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第一話 会社員

その会社員は徹夜明けだった。

地獄のような21連勤をくぐり抜け、1日休みを挟んだ後、最初の出勤。

休日中に自分が担当している案件とは別の案件が大炎上。

自身が受け持つ案件もスケージュールがギリギリでほかの案件など手伝う余裕などないのだが、

全社対応で炎上対応を行うことになったようだ。


朝日を手庇で防ぎながら、朝の通勤ラッシュとは逆方向に進んでいく。

人の流れとは逆方向に進んでいるが、帰るわけでもなく、気分が沈んでいく。

駅中のコンビニでコーヒーと朝食を購入し、会社に戻っていると前方にいる不思議な雰囲気をまとった人間が目に入る。


腰ほどまである長い銀髪。

細身ですらっとした手足。

手に真っ黒な手袋をはめている。

身長は180cmぐらいだろうか。

全身黒のスーツを着ているためか、銀髪がとても目立っている。

雨が降っているわけでもなく、日差しが強いわけでもないが傘をさしている。

その割に周りの人達が何もリアクションしていない。


その格好から、冠婚葬祭でもあるのだろうと判断し、視線を外した。

だが、なぜか気のなる。

どうしようもなく、かの人物の顔を見てみたいと思った。


ちらり、ちらりと、視線を向けながら右前方に移動する。

距離が近くなっていくとその銀髪の光沢が良く見える。

横に並んだ時にみえたその横顔は

精気がまるで感じられないほど白く、シミやしわが一切確認できない。

鼻が高く、おそらく外国人なのであろう。

到底同じ人間とは思えない。


きっと正面から見た顔はさぞ美しいのであろう。

もっと、もっと、近くから見てみたい。

しかし、もっと、もっと、遠くから全体を見たい。


相反する思いを秘め、ふらりふらりと歩いていく。

視線は顔から離せない。

ふらりふらり歩いていく。


会社に向かって歩いていたのだが、どっちの方向に会社があるのかわからなくなった時、

不意にクラクションが鳴らされる。

うるさいな。

もっと顔をよく見せておくれ。

もっとよく魅せておくれ。

この幸せが永遠につづけば・・・・・・・・















対象の観測を終了。

予定通り、対象物の生命反応停止を確認。

次の対象の観測に入る。

銀髪の男はそう呟いて傘を閉じた。

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