5 リストランテの人々
「えっ、十八? 若いねー! ねえねえ、どうしてここで働こうって思ったの? キミもオレたちと一緒で、寮で暮らすの?」
「おい、大和。おしゃべりはいい加減にしろ」
大和さんからわたしは矢継ぎ早に質問されていたけれど、昭さんがいきなり割って入ってきた。驚いて昭さんを見あげる。物事にあまり動じなさそうな人だと思っていたのに、この大和さんに対してだけは別なようだ。
「開店までもう時間がない。仕事をしろ」
「はいはい、わかってますよーだ。なんだよ、ちょっとくらい聞いたっていいだろ。どうせ昭もこの子のこと気になってるくせに」
「はあ? 俺は別に……」
「またまた。久々に新しい子が来たんだよ? ちょっとは喜んだらどうなんだっての。ね、ヨーコちゃん。オレら仲良く仕事できたほうがいいもんね?」
「ええと……はい」
「おい、あんまり振り回すな。とにかく……葉子さんはまだ初日なんだ。あまり混乱させるようなことはするな」
「へーい。じゃあ、またあとで話そうね。ヨーコちゃん」
そう言って、大和さんは木箱をまた持ち上げ食材をあるべき場所にしまいはじめた。
昭さんが、その姿を見ながらため息をつく。
「はあ……すまん。あいつはいつもあんな調子だから、あまりまともな対応はしなくていいぞ」
「そう言われましても」
「いいから。君も仕事を優先しろ」
「はい」
昭さんはきっとすごく真面目な人なんだろうと思った。ただちょっと、怖いなと感じてしまったけれど。
彼もまたすぐ調理台に戻り、作業を再開させる。
「こう見えてもね? 昭はオレと一個しか歳違わないんだー。でも見た目、老けてるだろ? それはあんまり笑わないからだと思うんだよねー」
「大和!!」
「ヒエッ、はいっ。黙ります黙ります!」
食材をしまい終わった大和さんが近づいてきて、わたしにまた話しかけてくる。でもそれを、地獄耳な昭さんがまた目ざとく聞きつけて、鋭い視線を向けてくる。
「あっはっはっはっ!」
奥で料理中の美木料理長が笑いだした。すたこらと逃げる大和さんの姿がおかしかったらしい。わたしはなんだか、この店で働くのが楽しみになってきた。
そうこうしていると「おはようございます」と黒髪をきれいにまとめ上げた女性が出勤してくる。
「早苗さん、おはようございます。今日もよろしくお願いしますね」
「はい、料理長。で、この方は?」
背筋のピンと伸びた、たたずまいの美しい女性だった。じっと見つめられると、なんだか緊張してしまう。もしかしてこの人が……? と思っていると、見計らったかのように美木料理長が言った。
「ええ、こちらがさきほどお話しした田原早苗さんです。早苗さん、彼女は今日からあなたと同じ女給として働く三俣葉子さんです」
「……なるほど」
「葉子といいます。今日から、よろしくお願いいたします!」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
やはり、この人がわたしの先輩となる人だった。
早苗さんはわたしの用意したグラスや水差しを横目でなにげなくチェックしつつ、美木料理長に向きな直る。
「ここから先を教えろ、いうことですか?」
「ええ。そうですね」
「わかりました。では葉子さん、あちらで続きを説明します。来てください」
「はいっ」
わたしは早苗さんについて、客席の方へと向かった。