第二十四話 『最期の戦』参
「お前……一体誰なんだ?」
ピンチだが、思わず土曜日の主が聞いた。サンの生まれ変わりなのか、とは思っていたものの、実際のところどうなのかは気になっていた。
すると男は少し考えるようにしてから言った。
☾︎言うなれば、貴様らに対して送った使いを全て吸収した姿というのが良いか……ふっ、どうせ暇だ。いいことを教えてやろうか?☽︎
つまりサンであることに変わりは無さそうだ。だが、いいこととは何なんだ。こちらの返答を聞く前にサンは話し続けた。
☾︎私が送った使いは各曜日の世界に長く居続けた影響でその世界との結び付きが深くなっている。その為、時間が経てば経つ程どんどん曜日の支配は楽になっていく。☽︎
そう聞いた瞬間に、主同士がくっついている『磁石』の能力を無理やり引き離して金曜日の主がサンに向かって突撃した。
金曜日の主の刀がサンを貫こうとするが、飛び上がって軽く避けられてしまった。
☾︎身体能力も並大抵のものではない。☽︎
そう言うと気がついた時には金曜日の主は蹴りを入れられて吹き飛ばされていた。
「大丈夫か!?」
「あぁ……」
一秒でも早く手助けをしたいが、どうにも『磁石』の能力を引き剥がせない。何故なんだ、そう思っていた時サンが言った。
☾︎磁石でくっつけられていたのは愛野 蒼……金曜日の主以外だ。金曜日の主はわざと能力の効果を弱めてあった。つまり何が言いたいか分かるか?見せしめだ!!!☽︎
「やらせるか!!!」
『創造破壊』の能力でとにかく作れるものを何でも作ってサンに向かって投げつけた。ほとんどが弾いてどこかに飛ばされたが、氷の槍だけがサンの腕をかすって傷になった。
「おいおいおい……そんな単純なことか!!」
思わず全員がそんなことを呟いた。そう、『氷』というかサンの弱点は恐らく『水』なのだろう。気づいた瞬間、『創造破壊』で大量の水をサンに向かって噴射した。だが、サンも流石に一筋縄ではいかない。どうやったのか、水がサンから一定の距離まで近づくと、蒸発してしまうのだ。
「あれは多分魔力を全身から放出してるんだ。サンの魔力は水を蒸発させるくらいの熱が……」
金曜日の主がみなまで言わずにそこで止めた。
「じゃあ魔力が無くなるまで……」
「魔力量は僕たちの総量の倍以上ある。魔力を無くすのは絶望的だ。」
ならば方法はひとつ。どうにかして水をぶつける隙を作るしかない。だがまずは磁石を……そう思っていたが、既に磁石の能力は薄まっていた。先程氷の槍がかすっただけでも相当ダメージがあったのだろう。
一斉に主は磁石の繋がりから離れてサンに攻撃しに行った。
「ある程度距離を取れば磁石の能力は効果がない!距離をとるんだ!」
土曜日の主がそう全員に向けて叫んだ。すると全員が広がって磁石の効果を受けないようにした。
サンの身体能力はほどほどといったところか。力は強いが、動きが遅い。翼を広げてぐんぐん進んで、サンの顎を蹴り上げた。と、思ったが気がついた時にはサンは居なくなっていた。
「どこだ……!?」
「動かないでくれ!」
そう言いながら水曜日の主がこちらに突っ込んできた。何をする気だ!?そう思ったが動かないでいると、水曜日の主は『侵入』の能力で体の中に侵入していった。他の主達もだんだん近づいてきた。
「多分今俺の体の中で……水曜日の主?がサンと戦ってる。」
そう話していた時、『侵入』の能力は解除され、サンを水曜日の主が引っ張り出してきた。
☾︎余計なことを……!!!☽︎
そう言うとサンは水曜日の主の腕を掴んだ。瞬間の出来事だった。水曜日の主の腕は燃やされてしまった。
「ぁぁあああぁっ!!!!」
腕は焼け焦げて黒い棒のようになってしまった。完全に無くなる前に金曜日の主が背中から刀を突き刺して完全に貫通させた。
そこに水曜日の主が乗っかるようにしてサンの体を押さえつけた。
「全員で押さえるんだ!!!!」
もはやパニックな状況で、サンのことを全員が押さえつけていた。サンが暴れて抵抗するが、全員は絶対に話さないように必死に押しつけている。これが最後のチャンス。
☾︎やめろ!こんなことで私を殺せると……☽︎
「バイバイ、神様。」
そう最後に一言だけ言って、『創造破壊』で水の塊をサンにぶつけた。すると、サンの体はトマトよりも真っ赤な、紅蓮の炎に包まれた。
☾︎まだ……私の野望は……☽︎
サンは虚しくそう叫びながら、サンの肉体はボロボロと崩れていった。そして完全に消滅するのを確認すると、水曜日の主が口を開いた。
「やった……やったのか……?」
全員は顔を見合わせて、一気に爆発するような興奮に包まれた。生まれた時からこの世界の全てはサンに支配されていたのだ。サンに送られた九尾によって化け猫達と敵対した。九尾によって狼男達全員が一度死んでしまった。そして悪魔、大蛇、阿修羅はもう二度と会えなくなってしまった。
その呪縛全てから解放されたのだ。全員は喜びに包まれた。
だが突然我に返って思い出した。どうやって日曜日の世界から脱出するんだ?それに、サンに支配されていた月曜日の世界は無事で居られているのか?
