第34話 新たな姫6
文化祭からあっという間に時間は流れ、二学期が終わろうとしていた。
期末テストも無事に終わった。中間テストよりもわずかに成績が下がったのは勉強ではなく恋愛に頭がシフトしていたせいだ。来年は大学受験もあるので気を付けねばならない。
「い、いよいよこの時が来たわね!」
その日、俺は彩音と一緒に行動していた。
本来なら学園内で彩音と一緒に行動などありえないが、今日ばかりは仕方ないだろう。そう、今日は新しい”姫6”が発表される日だ。
文化祭も期末テストも終わり、年内最後のイベントは総選挙の結果発表である。
俺にとってこのイベントは最も重要だったりする。なにせ、このイベントの結果次第では今までの努力が水の泡になるかもしれないのだから。
「大丈夫、あたしが選ばれないはずないし」
「……選ばれてもらわないと俺が困る」
「だ、大丈夫だよね!?」
彩音の奴も平静を保てないらしい。
いつもは鬱陶しいくらい強気な癖に肝心なところでヘタレた彩音に呆れつつも。
「大丈夫だ。多分な」
「多分って……頼りなくない?」
「俺は言われた通りに姫攻略をしたからな。これでダメならおまえの魅力が足りなかっただけだ。負けたら素直に諦めろよ」
そう言うと、彩音はイラっとしたらしく俺を睨みつける。
「言ってくれるじゃん。兄貴さ、あたしが姫になれなかったらどうなるかわかってるの?」
「その時は彼女に癒してもらう」
「うわっ、リア充になった途端に調子乗り出したよ」
何とでも言ってくれ。
「ほら、さっさと確認するぞ」
不安そうな彩音を引っ張り、新聞部が発行している校内新聞を手に取る。
実はこの新聞を手に取るのは初めてだったりする。俺は今まで誰が姫になったのか噂で聞いていただけで、校内新聞でチェックしていたわけではない。興味もなかったし。
「じゃ、結果を確認するぞ」
「ちょっ、待ちなさいって。まだ緊張してるんだから!」
「緊張しても結果は同じだ」
弱気になった彩音を無視して、新聞を開いた。そこには上位10名の名前と票数が記載されている。上から順番にチェックしていく。
6位よりも上位になると、姫になった女子生徒の名前と二つ名、それから簡単なコメントが書かれていた。
第6位 氷川亜里沙 2年C組
二つ名は”氷の女王”。
『前回と順位は変わらず。誰もが憧れ、誰もがひれ伏す最強無敵の生徒会長様が今回も姫の座を獲得。姫ヶ咲学園を支配する絶対零度の女王様人気は健在です』
第5位 神原彩音 1年A組
二つ名は”神の愛猫”。
『可愛らしい容姿でマスコット的な人気を獲得し、姫に初選出されました。二つ名の由来は文化祭で見せた猫耳姿が非常に好評だったからです』
第4位 土屋美鈴 2年B組
二つ名は”土の女神”。
『姫ヶ咲の誇る女神様が今回も順当にランクイン。抜群のスタイルで多くの男子を魅了しました。危なげなく姫の座を堅守しました』
第3位 不知火翼 2年B組
二つ名は”火の姫王子”。
『姫王子がトップ3に食い込む快挙。同性からの圧倒的支持は相変わらずですが、最近は男子生徒と話す姿が目撃されています。その時に垣間見える可愛らしさに気付いた男子生徒からの票数もアップしている模様』
第2位 風間幸奈 2年A組
二つ名は”風の妖精”。
『風に舞い踊る妖精が大幅に順位アップ。親しみやすく、誰に対しても優しい妖精様が更に可愛くなった。最運動でも勉強でも大活躍。文化祭で見せたメイド姿に多くの生徒が魅了されました』
第1位 氷川花音 1年A組
二つ名は”氷の姫君”。
『姫ヶ咲学園期待の超新星が遂に1位を獲得。2期連続で姉妹揃っての姫となりました。今までは妹系だと思われていた姫君ですが、最近では仲良し少女の影響で姉属性が追加されたと大騒ぎ!?』
順位を確認し、俺は安堵の息を吐いた。
「――――っ」
安堵した俺の隣で、彩音は喜びのあまりピョンピョン跳ねていた。
その様子は元気な猫みたいであり、あながち神の愛猫という大仰な二つ名も間違っていないのかもしれない。
ピョンピョンと跳ねた後、彩音は声にならない叫びを上げた。
そして――
「やったよ、兄貴!」
「おう、やったな!」
俺達兄妹は何年か振りにハイタッチを交わした。満面の笑みを浮かべる彩音はこれまでで一番可愛く映った。
……終わった。これでようやく終わったんだな。
自然と肩の力が抜ける。
こうして、短くも長かった俺の姫攻略生活は幕を閉じた。




