「豪快! 両国夢想」第1話「相続人を探し出せ」その7
「ロゴスキー、まだあかないの?」
腕組みして、偉そうにしゃべっている彼女、
う~ん、以前どこかで見たような…。
あ!? そうだ!! タチアナ皇女大佐っ!
じゃあ、あのおっさんふたりは傭兵集団のヴォスネンスキー鬼兵団ってこと?
帝政ロシア時代のタチアナ皇女付連体がもとだって言われてるこの兵団は、
日本がまだ独立してた10年前には、
ディアボロウィルスで鬼化されていたという特殊部隊で、通称はVS団。
荒事はオテノモノだって聞いてる…。
一般人には都市伝説の類だと思われてるけど、実在する団体なんだよね。
ったく何? ツブラヤこんな物騒な連中にも依頼したの?
どちらにせよ、商売仇なのは間違いない。
しかし藤谷のおじいさん、こんな連中まで出てくるなんて、
いったいどんだけの遺産を相続するんだろう。
カチャ…。
私の思考を中断するように静かにドアの開く音がして、3人が中に入っていく。
あっ! これってもしかして大ラッキーチャンス?
続いて中に入ると廊下に荷物の積んである場所が目に付く。
誰か来たらここに隠れれば良いかと見当をつけて、
連中が藤谷老人らしき人の入った独房を開錠するのを待つ。
ドアが開き、中から藤谷老人を抱えた男たちが出てくるのを見て、
非常警報ボタンを押した。
ヴーヴーという耳障りな非常警報が鳴り響く。
「チッ、急げっ!」
タチアナが中のふたりに向かって叫ぶのと、
警備員と坊主たちが駆けつけてくるのはほぼ同時だった。
唯一の脱出口=非常階段への血路を開こうと男の一人が警備員に体当たりしていく。
VS団の男ふたりはのんびりした見た目とは裏腹に相当場慣れしてる。
その上、そのパワーは相当なもので、
警備員たちを簡単に蹴散らすと、階段を逃げていく。
それを追って階段を上がっていく警備員たちのあとを、私もこっそりとつけていく。
1階に上がると、廊下はすでに気絶したり呻いたりする警備員や坊主たちで一杯だった。
それを踏まないようにしながら先に進むと、
ダイブッダとその弟子らしい体格のいい坊主たちがタチアナたちの前に立ちふさがっていた。
藤谷老人は、廊下の壁にもたれてぐったりとしている。
にらみ合いの均衡を崩すように、ダイブッダの弟子の一人に変化が現れる。
額から角が伸び、筋肉が異様に盛り上がっていく。
それに応えるように、VS団のふたりが鬼化していく。
それを4人がかりで抑えようと襲い掛かり、もう一人がタチアナに襲い掛かろうとしていた。
その8につづく