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ダブリュード

ダブリュード 閑話②

作者: マオ

 可愛い少女がたくましい青年と一緒に小物店の店先を覗いている。

 

 いかつい店主は正直に思った。

 野郎、こんな綺麗な女の子を恋人にできるなんて羨ましい。こん畜生。石に蹴つまづいて死んじまえ。

 金髪美少女と仲良さそうに歩いている男なぞ、呪っても呪いきれない。


「わー、この指輪可愛い」

「いや、それ呪いの指輪っぽくないか?」

「にーちゃんがこんなの持ってた。買お」

「買うのかっ!?」

「にーちゃんにおみやげ。きっと喜ぶ」

「……お前の兄ちゃんって……」

「あ、こっちの髪飾りも可愛いなぁ。ねーちゃんと姪っ子のおみやげにしよう」

「姪っ子!? お前その年で姪がいるのかっ!?」

「いる。甥っ子もいる。ねーちゃんの子供、双子だから。お、こっちの腕輪はデザインがかっこいい。よし、こっちをにーちゃんと甥っ子にやろう。あ、こっちの首飾りにーちゃんの嫁さんにいいなぁ」


 小物を楽しそうに眺めている少女は本当に可愛らしい。くそ、横の男邪魔だ。もっと可愛い女の子の顔見せろ。ああ、楽しそうだ。何を話しているのだろう。この指輪買って♪ ああ、いいよ。君のためならなんでも買ってあげよう、とか浮かれた内容なんだろう、どうせ。畜生、付き合い始めたばっかりか。それとも何か、新婚か。幼な妻か。羨ましすぎる。


「うん、これとこれとこれとこれでいいかな。後は実家に送ってもらえるように運送頼まないとなー」

「…………つかぬ事をお伺いしますが、リィリーさん」

「あん?」

「代金自分で払うんだろうな?」

「………………あ、こっちのも可愛いなぁ」

「聞けよおい」

「財布が何か喋ってるなぁ。うるさい。捨てようかなー」

「財布扱いかよっ!?」

「財布としても役に立たないなら捨てるしかないよなー。な?」


 ああっ、あんなに輝くような笑顔で横の男を見るなんてっ。そんなにその男が好きなのかっ。

 くそー、くそー、あの男、今この瞬間に空から岩が降ってきて潰されろ。

 

「……俺、そんなに金ないぞ」

「ないわけないよな。この間襲ってきた盗賊叩きのめしたときの報奨金あるだろ。俺の代わりに受け取ってたよな?」

「あれはお前がいらないって言ったからだろっ!?」

「当たり前だろ。こんな可愛い女の子が一人で盗賊をぶっとばしたなんて言えるか。大体信じてもらえん。だからお前に行かせたんだってーの。あれは俺の金だぞ。お前何もしてなかったじゃん」

「あ、あれはっ……お前がいきなり俺をど突き倒したからだろ!?」

「当然だ。すげー邪魔だった。俺が剣を振ろうとしたところに飛び込んでくるなんてアホか。蹴りの一つくらい入れたくもなるっつーの」


 天使のような笑顔とはこのことか……。

 あの娘のためなら死んでもいい。彼女をかばって傷を負って「いや! 死なないで! あなたがいないと私……ッ!」とか言わせたい。言って欲しい。彼女からそんなセリフが聞けたら死んでもいい。本気で。


「次またあんな真似したら容赦なく斬るからなグズ」

「情け容赦なしかよ……」

「お前に情けをかける暇があったら他の馬鹿男ひっかける」

「……駄目だ……俺がこいつから離れたら本当に駄目だ……世の中の男がどんだけ犠牲になるか分からん……」

「そこでぶつぶつ言ってる財布。とっととこれ買って来い」

「………………耐えろ、俺」


 男が品物を持ってきたので会計をしてやる。包装を頼まれた。くそう、やっぱりプレゼントか、プレゼントなのかっ。少女は嬉しそうに店先で待っている。男が金を払うらしいので、割り増しにしてやろうかと思った。笑顔の裏に嫉妬を隠し、会計を終わらせて出て行く男の背ではなく、待っている笑顔の少女を見る。

 ああ、可愛い。そんな男ではなくておじさんに笑いかけてくれないか。

 ……無理だな、うん。

「お買い上げありがとうございましたー」

 声をかけたら、少女はこちらを見て笑顔で手を振ってくれた。うん、もうそれだけでいいかな。

 とりあえず、男のほうはもう一回くらい呪っておこう。転んで死ね

続編が進まないのでまた閑話。知らないところで恨みを買い、呪われているサレイにどうか同情を(笑)

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