ連には絶対渡せないんだ。
アメ連が”珠”の力を使ったら、
アメ連のバックにいる第二契約者が世界を支配して
中世のような暗黒時代に逆戻りしてしまう…」
「暗黒時代…? ……そんなことどうでもいいっ!」
「よくないっ!」
側で聞いていたタチアナは言うと同時に私の頬を軽く叩いた。
「っ…」
睨み返す私に、タチアナがまっすぐに私を見る。
「ふざけないで。
世界が終わったらあなたの大切な弟も何もないでしょ!」
つづく




