「豪快! 両国夢想」第2話「美少女を救出せよ」その4
「トキサダなら、先週弁天組の宗像さんに身請けされてったよ」
開店の準備をしながら、天草のママ・山田右衛門作が話してくれる。
「みうけ?」
「お金をはらって、自分のモノにすること、かな…」
耳元でネバダが囁く。
「トキサダ、売れっ子だったから手放したくなかったんだけど、
地回りに逆らうのもなんだし、払うモンは払ってくれたからね。
でもまさか、宗像さんがあっちの趣味の人だったとは思わなかったけどね~」
ここまできたら、もう直接当たるしかない、
ママにお願いして描いて貰った、
弁天組事務所までの地図を見ながらお店を出ると、
いかにもそのスジという感じの人たちが数人、
私たちの前に立ちふさがった。
これはもしかして手間が省けた?
「この辺りで何か派手にかぎまわってくれてるみたいだな。
で、ウチのボスのレコに何か用か?」
おおっ~、やっぱり派手に嗅ぎ回ってみるもんだね。
向こうの方から情報持ってきてくれたよ。
逸音がすでに極道の親分に囲われてるとしても、
居場所さえ特定できれば回収はツブラヤが手配するみたいなので、
ここは本人確認さえできればそれでいいわけだし…。
「私たち、家出人の捜索を依頼されてだけで…」
と言って写真を見せると、
「だからそれが問題なんだよ」
リーダー格のひとりがいきなり私の肩に手を回しながら言ってくる。
それを見ていたネバダが男の腕を取ってねじ上げた。
「いてえっ! な、何しやがるっ!」
「女性に失礼なことするからだ」
ネバダが腕を放すと、真っ赤になってがなりたてる。
「ちくしょう!
たかが相撲レスラーの分際で、弁天組にたてつく気かっ!
かまわねえ、たたんじまえ!」
後ろにいた舎弟たちに向かって命令すると、
隠し持っていたドスを取り出してじりじりと距離を詰めてくる。
「大体なんでぇ、ガイジンみたいなナリしやがって、
おめえ英語もしゃべれねえんだよなぁ?」
「…な…なん…だと…?」
あぁ、おじさん、言ってはいけないひと言を言ってしまったね…。
つづく