「豪快! 両国夢想」第2話「美少女を救出せよ」その2
「この子、すっごくかわいい」
仕事の仲介屋ツブラヤから見せられた写真には
この界隈にはいそうもない
美少女が写っていた。
「芸名は迦陵逸音。
まだデビューしてないが、ジョニーズ事務所の
秘蔵っ子だそうだ。こいつを探して欲しい。
見つけたら連絡してくれ。こっちから回収の人を出す」
「で、おいくら万円なの?」
「2000パラ」
見つけて通報するだけなので、
探偵仕事としてはだいたい相場通りかな。
「OK。じゃあ発見したら連絡する」
「この器量だ、傷モノにならねえうちに見つけてくれ…。
オレはここで一服してから帰るよ。じゃあな」
こんな仕事さぼり放題のオヤジが店主で、
家業の魚屋『うる寅』は大丈夫なのかな?
なんて心配しながら、川沿いを両国方面へ向かってあるいてると、
進行方向に見慣れた人影がいるのに気付いた。
「涅芭陀~~!」
上限の月を模った大銀杏を結い、
浴衣姿なので一見して『Oh! SUMOU』の相撲レスラーだって分かる。
金髪碧眼と、見た目はアングロサクソンなので
生粋のアメ連人なのかと思うけど、
母親が日本人なハーフで、日本育ちなので英語はからっきし…。
家が近所だったので、子供のころは良く一緒にあそんだ幼馴染。
大学出たあと相撲部屋に入門して、
今では東の大関を張っている。
「よう、凪、こんなとこで奇遇だな」
「うん。どこ行くの?」
と聞くと、トレーニングでウォーキングの途中らしい。
これから海岸のドヤ街=この江戸川ゲットーでも
かなり治安が悪いので有名な簡易宿泊施設街、に聞き込みに行こうと思っていたとこなので、
ボディガードに丁度いいかもと思った私は、
「せっかく会ったんだから、ちょっと付き合いなさいよ」
と強引に腕を取って歩き出す。
「えっ? えっ? あ、ああ…」
予定の行動を邪魔されて気になるのか、
ひっぱられながら、上流の方をちらちら見てる涅芭陀。
うる寅のオヤジが苦笑してるのが見えた。
つづく