問題はこれから
「さて、ハイエンドル卿。婚約についてお話しましょう」
「はい!」
なんかこの人いきなり元気になったな。
部屋に来た時は気まずそうにしてたのに。
「アンジェリーナ嬢、改めて婚約をお願いしたい!」
「…は?」
いやいやいやいや?
何言ってんだコイツ。
「今までの態度、申し訳なかった。言い訳になるけれど、記憶がなくて、さっきまで自分が公開プロポーズしたなんて信じてなかったんだ。
ずっと皆に揶揄われてると思ってたし、君の手紙もいつもの令嬢たちの手紙だと思ってて…でも、君をみたら見た目が凄くタイプだし、話してみたらしっかりしてて性格も好ましい。自分がプロポーズしたのも納得した。君となら夫婦になりたい」
う、うそおぉ〜
この展開は想定外です!
そして、第一王子と仲間たちウルサイ。
「「「おお〜」」」
「ヘタレが頑張ってる」
「クロードが成長した!」
「肩の荷が下りた」
「酒がなくても言えたんだな」
いや、ホントひどい言われようだな。
仲良さそうだけど。
さて、婚約か。
一度は受けるつもりだったしなぁ。
うぅん、結局は公爵家だもんなぁ。
しかし、まだ言ってないことあるんだよね。
いつも通り、働く女性は嫌だ!って断られるつもりだったし。
「ハイエンドル卿、こ」
「クロードと呼んでくれ」
「あ、はい。クロード様、婚約についてはお受けします」
「ありがとう!」
おおう、グイグイくるな。
本当にお酒で記憶なかったんだ?
「後ですね、断られると思ってたのでお伝えしてなかったのですが、私、叙爵される予定がありまして」
「「「え?」」」
まあ、そうよね、驚くよね。
私の成人待ち、いや、卒業待ちだったからね。
目立たないように頑張ってたしね。
「学院在学中に冒険者活動していた時、ドラゴンに遭遇して数回倒しちゃったんですよね。だから、ドラゴンスレイヤーの称号を持ってます」
「「「マジか」」」
「それと、作った魔道具が警備隊に採用されて活躍しまして、その後、騎士団と魔術師団にも配備されたことで褒賞を頂くことになりました」
「なるほど。それで叙爵なら子爵以上か。ロウウェル伯爵令嬢は間違いなく、他国には渡せない人材だな。今まで知らなかったことが不思議なくらいだ」
「ちなみにどんな魔道具?」
「“拘束ロープ”と“スタンロッド”ですね」
「え!?アレ作ったの!スゴい!」
「知ってるのか?」
「拘束ロープはさ、犯人に投げつけると勝手に巻きついて拘束する上、強力な魔力吸収で動けなくもしてくれるんだ!
スタンロッドは、街中で剣や魔法が使えない時に便利で、犯人に当てると少しの間動けなくできるから、逮捕が簡単になったんだ!」
「スゲーもん作ったんだな」
「そういえば、新しい武器の噂を聞いたことあったな。魔道具だったのか」
「私も新しい武器のことは、騎士団所属の家族から聞いたことあります」
「私の婚約者が天才だった。どうしよう」
いや、私、天才じゃないけど。
なんかこの人、テンションの浮き沈み激しいな。
夜会の時の方が落ち着いてみえた。
酔っ払いだったらしいけど。
「ええと、まあ、叙爵するので婿入りができる事をお伝えしたくて。新しい家は公爵家を寄親として、第一王子派になれますよ。
クロード様は殿下の側近として法服貴族になれますから、婿入りでも問題ないですよね?婚活令嬢は嫁入り目的ですから、婿入りなら消えるかと存じます。
公爵家には、まだ婚約者のいない弟君がいらっしゃいますよね?第一王子殿下と公爵家で検討して頂けますか?」
まあ、婿入りじゃなくてもいいけど。
領地なし子爵位か、領地あり子爵位かまだわからないし。第一王子ならその辺確認とれるでしょ。
うまいことやってください。
「…ロウウェル伯爵令嬢、クロードを宜しく頼む」
「いや、ほんと、ロウウェル伯爵令嬢を見つけたクロードの本能ヤベェ」
「こんなしっかりした子がいたなんて」
「確かにクロードの弟の方が公爵に向いてる性格だな」
「私の今までの不運は君と出会う為だったのか!」
ちょっとおバカなこのメンツ、面白いとか感じてきた私。毒されてる?