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【書籍化】学園の姫攻略始めたら修羅場になってた件  作者: かわいさん
第2章

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閑話 満点な姫君

「……今日は我ながら満点だった」


 花音は小さく頷いた。


 ついさっき、人生初となる告白をした。相手はダーリン……神原佑真先輩だ。告白から数十分経った今でも胸がドキドキしている。告白した事実を思い出すだけで顔が赤くなり、胸の中がふわふわする。


「ありがとう、お姉ちゃん」


 目の前で眠るお姉ちゃんに感謝した。


 あそこで絶叫して気絶してくれたから、花音の恥ずかしさはどこかに消えた。あのままだったら羞恥でおかしくなっていたに違いない。先輩の前で失態を犯さずに済んだのはお姉ちゃんのおかげだ。


 今、花音は保健室にいる。


 お姉ちゃんが倒れた後、先輩がここに運んでくれた。保健室の先生には具合が悪くなったと話してベッドを貸してもらった。


 その先輩はもういない。先輩が残っていると間違いなくお姉ちゃんと衝突する。それに、先輩と部屋の中で顔を突き合わせていると恥ずかしさでおかしくなりそうだから帰ってもらった。ちなみに保健の先生は用事があるといって出ていった。


「……ショックはわかるけど、気を失うことないのに」


 妹思いなのはわかっていたけど、これはさすがにビックリした。


 お姉ちゃんが目覚めるのを待ちながら、花音はダーリンが先輩だと判明してからの日々を振り返ることにした。

 

 まず最初に訪れたのは衝撃だった。


 先輩を狙うライバルはいないと勝手に決めつけていた。ここが最大のダメなポイントだった。ちょっと前までの花音は先輩をモテないだろうとか勝手に考えていたが、冷静になって考えればあんな素敵な人にライバルがいないはずなかった。


 ただ、想定外だったのはライバルが強力すぎたこと。


 妖精先輩。

 姫王子先輩。

 聖女先輩。


 クラスメイトが二つ名で呼ぶから花音もそう呼ぶようにした。そう、ライバルは学園の姫と呼ばれる人たちだった。


 花音が見ても凄い可愛い人ばっかりだ。


 その中でも先輩の幼馴染という聖女先輩が出てきた時は花音も震えた。実際に目の前で見ると信じられないくらい可愛かった。その人が独占欲丸出しで先輩に迫るのを見て、思わずギブアップしたくなった。


 聖女先輩はラスボスだ。


 ゲームで何度も戦ったラスボスみたいに強い人だった。

 

 しかも花音にはお姉ちゃんというお邪魔虫がいた。お姉ちゃんは優しい人だけど、昔からかなり過保護だ。


 それでも花音は諦めなかった。


 彩音ちゃんを利用した形でダブルデートに持ち込んだ時の花音は冴えていた。あれは天才的だった。自分で自分を褒めてあげたい。


 他の姫先輩を出し抜いたダブルデートは途中まで最高だったけど、途中からは不満だった。


 お姉ちゃんを始めとする面々に妨害されたのだ。普段はイラっとしない花音でも、あの時ばかりはイライラして仕方なかった。

 

 聖女先輩とのデートという話が出た時は逆に妨害しようと思ったけど、場所がわからなくて断念した。悔しい。


 事態が急転したのはそれからすぐだった。いつものようにネトゲをプレイしていたら、リアルで告白されたと言い出して凄く焦った。

 

 告白したのは妖精先輩と姫王子先輩。


 きっとあの二人も聖女先輩の登場にビビッたから動いたに違いない。このままでは絶対負けると理解した花音も告白することにした。鏡の前で笑顔の練習をして、部屋の中で告白のセリフを何度となく練習した。


 そして、無事にそのミッションを達成した。花音はよく頑張った。何度考えても今日の採点は満点だ。


「……あれ、花音ちゃん?」


 回想していると、お姉ちゃんが目を覚ました。


「あぁ、そっか。全部夢だったのね」

「……?」

「花音ちゃんがあんな男にあんなこと言うはずないわよね。わたくしとしたことが現実と夢の区別がつかなくなるとはね。高校生にもなって恥ずかしいわ。気の緩みかしら。勉強だけでなく体調管理のほうもしっかりしないと」


 お姉ちゃんは現実逃避していた。


 いずれはバレるだろうから、花音はここで現実を突きつける。

 

「告白ならしたよ。神原佑真先輩に」


 花音がそう言うと、お姉ちゃんの顔がわかりやすく絶望に染まった。ケーキの上の苺を無断で食べた時よりも酷い顔をしていた。


 その顔を見るのは心苦しいけど、ここで現実逃避しても後で現実を見るから変わらない。だったら花音しかいないこの場で話すのが一番だ。


「まだ夢を見ているみたいね。もう一度寝ればいいのかしら」

「現実だよ」

「夢の中でも花音ちゃんは最高に可愛かったわ。それじゃあね」

「待って、花音は本気だから」


 再び眠ろうとするお姉ちゃんの体を揺さぶる。


「先輩の良さを教える。だから聞いてほしい」

「嫌よ、聞きたくないっ!」

「子供みたいなこと言わないで。聞いてくれないとお姉ちゃんのこと嫌いになるから」

「っ」

 

 切り札の言葉を出すと、お姉ちゃんの動きがぴたりと止まった。


「……わかったわ。一応聞いてあげる。でも、その前に」


 お姉ちゃんはカバンからスマホを取り出した。


「まずは苦情のメッセージを送らないと。全く、こうなったのは全部あの女が不甲斐ないからなんだから。こっちの気も知らないで、風邪とか引いちゃって」


 お姉ちゃんはぶつぶつ言いながらスマホを操作する。誰かにメッセージを送ってるみたい。多分、苦情というよりも恨み言に近い感じ。


 しばらくして、お姉ちゃんは嫌そうに花音を見た。

 

「気は進まないけど、聞かせてちょうだい」

「まずは運命の出会いから話す」

「……自分でも驚くほど聞きたくないわね」

「ダメ、絶対聞いて」


 それから花音は先輩との出会いから今までの出来事を詳細に語った。ゲーム内で運命的な出会いをして関係を深めていったこと。狩りの最中に楽しくチャットしたこと、結婚して一緒の家で暮らしていることなどを詳細に。


 花音の感情の変化、ダーリンが先輩だと気付いた時の気持ち、そして告白に至るまでの経緯を話した。


「先輩が好き」

「うっ」

「ゲームでもリアルでも相方になる」

「うぐっ」

「将来的には家族になる予定」

「ぐはぁっ!」


 気付けば結構な時間が経過していた。


「――というわけで、結論。先輩は良い人。結婚したらきっと楽しい。だから応援してほしいし、歓迎してほしい」


 口下手な花音だけど、今回は上手く話せた。今日は本当に凄い。すべてが満点だ。


「あれ、お姉ちゃん?」


 話を聞き終えたお姉ちゃんはベッドの上から動かなくなった。話が長かったせいで寝てしまったらしい。


「しょうがない。家でまた一から話してあげる」


 仕方ないので、その日は家に電話して迎えに来てもらった。迎えを待つまったりした時間も最高で、今日という日はどこまでも満点だった。

お読みいただきありがとうございます。


毎日更新は今日で終了し、ここからは隔日くらいのペースで更新していきます。

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