「豪快! 両国夢想」第3話「在住と飯綱の珠」その6
蘭のおかげでこちらの事情が分かると、
弾正府の出先機関『みるくほーる』は、
ウチの店との競合を避け高級メイド喫茶へと変貌した。
紹介してもらった弾正府牛部の人たちは、
チームリーダの大黒瑠璃さんを始め
みんな感じのいい巨入の女の子たちだった。
「よろしくお願いいたします」
と言われ、大黒さんが差し出した手を握る。
おやっというような表情をした彼女は、
「私も格闘技するから分かりますけど、
凪さん、相当使いますわね」
と私に耳打ちして、ウィンクした。
やっぱり弾正府の一部門の長ともなると違うなぁ…。
彼女の方が私よりずっと腕は上…。
こんな人たちがガードしてくれるなら、随分安心かな。
それよりなにより、
ウチのお店の売り上げがもとに戻りそうなのが、
死活問題なだけにすっごく嬉しい。
「みるくほ~る」は、
カフェオレ1杯1200円という高級店になっても、
美人で巨乳な上に
ホントはボディガードもこなせるような強力なウェイトレスさんたちの、
胸を強調したかわいいメイド服と
かゆいところに手が届くような接客が大好評で、
以前よりも男性客が増え繁盛してる。
客層がかぶらないおかげで、
お客さんもだいぶ戻ってきてた感じなので、
DYKEの売上げは無事回復しつつある。
今週はSUMOUの興行も探偵仕事の依頼もないので、
ひさしぶりにのんびりしている。
今は休憩時間なので、お店のテレビを見ていると、
お店から歩いて15分ぐらいの森下にあるパン屋さんの
元祖だというカレーパンを紹介していた。
「あ、凪ねえ、ボクこれまだ食べたことないんだよね。
自転車で行けば休憩終わるまでに帰って来られるから、ちょっと出ていい?」
「あ、うん」
仕入れの伝票を集計しながら、ナマ返事すると、
「凪ねえたちの分も買ってくるね」
と言って出て行く音がした。
つづく