「豪快! 両国夢想」第3話「在住と飯綱の珠」その11
「あ~もう…」
パニックで頭の中が真っ白になってる私の後ろから
女の子の声が聞こえてくる。
「まったく何してんだか。衛生兵!」
振り返るとそこには茶髪のツィンテールを風になびかせた
タチアナ皇女大佐が仁王立ちしていて、
数名の兵士が周辺を警戒してた。
いつの間に!?
そんな私の疑問をよそにタチアナはネバダに話しかける。
「貫通してるみたいだけど、その傷で戦えるか?」
衛生兵が止血など応急処置をほどこしてる。
「……大丈夫だ…それよりそこの子の手当てを頼む」
「クライアントからの依頼とあれば」
すでに他の衛生兵が
蘭の傷の具合を調べていて、
号令一下、圧縮空気を使った簡易医療テントを膨らまし、
蘭を中に運び込んだ。
他にも何人か機材を持った衛生兵がテントに入っていく。
「蘭…」
「安心しろ、ウチの軍医は死ぬ患者は治療しない」
「―――あ、ありがとう」
よかった、蘭は大丈夫なんだ……。
そこに路地から軍用のトラックが出てきて私たちの前に止まった。
「じゃあ、我々は追撃に移ろうか…」
ネバダにそう告げて荷台に乗り込むタチアナ。
続いて乗ろうとするネバダに、
「私も行く…」
と言って私は荷台に乗り込んだ。
「な、何言ってるんだ。
凪は店で待って…」
「聞こえなかった? 私も行くの」
そうここにいてうろたえてても在住は救えない。
だったら今は行動するしかない。
幼なじみのネバダにどんな秘密があったとしても…。
第3話おわり
第4話につづく




