「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その33
このトリガーを引けば
軌道軸線上にいる艦船は壊滅的な打撃を受けるだろう…
それはイコール大勢の人命を奪うことに他ならない…。
だけど、彼等を引かせない限り、
鎌倉府を存続させることは出来ないだろう…。
(そんな矛盾は、
最初からわかって覚悟してたはずなのに………、
私の手はもう血で染まってるのに…)
一瞬発射を躊躇した萌が、
深呼吸してトリガーを絞ろうとした瞬間に、
「萌っ! 来るっ!!!」
という華子の声と
ガンという衝撃音が同時に響き渡り、
蓮華王がきしみ、その巨体が後方に向かって倒れていく。
「――な、何っ!?」
「センサー類がダウンしてるっ。
再起動まで15秒――」
華子が現状を報告するものの
モニタもブラックアウトして状況が掴めない。
その間も蓮華王への打撃音と衝撃は止まず
そのモニタが歪み始める。
「れ…蓮華王の装甲を素手で…」
モニタに亀裂が走り、
そこをこじ開けたルーズベルトの顔が覗き込む。
「--っ!」
「こんなあぶないオモチャは
君みたいな子供が遊ぶものじゃない」
亀裂に手をかけこじ開けようとするルーズベルトに、
「あんたなんか
ぬいぐるみの熊といっしょに墓の中で寝てればいいものを!」
華子が喰ってかかるが、
まったく意に介せず手を差し込んでくる。
「悪い子にはお仕置きが必要だ」
その指がもう少しで萌の首に掛かりそうな位置にまで
蓮華王の装甲の裂け目が拡がっていた。
つづく