第八話
この国には立ち入り禁止とされている巨大な区域がある。通称『デス・カントリー』。略して『デスカン』と呼ばれている。
この世界にはそのデスカンに調査しに行く『デスカン調査団』という人々が居る。
天は暗く青空を見ることも出来ないデスカンにおいて彼らが掲げた目標は一つ
“蒼天を突け”
女性は怪物から飛び降りて、地面に銃を吐き出した。
「あんた中々のやり手ね…?」
「あの距離から当てるあなたの方こそ。」
数秒睨み合うと、次の瞬間僕の刀と、女性の隠していた刀がぶつかりあった。
「僕は愛野 蒼。あなたの名前は?」
「名前なんてない…“アミノ”とでも名乗っておこうか。」
そう言うとアミノはその場から姿を消した。
「『透明化』か…」
基本、魔法はデスカンで数年をすごした人物に付与される。
そんなことを考えていると、背後からナイフが飛んできた。気配を感じて、手で柄の部分を掴んだが、間一髪だった。
「アミノ、悪いけど僕はもう手加減できない。」
刀で周りの建物を切り刻んで、自分に当たらないように空から降らせた。すると、一箇所だけ瓦礫が避けられている部分があった。
「そこか!」
降ってくる瓦礫を避けて、その部分を刀で真っ二つに斬った。だが、それは縦に積まれただけの石だった。
「石…!?」
瓦礫がやみ、油断した次の瞬間、背後からアミノが襲ってきた。ピストルを数発撃ってきて、その内五発は避けられたが、一発が横腹に直撃した。
「っあ…!」
「余計な手間を…!」
そう言うと、アミノは僕の頭にピストルを撃とうとした。だが、近寄ってきた星香の攻撃を受けたことで隙が出来て、もう一度立ち上がれた。
「逃げろ!星香!魔法を使える人物に勝ち目は無い!」
「じゃあ…時間を稼ぐ!」
最早耳に入っていない様子だった。スーツに搭載された攻撃向上で星香はアミノに猛攻をし続けた。
「そこの蒼の横腹も治ってる…そのスーツ、何か核があると見た。」
そう言うとアミノは集中的に心臓を狙い始めた。パワードモードで向上した脚力で、大ジャンプをし、攻撃を避けたものの、着地すれば隙ができてしまう。
アミノがピストルを構えた瞬間に、弘太と美玖が短刀でアミノに攻撃した。
「やめろ!美玖はダメだ!」
アミノは少しパニックになり、そこら中の物をピストルで攻撃した。壁に当たって音をたてた。
「近づくな!私に近づくな!」
そうしているうちに、僕たち全員がアミノを囲むようにして立った。そして一斉に襲いかかった瞬間、アミノはニヤリと笑った。
「『透過』」
瞬間、アミノは消えた。そう、姿だけでなく肉体すらも、消えたのだ。寸前で全員が攻撃を止めたので、全員が無事だった。
だが、次の瞬間どこからか、アミノの声が聞こえた。
【正直舐めていた…だが私は元々保険があった。そう、私の魔法を『透明化』だと思ったのはお前たちだけであって、実際の魔法は『透過』、存在をこの世から消すことも出来る。】
すると、少しアミノの声が遠く、小さくなった。
【私は一旦撤退するとしよう。流石だよ、未成年隊。だが、洗練された大人には歯が立たないんだよ。】
こうしてアミノは撤退して行った。噛み砕けない嫌悪感だけがそこに残ったのだった…
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