第四話
この国には立ち入り禁止とされている巨大な区域がある。通称『デス・カントリー』。略して『デスカン』と呼ばれている。
この世界にはそのデスカンに調査しに行く『デスカン調査団』という人々が居る。
天は暗く青空を見ることも出来ないデスカンにおいて彼らが掲げた目標は一つ
“蒼天を突け”
「弘太ぁっ!!」
走って駆け寄ると、弘太は「止まれ」というハンドサインをした。
「っ!?」
「待て、蒼。問題ねぇ…ただこいつの正体に驚いただけだ…」
「正体…!?」
ゴクリと唾を飲む音が聞こえるはずもないのに耳に響いた。
「こいつは俺の親を殺したクソ野郎だ…!」
【気づいたか。いいだろう、面白いからな。そのガキにも説明してやれ。】
そう言うと弘太は説明を始めた。
数年前、寄生人である内山ヒビキ(寄生後)はある悩みを抱えていた。寄生人は餓死という概念がないため、飲食の機会は少ないが、あるとすれば主に肉食、その為家畜の肉を好んで食べる。だがその肉が減ってきた。
ある時調査に来た隊員二人を誘拐し、子供を産ませた。そしてその子供を数ヶ月育てたら食べる、というのを何度も繰り返して、あるはずのない食欲を満たしていた。
だがその内、物足りなくなってきた内山ヒビキは隊員を徐々に増やしていき、その数はおよそ百数人にも増えていった。すると当然反逆の意志を持つ隊員が生まれる。そして、その隊員は子供を逃がしていった。
ある程度までは内山ヒビキ自身で始末をしていたが、ある時一人の赤子が調査隊の基地まで辿り着いてしまった。その名は広島弘太。
いよいよ自分の身が危険になってきた内山ヒビキは、数百人にも増えた隊員を一人残らず食らいつくしたのだ。
【この体にもガタが来たからな。ちょうど通りかかった隊員に寄生しようとしたんだが、失敗したんだ。だから殺したんだが、食い途中にお前らが来て見られたんだよ。】
「クソ野郎が…てめぇのせいで俺は!」
【おっと、俺を恨むのはお門違いだぜ?広島弘太。俺が隊員を殺しまくったのも、ガキを食いまくったのも、全部こんなところに生まれたからだ。神に救われなかったんだ。仕方ないんだぜ?】
嘲笑うように言った内山ヒビキに対して怒りが頂点に達した。
「救われないと喚く前に努力をしたらどうだ!マイナスからでも、努力は報われるんだ!」
【マイナスからゼロになる事を報われるとは言わねぇんだよ!てめぇらゼロから始まりゃ努力してもプラスになるがな!俺は元がマイナスなんだ!俺の気持ちが…お前らにわかるかよ!!】
そこに明が割って入って話した。
「そうやって正当化すれば気が済むのか!所詮てめぇは始めから努力もしねぇクソ怠惰野郎じゃねぇか!」
図星を突かれた内山ヒビキは怒り狂い、憤怒の表情を浮かべて明に近づいた。
【そこの女二人はどけ!そこのガキを今すぐ食ってやる!!】
触手が明に勢いよく伸びていく。だが追いついた。触れる寸前のところで触手を切り裂いた。
「お前…そんなに食われたいのか…?」
弘太は感じていた。蒼の言葉に表せないほどの怒りを。
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