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第65話 運命

 クラックの死体はパイロの指示のもと、兵士たちが運んでいった。このあとアルミナの魔術師に依頼して諸々処理しつつ情報を抜き出すのだとか。


「フェルド、ニックはまた来るのでしょうか?」

「ああ、おそらくは……でもこの計画に様々なものを使ったうえ、仲間も失った。来るにしてもしばらく後だろう、1年後か、2年後か、あるいはさらにもっと後か……」


 ニックは何を思うだろうか。クラックの言った通り魔族のためだけを思いまたアルミナを狙うのか、それとも。


 どの道魔族が彼らだけだったとは思えないし……


「で、でも!」


 考えれば色々と不安は湧いてくるが。


 アルミナを襲った瘴気は消え、黒幕たる魔族たちも去った。何かと問題は残るし、これから事後処理に追われることになりそうだが、それでも。


「今回の件は……これで、解決ですね!」


 一件落着。戦いは、終わった。


「ああ、その通りだ」


 フェルドもそう言って微笑んでくれた。


「あらためてありがとう、ジュリーナ。君が来てくれたおかげだ。本当に君には感謝してもしきれないよ」

「いえいえそんな! そもそもフェルドは私のためにここに来てたんですし……あ、でもじゃあ、お礼を貰っていいですか?」

「もちろん! 僕ができる限りどんなものでもあげるよ」

「うふふ、ありがとうございます」


 フェルドとのこういうやり取り、なんだか懐かしい。


「それに結局、決め手になったのはこの子ですしね」


 私はポケットの中を指した。中ではクルがすやすや眠っている。


「魔族たちは色々策を用意していて、私もその術中でした。それを乗り越えられたのは、クルのおかげですよ」

「うん、それもそうだ。クルの活躍あってこそだ。クルにもお礼を用意しないとね」

「それならキセノさん任せましょう! きっと大喜びで準備しますよ」

「適任だね、そうしよう」


 その時。


「でもね、ジュリーナ」


 フェルドは言った。


「クルが君と一緒にいたのは、君の聖なる力に惹かれてのことだ。そしてクルが君を見つけられたのは、君がその力を使ったから……あの宿屋街で、僕たちの怪我を『紅の宝玉』を使って治してくれたからだ」

「ん、ああそういうことだったんですか?」

「推測だけどね。そう考えるのが自然だと思う。だからねジュリーナ……クルがこうしてここにいて、僕たちを助けてくれたのも、元をたどれば君のおかげなんだよ。少なくとも僕はそう思う」

「う、うーん? そう、なのかも?」


 まあたしかにクルと出会い、苦しんでいたところを助けて、そのまま連れてきたのは私だ。そういえばクルが使った力も、元は私の魔力を蓄えたものらしいし。


「あの時の出会いは、やはり運命だったのかもしれないね」


 フェルドはさらりと言ってのける。本当にもう、この王子様は。


「君の力、君の優しさが、全てを救ったんだ。誇っていいと思うよ」


 フェルドに言われるとそんな気もしてくる。優しさ、というのはやっぱりちょっとむず痒いけれど。


 でもそう考えるとなんだか不思議だ。なにせあの時あの場所でフェルドと出会えたのは、私が追放されたゆえなのだから。


 元々追放された時からあまりそのことを気にしてはいなかったけど……結果的に追放されたのはよかったのかもしれない。あくまで結果的に、だが。


「さて、サッピールズはまだ戻らなそうだし、そろそろ行こうか」

「え、どこへ?」

「王城だよ。アルミナの人々に報告してあげないとね。それにこの国のこれからを話し合わないといけないし、君への報酬のこともあるだろう?」

「あ、そうでしたそうでした! 行きましょう!」


 アルミナの人々は今度こそ私に感謝してくれるかどうか、なんてのも、まあどっちでもいい。


 私にはもう、大切な人たちと、大切な居場所があるんだから。


────────────────────────────────


 こうして、一連の事件は幕を下ろしたのだった。


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― 新着の感想 ―
「それはあなたの都合だ! 己だけの理屈だ! 種のことを思えば抗うべきだ、あるいは表向き追放を受け入れようと、この国を救うため動くべきだった! 今もそうだ、あなたは個人的な欲望で動いているだけ……!」 …
今ある結界もそのうち消えるだろうし 魔石もお金もないこの国に先があるのかな?
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