表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/83

プロローグ

 イケメンには勝てない。


 俺――神原佑真かんばらゆうまがこの世の真理に気付いたのは人生二度目の恋に破れた時だった。初恋に続いてイケメンに敗北し、気付かされた。


 初恋の相手は幼馴染。


 親同士が仲良しということもあり、幼い頃から家族ぐるみで仲良くしていた。昔は妹のような感覚で接していたが、小学校を卒業する頃には恋心に変化していた。


 告白したら付き合えるかもしれない、と当時は本気で思っていた。


 しかし現実は甘くなかった。


 中学生になって一年程が経過した頃、あいつに彼氏がいるという噂が広まった。噂の相手はイケメンと有名な先輩で、実際にその先輩と楽しそうにショッピングしている姿を見かけたことで確信に変わった。


 幸せそうなあいつの姿を見て、初恋は終わった。


 初恋が終わった段階ではまだ真理に気付けなかった。当時は努力が足りないと結論付けたのだ。


 だから努力した。肉体を鍛え、苦手だった勉強にも力を注いだ。雑誌やネットで情報を収集し、おしゃれの勉強とかもしてみた。


 自分磨きを始めてから半年後、人生二度目の恋をした。


 相手はクラスメイトの少女。


 苦い初恋の経験から受け身ではダメと理解していたので積極的に行動した。特に用事もないのに話しかけ、休みの日には遊びに誘い、放課後は偶然を装って一緒に下校しようとしたり、とにかく彼女と付き合いたい一心で行動した。


 結構いい雰囲気だった。


 もしかしたら付き合えるのではないか、と淡い期待を抱いていた。


 身の程をわきまえない愚か者は再び現実を叩きつけられた。


 ある日、隣の中学にイケメンが転校してきたという噂が広がった。片思いしていた少女はそのイケメンと接触し、あっという間に虜となった。


 こうして二度目の恋も終わった。


 初恋はイケメンに敗北し、二度目の恋もイケメンに完敗した。この連敗によって愚か者は嫌でも気付かされた。


「イケメンは最強」

「世の中は見た目がすべて」

「ただしイケメンに限る」


 勉強とか運動がいくら出来てもイケメンには手も足も出ない。大人になったら金の力で対抗できると聞くが、それなら最強は金持ちのイケメンだ。同じ金持ちならブサメンよりもイケメンが勝利するに決まっている。


 結局のところ人間ってのは生まれた時に勝ち負けが決まる生き物だ。親ガチャという言葉が定着したように、誕生した瞬間に勝敗が決定している。


 どれだけ頑張っても勝てないのなら最初から勝負しないのが利口な生き方だ。早いうちに現実の壁にぶち当たれたのはむしろ幸せだろう。


 利口になった俺は敗北を受け入れ、現実世界の恋愛を諦めた。


 それからはゲームにアニメといった自分の世界に没頭するようになった。


 好きなことをしていると時間の経過は早いらしい。気付けば中学を卒業し、高校生活も二度目の夏を迎えていた。


 高校生になっても変化はない。


 学校では目立たない男子生徒であり、自称フツメンの俺は女子に見向きもされない。どこにでもいるモブキャラとして生活していた。


 現実のほうは何も変わらなかったが、自分の世界では色々な変化があった。


 とあるネットゲームにハマり、ゲームの中では愛する嫁が出来た。高校生になってしばらくしてからVtuberにハマり、推しのVtuberに認知された。


 日々の生活は充実していた。このまま現実では何事もなく平和に過ごし、自分の世界で楽しみながら高校時代を終えよう。


 そう思っていた夏休み最終日。


「――兄貴に頼みがあるんだけど」


 時刻は推しの配信を見ていた夕方。


「先に言っとくけど、頼みといっても強制だから。もし断ったら兄貴の人生終わりだからね。そこんとこよろしく」


 脅迫めいた妹の言葉に敗北者の物語は動き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