そんなことを考えていた瞬間、太陽がある訳でもないのに、天から一本の光が差してきたのだった……
『最期の戦』参 終
「お前……一体誰なんだ?」
『磁石』の能力で主全員がくっつけられている中、近くの土曜日の主がサンにそう質問した。サンの生まれ変わりか何かと勝手に解釈していたが、違うのだろうか。
☾︎言うなれば、貴様らに対して送った使いを全て吸収した姿というのが良いか……ふっ、どうせ暇だ。いいことを教えてやろうか?☽︎
口角を釣りあげてサンがそう言うと共に、頭の中に様々な嫌な憶測が飛び交い、一気に心臓の鼓動が大きくなった。「いいこと」な訳が無い。こちらの返答を聞かずにサンは話し始めた。
☾︎私が送った使いは各曜日の世界に長く居続けた影響でその世界との結び付きが深くなっている。その為、時間が経てば経つ程どんどん曜日の支配は楽になっていく。☽︎
そう聞いた瞬間に、このままでは居られないと思い、気がついた時には『磁石』の能力を引きちぎって刀でサンに襲いかかっていた。
周りを見ずに一心不乱にサンに向かって刀を突き立てた。腹を貫く、そう思ったはずなのに、突然視界からはサンが消えていた。
瞬間、気がついた時には腹を蹴られて吹き飛ばされていた。
「ぁぅっ……!!!」
サンは飛び上がってから腹に蹴りを入れたのだ。あばら骨が「ミシミシ」と音を立てていて、折れているのが分かった。
「大丈夫か!?」
「あぁ……」
まだ戦える。というか、アドレナリンが出過ぎて殆ど痛みも感じなかった。そんな時、追い討ちをかけるようにサンが話し始めた。
☾︎磁石でくっつけられていたのは愛野 蒼……金曜日の主以外だ。金曜日の主はわざと能力の効果を弱めてあった。つまり何が言いたいか分かるか?見せしめだ!!!☽︎
「やらせるか!!!」
遮るように月曜日の主はそう言うと、魔法で作れるものを作れるだけ噴射した。どんなものでもとにかく噴出した。だが、ほとんどが軽く弾かれてどこかに飛ばされてしまっていた。そんな時、中に紛れて氷の槍がサンの腕を目掛けて吹き飛んでいった。
一瞬時間が止まったようだった。槍はヒヤリと冷えた気体を噴出しながら、サンの腕をかすった。誰もが何事もないと思って見ていたが、サンの腕からはトマトよりも真っ赤な血が流れ出た。
「なっ……!?」
そう、サンの弱点は『氷』というより、『水』なのだ。そう気づいた瞬間、月曜日の主は手から大量の水をサンに向かって噴射した。だが、どういう訳かサンから一定の距離まで水が近づくと、ジュワッと音を立てて蒸発してしまうのだ。困惑しながら注意して見ると、サンの肉体から微量だが、魔力が少しずつ消費されているのが分かった。
「あれは多分魔力を全身から放出してるんだ。サンの魔力は水を蒸発させるくらいの熱が……」
そう言いながら恐ろしくなって最後まで言えなかった。あの少量の魔力で水を蒸発させるなんて、物理的に有り得ないはず。なのに、それを可能にしてしまうほどの怪物。
「じゃあ魔力が無くなるまで……」
「魔力量は僕たちの総量の倍以上ある。魔力を無くすのは絶望的だ。」
そう、つまり方法はひとつしかないのだ。どうにかして水をぶつけられるような好きを作るしかないのだ。そう思って突撃すると、他の主たちも続いて突撃していった。恐らく、先程の氷の槍が相当ダメージになったのだろう。
風を切るように進んでいくと、中央の当たりを月曜日の主が一人進んでいった。背中からは漆黒と言う言葉が良く似合う、黒い翼が生えていた。
月曜日の主はそのままグングン進むと、サンの顎をものすごい勢いで蹴り上げた……はずだった。全員がその状況を見ていた。サンは突然姿を消して消えてしまったのだ。
困惑する中、水曜日の主は何かを察したようで月曜日の主に向かって突撃した。すると、自身の能力『侵入』で「ズボンッ」と音を立てて月曜日の主の体内に『侵入』した。
恐らくサンは先程、今の水曜日の主のように体内に『侵入』したのだろう。全員がだんだんと集まって、様子を伺っていた。月曜日の主達が何やら話していた時、『侵入』の能力は解除され、水曜日の主はサンを引きずり出してきた。
☾︎余計なことを……!!!☽︎
そう言ってサンは手を伸ばして、水曜日の主の腕をグッと掴んだ。瞬間、サンは手のひらから紅蓮の炎を放出してサンの腕を燃やしてしまった。
「ぁぁあああぁっ!!!!」
「デスカン教習所」で散々習った。味方が攻撃を受けそうになったら、とにかく敵の動きを止める。真っ先に動いて刀をサンの背中から貫通させた。そこに腕を焼かれた水曜日の主が乗っかってサンの体を押さえつけた。
「全員で押さえるんだ!!!!」
もはやパニックな状況だったが、その一言で全員は、とにかく一心不乱にサンを押しつけた。これが最初で最後のチャンス。
☾︎やめろ!こんなことで私を殺せると……☽︎
「バイバイ、神様。」
月曜日の主は全ての呪縛から解放されたかのような爽快的な笑みで、巨大な水の塊をサンにぶつけた。瞬間、サンの体は赤一色の炎に包まれた。
☾︎まだ……私の野望は……☽︎
サンは散り際そう虚しく叫びながら消滅していった。そして、完全に体が灰のようになって消滅するのを確認してから水曜日の主が口を開いた。
「やった……やったのか……?」
瞬間、全員は顔を見合せてから、爆発するような喜びに包まれた。内山ヒビキが作り出した『デス・カントリー』の中で溢れ出るような怪物たち。今まで何人のデスカン調査団が死んでいったのだろう。何人の市民が犠牲になったのだろう。
その全てがあの博士に仕組まれたものだった。




