写真とナワと眉毛と、君と
写真とナワと眉毛と、君と
生温い夏の夕暮れの中、手には暖かい感触と風呂上がりの匂いだけが残っていた。
「島田くんまた居眠りしてるの?」
目が覚めると私はまた病院にいた。
病院実習中の私にとって睡眠とはあらがいがたいもので、もういっその事寝てしまおうかと考えているうちに夢の中へ飛び込んでしまったが最後。
起こしてもらうまで目を瞑ったままうつろうつろと頭を上下に揺らしている。
また君に起こされた
「寝てたところ写真とっちゃったからね!」
ニヤケながら見つめてくる可愛い顔が私には何となく鼻につくのだ。
「やめろよ」
「うっとうしい」
つい口をついて出た言葉に彼女はきょとんとしながらも未だに私を見つめたままでいる。
私はそんな可愛い君のことをどうしようもなく殺してしまいたくなる時がある。
どうやら合衆国心理学会ではこのような現象のことをキュートアグレッションと言うらしい、
つまり愛情の根底にあるのはどうしようもない独占欲とそれに似た殺意だと言う。
2年前
「島田くんて眉毛ぼっさぼさだね〜!」
君は突然私に話しかけてきた。
驚いた私はとっさに逃げてしまったが君を好きになったのは多分あの時からだと思う。
実習が終わり2人で帰ることになった
意を決して私は告白した
止められなかったのだ
「わたしも好きです...!」
「これからは君の彼女だからね!」
当然振られるものかと思っていた。
予想外の返事だった。
この夢に似た現実が信じられなかった。
明日は2人で何を食べよう、日曜はどこにでかけよう、たこ焼きパーティーをするのでもいいし、ただ散歩するだけでもいいな
そんなことを想像すると嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、
嬉しくて、うれしくて、ウレシクテ、
私は君を殺してしまった。
その時気付いた。
私の腕は君を締付けるための縄で、私の撮る写真は君を永遠にここにとどめるための機械なのだ。
写真とナワと眉毛と、君と