釣りの穴場
夜釣りの穴場と呼ばれる場所へと足を運ぶも
中々釣れない。
段々とシラけて来たのでもう帰ろうかと思っていた矢先、
「釣りですか……?」
何処からともなく一家が声を掛けてきた、
足音一つしなかったのが少し気になった物の
気が付かなかっただけだろうと、自分を納得させ。
ボチボチですがそろそろ御開にしようかと
と見栄を張りながら、その場を後にしようとする。
「そうですか……」
「私達も今夜は釣りでして……」
時刻は11を回っており、こんな夜更けに子供も一緒なのと
子供にしては妙に物静かでグズるでも眠っている様子も無く
只立って沈黙なのも気になるが、
気味が悪いので半ば逃げるように
その場を後にした。
その数日後、警察が自宅を尋ね
任意同行を求められた。
訳が分からず、困惑していたが
夜釣りをしていた日の夕方時刻のアリバイを遠回しにだが
聞かれ、その時間は夜釣りの準備の為に
釣り具屋さんに立ち寄っていたので直ぐに確認が取れた。
警察に聞いてみると、あの人夜釣りをしていた海岸付近の
木で一家の首吊り心中があり
次の日の朝に発見されたと言う。
更に、彼所は首吊り自殺の名所で
地元の住人達は夜間滅多に近付かないと言われた。