「豪快! 両国夢想」第1話「相続人を探し出せ」その11
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私たちは、依頼主であるツブラヤに連絡を取ると、
指定された待ち合わせの場所・錦糸町の猿江恩賜公園に急いだ。
そこには、ツブラヤと
アタッシュケースを持った黒服十数人がすでに待ちかまえていて、
カーネル様から藤谷老人を受け取ると
真っ黒いバンに乗せ、あわただしく去っていく。
「どちらが取るのかは、話し合いで決めてくれ」
ツブラヤは、ジュラルミンケースの蓋を開け、
私たちに中身を確認させる。
「んじゃまた頼むわ」
と言うと例のアルティメットなヘルメットをかぶりカブに乗って走り去った。
「半分づつでいいかな?」
というカーネル様の申し出にコクリと頷く。
500枚あれば服が買えるだけにぜんぜん文句なし。
もとよりカーネル様の意見に異論なんてあるはずもなく…。
「私なんか何もしてないのに…」
しおらしく言う私にパラジウム貨500枚の詰まったケースを持たせる。
「カーネル様…▽」
ボーとしている私に、
「じゃあ、また会おう!」
そう言うと颯爽と走り去っていく。
アタッシュケースを抱きしめながら、
暫く幸せな気分で後ろ姿を見送った私だった。
そんな私のしあわせ時空を破壊するように、
江戸川自治政府の地域防災用拡声器から、
時報代わりの音楽が聞こえてきた。
――ってことは、DYKEの営業時間じゃない!
電車なんていつくるか分からないので、
錦糸町から両国までダッシュする。
瞬発力には自信があるけど、持久力はまるでない私。
DYKEに到着したのは、
営業開始時間を30分もオーバーした17時30分だった。
「ご、 ごめ~~んっ!」
ひとりで留守番してる在住くんがてんてこ舞い状態になってるかと思ったら、
なんと余裕で働いてる。
ちゃんといつも通りお客さんが入ってて、
忙しい晩ご飯時なのに、何故?
つづく