「豪快! 両国夢想」第2話「美少女を救出せよ」その1
DYKEのある場所からさほど遠くない所に、
「みるくほ~る」という喫茶店ができた。
ガールズカフェなウチと違って、
メイドカフェぽいこと以外は、
いたってノーマルな喫茶店なので、
競合しないと思ってたけど、ウチより国技場に近いので、
SUMO開催時のフツーの女性客を持って行かれることが
今週の売上げからハッキリした。
「秋場所中だったのに、売上げ、いつもより3割も減ってる感じ…」
「――どう考えても『みるくほ~る』のせいだね。
美人ウェイトレスさんが多くて、いっつも混んでて、にぎやかだし…」
「も~っ、人ごとみたいに……。
ウチが儲からなかったら、在住くんのバイト代だって減っちゃうかもだよ」
「そ、そんなぁ…。
じゃあ、ウチも美人ウェイトレスさん雇って対抗するとか?」
「そうだね…」
確かに美人ウェイトレスが入れば、
その子目当ての女の子も増えるかもしれない。
だけど、ここゲットーで美人とか、カワイイ子となると、
他に稼げる商売が沢山あるだけに、
フツーの時給しか出せないウチにはなかなか来てくれる人がいない。
「それにしても、あのお店、そんな美人ウェイトレスを多数雇えるなんて、
よっぽど時給がいいのかなぁ?」
「あそこのウェイトレスさんたち、かわいいだけじゃなくて、
ガラの悪いお客さんなんか、ときどき叩き出してるよ」
「へー」
本気で感心しているところに携帯が鳴る。
あ、ツブヤラのおっちゃんだ。
「もしもし」
<毎度。隅田公園ビールジョッキ前。15時でどうだ?>
「じゃ、それで」
ビールジョッキを象ったビルと言えば、この辺では知らない人はいない。
今度はどんな探偵仕事を斡旋してれるんだろ?
つづく