第五話
この国には立ち入り禁止とされている巨大な区域がある。通称『デス・カントリー』。略して『デスカン』と呼ばれている。
この世界にはそのデスカンに調査しに行く『デスカン調査団』という人々が居る。
天は暗く青空を見ることも出来ないデスカンにおいて彼らが掲げた目標は一つ
“蒼天を突け”
【食われたいか…だと?】
そう言うと内山ヒビキは狂ったように笑い始めた。
【いつでも人間は自分が一番と思っているんだなぁ…でもよぉヒエラルキーの一番上にいるのは人間じゃねぇんだよ…どんな時でも寄生人が食ってやるんだよ!!】
そう言うと少しの明かりになっている、周りの建物の電気を触手で一斉に消した。
デスカンは空がコンクリートで覆われているため、完全に人間の目では何も見えない暗さになった。
【見せてやるよ…死の者として育ってきた俺の魔法『触手』を…!!】
防護服に搭載されている明かりをつけると、触手が周りを囲うようにして張られていた。
その触手はまるでノコギリのように動き続けている。触れれば鋼鉄だろうと関係なく切れていった。
【もうお前らはそこから動けねぇ。たとえジャンプで越えようとしたって上にも触手は張り巡らされてるからな!】
「左右も駄目で上もダメなら…下だ!」
そう言って地面を掘ると地面からも触手が出てきて、星香を狙って進んで行った。
「星香!!」
「これくらいなんて事ないですよっ!」
星香は鈍感で鈍いところがあるが、戦闘になればこの隊でも一、二を争うほどに強かった。
触手をあえて正面から真っ二つに斬ることで、ノコギリのような動きの影響を受けないようにした。
【ほう…女の割によくやるなぁ…】
暗闇の中から嘲笑うように内山ヒビキは言った。だがその余裕は次の瞬間変わった。
「そうやって舐めてるから死ぬんだよ!」
触手の間をくぐってバレないように内山ヒビキの背後に回った美玖が背中に刃を向けた。
が、余った二本の触手によって短剣の刃は抑えられた。
【よくやると言ったのはお前に対してだ。全く…舐めてくれたもんだ…!】
そう言うと内山ヒビキは張り巡らした触手を一点に集め、美玖の腹を狙った。
【まずは肝臓を頂こう。】
「やめろぉ!!」
腹に触れる直前に、何者かによって触手が切断された。内山ヒビキの見えないはずの顔が怒りで歪んでいるように思えた。
【誰だてめぇぇ!!】
「未成年隊か…よくやった。後は俺達に任せろ。」
そういった人物をよく見てその正体に気づいた。みんなも気づいたようで一番初めに弘太が声を上げた。
「おいおい、アンタ蒼の…」
「父…さん…!?」
「久しぶりだな。蒼。」
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