「豪快! 両国夢想」第2話「美少女を救出せよ」その5
ネバダってば超ド級の英語コンプレックスで、
そのひと言を言われると、
言った相手をフルボッコにしないと収まらない。
肩で息をして、耳まで真っ赤になったネバダが四股を踏み始め、
蹲踞の姿勢を取ったと思った瞬間にその男は舎弟たちごとは吹き飛ばされ、
道の方々に倒れて唸っていた。
うわー、なんて早いすり足っ!
英語が苦手なネバダ本人は言えないけど、
必殺技『Velocity-of-light squatting (光速すり足)』!
素人がくらったら骨は何本か折れてるはず…。
「え~と、みんなあばらとか折れてるだろうから、
早くお医者さんに言った方がいいよ…」
なんとか意識のあるその男にそう言ってから、
まだ肩で息をしてるネバダの肩に手を置く。
「どう? 気が済んだ?」
「あ…ああ…すまん…オレまた…」
「まあね。でも、こうなっちゃたからには、
弁天組事務所に正面から乗り込んで、当人かどうか直接聞くしかないから」
地図で場所を確認すると、
ここから2ブロックほど離れた場所にあるらしい。
私たちは事務所にむかって走り出した。
弁天組の事務所につくと、
どうやらさっきの連中が電話したらしく、
机やローカーを運び出してバリケードを築いている最中だった。
「…ムダムダ。ネバダ、お願い」
返事する代わりに四股を踏み始めると蹲踞の姿勢を取る。
さっき連中をなぎ倒した「Velocity-of-light squatting 」でバリケードを粉砕すると
事務所の中に乗り込んでいく。
見渡すと、奧に髪は短いけど、例の迦陵逸音そっくりな子と、
その子をかばうようにして立つ、50がらみの男が居るのが見えた。
多分アイツがボスだろう。
子分達がなぎ倒されてしまい、
「くそっ、良い度胸じゃねえか! な、何が目的だっ!
逸音なら絶対に渡さなねえぞっ!」
ドスを震える腕で振り回しながら喚いている。
「あ~やっぱり逸音ちゃんなんだ…。
捜索願いがでてるんだけどーー」
とりあえず、ツブラヤにメールしとこ。
あらかじめ打っというたメールをポケットの中でこっそり送信する。
「--素直に帰る気は…ないよね」
どうしたらいいとばかりに振り返る男を、冷たい目で見たその子が口を開く。
「ほら、ボクのあげた薬使いなよ。
こういうときに使わなくて、一体いつ使うの?」
逸音にそう言われた男は、
「あ、ああ…」
と返事するとポケットから使い捨ての無痛注射器を3本取り出した。