第六話
この国には立ち入り禁止とされている巨大な区域がある。通称『デス・カントリー』。略して『デスカン』と呼ばれている。
この世界にはそのデスカンに調査しに行く『デスカン調査団』という人々が居る。
天は暗く青空を見ることも出来ないデスカンにおいて彼らが掲げた目標は一つ
“蒼天を突け”
【そこのガキの…父親ァ?意味がわからねぇなぁ。子より父の方が強えって?おかしな話だぜ。歳いったジジイが何できるってんだ!!】
言い途中で内山ヒビキは十本の触手で攻撃してきた。だが、気づくとその触手は全て細切れにされていた。そして顕になった顔面にも切り傷が入った。ここで一つ紹介させていただきたい。父さんは『最強人類』と呼ばれる人類最強の隊員なのだ。
【うっぎゃぁぁぁ!!】
「男が喚くなよ。そんな傷程度で。」
【…そんな傷ゥ?】
引っかかったように内山ヒビキは怒った顔を触手の間から覗かせながらこちらを見た。
【人間ってのはよォ自分が楽しめりゃいいんだろぉ?じゃあその対照に嫌なことはなんだ?“楽しい”の反対は“死”か?違う!“苦しみ”だ!かすり傷でも、心の傷でも人間は苦しみが嫌なんだろ!?】
「ふざけるなよ!!」
父さんが驚いたように叫んだ僕を見た。
「人間に寄生する事しか出来ないお前が、人間を語るな!人間は自分の楽しさのために生きているんじゃない!」
【何が違ぇ!人を助けるのも見返りを求めているから!死んで助ける?そりゃありもしねぇ天国に行きてぇからだろ!どれを取ったってお前ら人間は自己中心的じゃねぇか!】
「“内山ヒビキ”と言ったか。親バカかもしれんが、蒼の言った通りだぞ?」
【ぁんだと!?】
「お前人じゃないんだから分からないだろ。人にはな、“愛”という感情があるんだよ。愛があるから人を想い、助ける。人を助けるのは天国に行くため?まずだな、天国や地獄は倫理観を人に押し付けたい馬鹿の言うこと。それは合ってるかもしれん。だがそんなことは誰もが知っている。だからこそ人を助けるんだ。」
【意味がわかんねぇよ!】
「人じゃないからな。」
父さんは長い刀を持って内山ヒビキに突っ込んで行った。攻撃してくる触手を切り、かいくぐり、そして内山ヒビキの目の前まで近づいた。
【来るんじゃあねぇぇぇぇ!!】
「せいぜい存在しない天国に行けるよう祈っておけ。」
そういうと、足の付け根辺りに刀をさして、首元まで上げて殺した。
「ふぅ…何事もなく倒せてよかった。」
「なんでだ?結構軽々倒してるように見えたけど。」
弘太の思わず聞いた質問に父さんは答えた。
「確かにそうなんだが、全盛期と今とじゃプロボクサーと赤子以上差がある。今のあいつの触手の本数はおよそ十分の一、そして上半身は顔以外自由に動かすこともままならず、下半身も立っているのがやっとだ。それに、内臓のおおよそは潰れいるし、数年も食料を食べていない。お前達も見たはず、あの死んだ隊員は超貴重だったんだよ。そういう意味じゃああいつに同情しちゃうな。」
僕と同じ刀を鞘にしまいながら父さんは話した。この刀は、実技・筆記テストが満点の人物にしか支給されない国宝級武器の一つだ。
「そういえば明くん、怪我はもう治ったのかい?」
「はい。防護服に搭載されてる細胞再構築の機能で腕を修復させられました。」
「ならよかった。ところで話は逸れるが俺は今はぐれた仲間を探しているんだ。着いてくるといい。」
こうして僕たちの隊は父さんの隊の仲間を探しについて行くことにしたのだった。
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