「豪快! 両国夢想」第1話「相続人を探し出せ」その10
そんな感動に打ちひしがれる私に水を差すように、
「お取り込み中のところ、もうしわけないけど、
私たちが先に運び出すトコだったんだけどっ!」
そう言いながら切っ先鋭くつっこんできたのはタチアナ皇女大佐だった。
ふたりともスルリと避ける。
タチアナ、あなたの言うとおり取り込み中なのに~~っ!
「おっと、イキナリご挨拶だな。
先客とはいえ、キミたちVK団に渡したら、
このご老人は抹殺されてしまうだろう?」
タチアナの文句に異を唱えるカーネル様に、
「そんなことは、私たちのあずかり知らぬことっ!」
となおもサーベルを稲妻のように走らせる。
その鋭さは、ぜいぜい胸の発育の悪い中学1年生ぐらいにしか見えない少女から
繰り出される斬撃とは思えない。
ロシアの皇帝ニコライ2世の娘で、
1897年生まれという、
彼女につきまとうひとつの都市伝説も本当なのかもしれない。
――なんて考えてたら、切っ先はこちらに向かってきて、
危なく串刺しにされそうになる。
「か弱い少女と戦う事は出来ない! ここは…逃げよう!」
「はい!」
タチアナが、か弱いかどうかかはなはだ疑問だけど、
カーネル様が言うならきっとそう。
私たちは一目散に寺院の入口に向かう。
タチアナが追いかけてこようとしたが、VS団の手下たちがダイブッダに手間取っているのと、
新手の坊主レスラーに行く手を阻まれて断念したようだ。
「覚えてらっしゃいっ!」
タチアナの捨て台詞が背後から響いた。
つづく