「豪快! 両国夢想」第2話「美少女を救出せよ」その6
組長は、震える手でパッケージを破いて取り出すと、
倒れている子分たちに注射する。
すると倒れたままの子分たちの筋肉がビクビクとケイレンし、
体が変形し始める。
「これは…まさか…ディアボロ…」
ネバダが呻くように言うのを横で聞くあいだも変形は続き、
むっくりと起き上がった3人の額にはそれぞれ違った形の角が生えていた。
闇市場では相当な高値で取引されていると言われる鬼化ウィルス・ディアボロ…。
こんな小さな組が持つには分不相応な代物だし、
まして、あんな子供がどうして……。
「やれ、やっちまえっ!」
ボスに言われるままネバダに襲いかかる鬼たち。
ネバダが大きく手を開いて突進を押さえ込むが、
いかなSUMOUレスラーとは言え、複数の鬼たちの突進を止めるのは難しい。
抑え込もうとして、頭や肩をボコボコに殴られてる…。
助けなきゃっ! 動こうとした私の横を、何かが掠めていく。
次の瞬間、鬼達が仰け反ったと思うと、
見る間に人間の姿に戻っていく。
背中に刺さってるのは麻酔弾! じゃあ中身はアンジェロワクチン!?
でもいったい誰が、どこから撃ってきたの?
こんな事務所の中の3匹の鬼達にほぼ同時に打ち込める場所なんて、
そう思って振り返ると通りの向こうの路地裏でかすかに人の動く気配がした。
「まったく仕方ないなぁ…。
降りかかる火の粉が自分ではらうしかないんだね」
逸音の服の下で筋肉が波打っているのが見える。
こいつも鬼化するの!?
そう思う間に、また例の麻酔弾が何処からか撃ち込まれる。
でもでも、ぜんぜん効いてないみたいで、変身が続いてる。
え!? これ、鬼じゃない…どんどん毛が伸びて、鼻面が長く…これ…犬…!?
変身し終わった逸音は完全に犬というよりもワイルドな、
狼とでも言ったほうがぴったりくるものになっていた。
つづく




