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サバ子とブリ子は生き辛い  作者: ゆる猫
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サバサバ系ってサバサバ系じゃなくね?

鯖江楓(さばえかえで)。25歳。

最近・・・というか10代に入ったことから、よく「鯖江さんって、サバサバしてるよねー。」って言われるようになった。

サバサバ系女子。

俗にいう物事に対して、サバサバしてて、はっきりと物事をいう人のこと・・・・らしい。


いや、知らねぇよ。なんで、自分の感想とか意見を言うだけで、サバサバ系とかキャラ付けされけばいかんのだ。

しかも、鯖江さんがサバサバ系って、もうサバが渋滞してるわ!!!


・・・・・・そして、近年


「ねぇねぇ、聞いた?鯖江さん、あの営業課の宮野さん怒鳴ったって?」


「あー・・・・聞いたー。やばいよねー笑

 さすがサバサバ系女子様笑。ほんとよくやるわー。」


サバサバ系女子というのは、生きづらい。



ドアノブに力を込めて、ゆっくり押し、まるで今着ましたー感を全直でトイレへと入っていく。

途端に会話は途切れ、沈黙。2人ぶんの視線を一気に集めたので、しっかりと愛想笑いを貼り付けて目を合わせた。


「あ、お疲れ様です。」


「「・・あ、・・お、お疲れ様でーす。」」


まるで蜘蛛の巣を散らしたかのようにそそくさと出ていく女性社員をチラ見しながら、目的のトイレに向かっていった。


ガチャ。


ドアを閉め、どかりと座って、深呼吸。

怒鳴った?何それ、ただのパワハラじゃん。私は普通に提出書類の間違いを指摘して、ミスが多いことの注意をしただけですけど??

営業課の宮野さん。イケメンで女性社員に人気があるとはいえ、仕事の注意をしただけで、事実が歪曲し、またサバサバ系(笑)と嘲笑されることに納得はいかない。


・・・・・そしてたぶん・・・。こうしてまた人に余計な一言をいってしまうことで、私はまた敵を作り、陰口を叩かれていくのだろう。


それでもやらなければいけない仕事であると考えている以上、きっとまた同じことが起これば私は直球で、その人に伝えてしまうのだ。


「ぶり子みたいに、あんなに愛想がよくなれば、ましになるのかしらねぇ。」


トイレの個室で1人、ポツリと独り言を漏らしてみたが、すぐに無駄だろうと自身でツッコミがはいる。


私はあんなに気を効かせて色々立ち回れる人間でもなければ、やんわりと人に言えるような言い回しを考えることも不得意だ。

そして、それができるぶり子ですら、女子に嫌われているというあの事実。

どーして、こんなに女性だけにこんなにも性格がカテゴライズされ、キャラという固定枠に収められてしまうのか。


何回目かの自身の疑問に今日も答えはでることなく、サバ子はトイレを後にする。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「・・・・・ってことがあったわ。」


仕事終わり。

サバ子は、いつものごとくストレス発散をするために、ぶり子を飲みに誘い、本日の愚痴を吐き出していた。


「ありゃー・・・・タイミング・・・・。でも、その人が聞く可能性のあるところで普通陰口って言っちゃダメだと思うんだよねぇ。」


そう言って、ゆっくりとぶり子こと芦部莉子(あしぶりこ)は、カシオレのストローをかき混ぜ、両手でグラスを持ちながら、ちびちびと酒を飲んだ。


女子に嫌われる性格に必ずランクインする「ぶりっ子」というキャラクター


そう、サバ子がよくサバサバ女子と言われるのであれば、この目の前に座っているこの女は、ぶりっ子とよく言われる女であり、なおかつそれを地で行く強者である。


会社へ来ていく洋服は、「港区女子」??と言われているらしいような実に女性らしい可愛い洋服を好み、その仕草、性格すらも守ってあげたくなるような言動、発言を繰り返し、社内の女性からのヘイトを無意識に集める。


「まぁ、でも、サバちゃんがいったこと自体は、間違ってないと思うよ??ミスは必ず誰かが指摘しないといけないことだし。もうちょっと、優しめにいってあげたらと思うことはあるけどー。」


