昼休みが勝負なのは気づかない
あの件から少し時間が経ってお昼になった。
給食の時間だ。うちの学校は給食はなく弁当や購買で買う事が出来る。
俺の弁当は至って普通の2段弁当だ。
「誰の手作り?」
そう聞いて来たのはクラストップカーストの柴崎澪だ。常にテンションが高く、黒髪で成績もトップである。
「俺だが?」
「嘘、見えなーい!」
柴崎の後から声を出した村山琴音だ。こいつは柴崎と仲良いギャルだ。成績は何故か普通なのだ。平均より少し高い教科もある。
何故今が5月なのに成績が分かるかって?
それは俺達は高校2年生だからだ。なので少しの情報は陰キャの俺でも知っている。
「卵焼きとか綺麗すぎない?」
柴崎からお褒めの言葉を貰えた。普通の卵焼きだがそんな綺麗かは分からない。
「ほんとだ!あたしが焼くより綺麗じゃん!」
「琴は料理下手じゃん」
村山の言葉に柴崎がそう笑っていた
「澪が上手すぎるんだよ!」
何故か会話が始まっている。しかも俺、空気だし!
「そうかなぁ?」
「なら澪の弁当を見せてよ!」
まだ、食べてないのかよ。そう言えば2人揃って先生に質問しに行ってたな。
「良いよ!」
そう言うと柴崎は自分の弁当箱の蓋を開けるとパンダのキャラ弁だった。
「凄いじゃん!」
村山は褒めていた。俺も綺麗だと思う。何よりパンダは海苔とご飯で作っていると思うがその余白が綺麗に埋まってある。
卵焼きやウインナーそれにレタスもあり彩りも綺麗だ。
「確かに凄いな」
俺の口からはそう出ていた。
「でしょ!」
村山はテンションが上がっている。同じ意見で嬉しいのか。
「私は元々料理とか好きだからねぇ」
柴崎はそう呟いた。
「西園寺も料理好きなの?」
「そんな事はない」
「じゃあなんで、料理出来てるの!」
村山はそう俺に突っ込んできた。
「1人暮らしだからな」
俺がそう言うと2人とも気まずそうな感じになった。
しまった!
この話題は結構気まずくなるのを忘れていた。
「親御さんは?」
「去年に2人とも交通事故で亡くなった」
柴崎の質問にそう答えた。
2人は気まずく俺を見ていた。
「「ごめん!」」
「気にしないで!」
2人の謝罪に俺は慌ててそう言った。
俺達は話していて、弁当に手を出していない。卵焼きを食べようとすると2人の目線が気になった。
「美味しそぉ〜」
村山が呟いている。その目は子供がおもちゃを欲しがる様なキラキラしている。
「食べるか?」
「良いの!?」
俺が聞くと村山は嬉しそうに立ち上がった。
「そんな目で、言われたら無視して食べれない」
「なら、私も!」
俺がそう言い弁当を渡すと何故か、柴崎も卵焼きを箸でとった。
「美味しいー!!」
「これは、私より美味しいかも!?」
村山の感想に柴崎もそう言っている。いや、女子より上手いわけないでしょ!?
「もう1個いい?」
村山が、そう言うのでもう1つ卵焼きを渡した。今度は良く噛んで味わっていた。
「やっぱり私より、料理上手いわ……」
そう村山が落ち込んでいる。
「確かに美味しいよねー、雄也の料理は!」
そう言いながら俺の卵焼きを、勝手に食べていた。
「あれ、いつのまに下の名前で呼ぶ仲になったの?」
「今!」
そう言えばそうだな。俺も今知ったしな。てか、俺の名前知ってたんだな。
「ならさ、澪と2人で雄也の家で料理教えてよ!」
手を合わせながら、村山がお願いしてきた。
「それ、良いね!」
それに柴崎も賛成している。
まぁ、予定もないし良いかもな。
「俺は予定が合うなら別に良いぞ」
「なら、今日とかは?元々澪と遊ぶつもりだったし!」
「それならすぐに、覚えられるから良いじゃん!」
今日か、思ってたより急だな。
「良いぞ、とりあえずは買い出しがしたいからスーパーによるがな」
俺がそう言うと2人は嬉しそうに喜んでいた。そして残りの弁当を食べて、次の授業に挑んだ。
多分、今日教えると次からは忘れられるだろうな。
それに、料理を教え終えると関係もなくなりだしな。元々友達じゃないし。
この思いは後に崩れるのは今の俺には知った事ではない。