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プロローグ??? 金剛石の魔女

お久しぶりです。

今日からゆっくりではありますが続きを書きたいと思います。

 某国、???の城にて。


奥行きが果てしなく続く真っ白の廊下に一人の女性が歩いていた。黒髪の眼鏡をかけた静かそうな女性。

メイド服を着た彼女はトレイを持ち、ティーポットとそれを注ぐための陶器が載せてあった。


どうやらメイドだろうか。


彼女は長い長い廊下を渡り切る。

目の前にどっしりと構えるのは大きな扉。

そこにコンコンと丁寧ではあるが適当にノックをする。


すると部屋の主人の声が聞こえ、彼女は無造作に中に入った。


中には驚くような光景が待ち構えていた。

部屋の至る所に透明な鉱物が突き出しており、部屋一帯を侵食しているのだ。

それは一見何の鉱石かは不明。

しかし彼女はその正体を知っている。


世界でもトップクラスの硬さを誇るダイヤモンドだ。

それがこの空間の至る所から生えているのである。


かなり異質な光景。

見る者には入ることを躊躇わせるだろう。

しかしそんな事にお構いもしない彼女は主人のところまで歩いて行くと、トレイをテーブルデスクの上に置いた。


チラリと主人を見る。

水色の髪と同様の目を持った一見少女に見える女性。それが今まで支えてきた自分の主人である。


リオーナ・フリティア=ダイヤモンド。

それが彼女の名前、世間一般ではダイヤモンドの五公爵と呼ばれている。


そんな彼女は読んでいた本を閉じる。


「いやーご苦労じゃ、流石は余のメイド」


太陽のようなニコニコとした顔つきをこちらに向けた。とてもではないが五公爵最強の存在には見えない。しかし戦闘や緊急時には人が変わったように凛々しくなるのをメイドであるルーシェは忘れてない。


「今更ですか。いつも来ているはずですが…」


世界屈指の実力者にルーシェはあっさりと返す。

すると彼女は膨れ上がったフグのような顔つきで、


「もうそんな事言うでない。

余はそなただから感謝しているのじゃ」


「はいはいそうですね。ありがとうございます」


「つれないの〜〜」


それでも冷たくあしらわれると痺れを切らしたリオーナは外を仰ぎ見る。そしてとあることを言った。


「五公爵の一人、銀の名を持つ者ウィルレオ・アルン=シルバー。そやつがここより遥か南方でやられおった。倒した相手の名は蒼翠のフェンリル。

一体誰じゃ…。初めて聞いた名だがお主は知っておるか?」


紅茶を淹れているルーシェに疑問の視線が注がれる。

しかしそれには構わず紅茶を差し出した彼女は少し間を置いてからゆっくり答えた。


「私もこの城に住むメイドの一人。

噂だけはそれとなく聞きましたがその者のことはさっぱり存じ上げません」


「そうかそうか。

しかしあやつも困ったものじゃのう…。

腕っ節もセンスも逸脱していたと言うのに、突然何を血迷ったのか失踪するようにいなくなりおって。

発見されたかと思えば途端にこれじゃ」


彼女は困惑したような苛立ちで愚痴をこぼす。

ただ彼女の意見にルーシェは深く納得できる。

なぜならリオーナは銀の五公爵を手塩にかけて経験を積ませ育てた、ある意味師匠のような存在なのだ。


「元から抜けていたとはいえ五公爵の一席が落とされた影響はデカい。それも相手は今の今までその名も知られてない存在じゃ。これを口切りに世が荒れることは危惧しなきゃならんのう」


「そこまで心配する必要はあるのですか?

確かに周辺国では何か動きもあるかと思いますが、この国には何も問題ないかと」


「それは浅はかな考えじゃ」


ルーシェの意見をリオーネは真っ向から切り捨てた。

そして彼女に諭すように説明を始める。


「確かにそんじょそこらの国は我々に対して扱いや態度を変えんだろう。じゃがルーク神聖国は別じゃ。」

あの国は我らを軽く見てくるかもしれん。ただでさえ仲の悪く、小競り合い絶えないあの国がこれみよがしに幅を利かせてきたら溜まったもんじゃない。

少なくとも奴らに弱い所は見せたく無いのぉ。

五公爵もブランディングが大切なのじゃ」


「なるほど」


まぁ。


「あの国もあの国で、今はそれどころじゃ無いだろうがのお」


悪戯な笑みを浮かべたリオーナはティーカップを掴む。そんな表情にルーシェは心当たりがあった。彼女がそんな笑みを浮かべている場合は大体人の不幸をほくそ笑んでいる場合だ。人の不幸は蜜の味とでも言うべきだろうか、ただ彼女が嘲笑っている対象は他人というより仮想敵国なので、そんな国の不幸は笑わずにはいられないのだろう。


手に取ったカップが彼女の内心に比例するように目に見張るスピードで透明な結晶に包まれていく。次に置かれた時には先ほどの影や形もなくなった結晶が出来ていた。


「確か裏切り者が出たんですよね」


ルーシェはそんなことを意に返さない。

彼女からすればこれも見慣れた光景なのだから、驚くに値しなかった。


「そうそうあの裏切り者…最高院の議長じゃ。

よりにもよってあの国のナンバー2、事実上トップを仕切っている奴が国を裏切るとはの〜う。

唯一まともだった奴が抜けてしまった神聖国は何をしでかすか分からん。とりあえず今出来る事といえば、警戒にあたり密偵から情報を聞き出す事くらいじゃ」


「全くその通りです」


飲み物を啜る音がリオーナの耳に入った。

音のした方向に顔を向けてみると、案の定メイドであるルーシェが紅茶を淹れて口を付けていた。


これには思わず何とも言えない表情をリオーナは浮かべる。


主人である自分が命令をしていないにも関わらず、お茶を飲んだ事に腹が立ったのだろうか。

普通ならそう思うだろう。しかしリオーナが思ったことはそれとは全く異なったものだった。


そしてその答えをルーシェに告げる。


「お茶ぐらいわしが淹れてやるというのに…ほれ」


ルーシェからカップを受け取ったリオーナは紅茶を注いでいく。そしてルーシェに手渡した。


「……ありがとうございます。

ご主人様が淹れてくれた紅茶は格別の味です」


感謝の色が見られない棒読みの感謝。

それでもリオーナは気にしない。

実はこんなことを自分達は毎日のようにやっているのだから今更気にしたところでどうしようもない。


それどころか感情が篭っていない感謝でも彼女にありがとう、と言われるのは気持ちがいいものだ。


そんなどうでもいいようなことをリオーナは考えていると、紅茶を飲み終わったルーシェがこちらを見る。


「それよりもリオーナ様。

いつごろ会議は始まるのでしょうか?」


「あっ、そうじゃったっ。

急いで支度をせねば!」


リオーナは目の色を変えて立ち上がり、ドタバタという音が正しいお慌ての様子で身支度をしだす。

それを尻目にルーシェはお茶菓子を嗜んでいった。


「ご夕飯にはリオーナ様お気に入りのメニューを用意させて頂きます」


「おっそうかそうかっ!

じゃあ楽しみにしておる。ではまたな」


「早く帰って来てくださいね」


「うむ!」


リオーナの身体は結晶化し崩壊していく。

そして絶対に間にも合わない会議に向かって行くのだった。




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