「それができたら、苦労はしないのよぉ・・・。」


漏れ出る弱音とともに一気にビールジョッキを煽り、つまみを口に運んでいく。


「でもぉ・・・・・実際に、キャラクター化されちゃうっていうか、そいういう風に固定化してみちゃうってのは、難しい問題だよねー。

まぁ、サバ子ちゃんが言われれるサバサバ系女子って、最近王道の嫌われとかの物語に出てくる人たちって大体サバサバ系もどきっぽい感じなのに、本当のサバサバしてる人が、そういうキャラとして見ちゃうことで、歪んで解釈されちゃうってのはわかるよー。」


「・・・・・サバサバ系もどきってなに?」


「えー?サバちゃん、サバサバ系って書いてあるやつのざまぁ系漫画って読んだことない?

なんかこー、自称私サバサバしてるんで!って主張しながら、いろんな人に無神経に言いたい放題言っちゃって、なんか気に入らないことがあるとねちねち嫌味をいう・・・みたいな。

実際全然サバサバしてなくて、粘着系っぽい感じだから嫌われちゃってて、それをざまぁ展開で、スカッとしよう。みたいな話最近多くない??」


「・・・・・そういうのは、身につまされるっていうか、当てはまってますます自己嫌悪に陥ったりしそうだから、あえて避けてる。」


さばちゃん、そういうとこネガティブだよねー、と言いながらぶり子は、ふふっと可愛らしく笑っている。


そういうギャップということであれば、ぶり子の方が、あるのではないかとサバ子は考えた。


文字通りぶり子はその外見は実に可愛らしく、喋り方もおっとりしている。

こういうキャラクターとしてのぶりっ子というのは、実は計算だかく、男受けを狙って可愛い自分を演出したりとか、そういう方面にばかり頭を働かせ、それ以外に関してはそんなに頭が良くないイメージ。みたいなものがどこかにあるのだろうか。


よくぶり子は、男女を問わず、外見、口調からあまり物事は深く考えない方だと勝手に判断され、下に見られるという経験をしていたはずだ。実際そういったあまり良くない場面をサバ子は目撃したことが何度かあった。


しかし、逆だ。ぶり子は、口調こそおっとりとしているのもの、確固たる自分を持ち、よく物事を考えて判断している人物であるとサバ子は考えていた。


本当にぶり子は可愛いものが好きなのだ。それがたまたま男受けするものであったというだけで。そして、それを馬鹿にする人がいたとして、「自分のご機嫌がとれる自分受けの方が大事〜。」とさらっと言えてしまえる。

ぶり子こそ、本物のサバサバした性格なのではないかと思っている。


「正直、また陰口叩かれてることには、凹むよ。

 でも、自分でもそんなに間違った判断をしたと思えてないから、こんなにむしゃくしゃするのかなって。」


ぶり子は、そっとカシオレを飲みながら続きを促す。


「だって、内容だって書類ミスだし、そんなわざわざどこか個室を借りて、膝突き合わせて話す内容でもないし・・・ってか部署違うし上司でもないんだから、私がそんな宮野くんに説教をかますつもりもないんだけど・・・・。

 でも、今後もミスが続いて、もし、誰かが見落としたらそのときは大変じゃない。

・・・・・・また、いつもみたいに人からみたら、きつい言い方だったりあんまり表情筋仕事してくれなくて、無愛想に見えてたかもしんないけどさ。


でも、人気がある人だからとか、偉い人だとかそういうので、指摘するしないって、なんか、私は良くないし、違うと思う。」


そう言い切るサバ子に対して、ぶり子は、笑ってゆっくり頷いた。


「サバちゃんのそういうことが私は好きだよ。」


ちょっとそういうこと平然というから、己はっ・・・・・

と呟き額と抑えてながら、サバ子は「お世辞はいいから。」と呟いた。


しかし、ぶり子は知っている。サバ子の耳が赤くなっているという事実に。


(一度でもこういう可愛いところのギャップ見ちゃったら、サバちゃんが嫌われることなんてないと思うんだけどなぁ)

そう心の中で1人ごちりながら、ぶり子は、サバ子と会話を続けていく。


そして、今夜も2人の飲み会はだらだらとしゃべり、愚痴り、笑い、時が過ぎていくのだ。






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