ヘタレボーイ
第一王子殿下曰く、クロード・ハイエンドル公爵子息は、ここ数年、婚活令嬢に追いかけ回され過ぎて、女性不信に陥っている。
更に、その令嬢たちの中でも過激派がおり、媚薬を盛られたり、王宮内の部屋に侵入されかけたり、職務中に突撃され業務妨害、と散々悩まされている。
しかも、ここ一年はストーカー被害もあり、監視しているような差出人不明の手紙が度々届き、ノイローゼ気味である。
「クロードは、僕達年代の中で結婚してなくて、唯一婚約者がいない高位貴族の嫡男だからか人気がスゴくてね」
「顔はいいし、王子の側近だし、高位貴族にしては優しい性格だし、で、勘違いする子も多いんだ」
「昔から厄介なのに狙われるんだ」
フォローなのかしら?
皆さん凄い不憫な子を見る目でヤツを見てるけど。
「先日の夜会、その日もストーカーの手紙をみたクロードが、ストレスで愚痴っていたんだ。それで、いつも通りに婚約者を決めたらどうだと話してたんだが…
クロードはお酒に弱いから普段飲まないんだが、デビュタント向けの弱いお酒を間違って飲んでしまったようで…
気が大きくなったクロードがロウウェル伯爵令嬢にダンスを申し込んで、あっという間に求婚した。そして、その記憶が曖昧なんだ」
えっ記憶が曖昧とか嘘でしょ?
あの騒動の張本人がそれって、ないわー。
え、ホントに?
「つまり、私は酔っ払いの騒動に巻き込まれたと?」
王子と仲間たちが頷き、ヤツは頭を抱えて唸ってる。
私は目元を掌で覆って、天を仰いだ。
頭の中に、ものすごい罵詈雑言が浮かんでは消える。
ここは第一王子の執務室、耐えろワタシ。
「ふぅー。コレ、バレたらなかなかの醜聞ですわね?」
「そうだな」
「もし、相手が中立派の家の私じゃなく、第二王子派や王弟派だったら、側近は解雇、第一王子派閥筆頭公爵家が抜けて派閥崩壊の危機だったと」
「そ、そうだな」
「相手が第一王子派だったら、嬉々として婚約進められたのに残念ですね」
「う、うむ」
「我が家に説明がなかったということは、もしかして、コレ、公爵閣下はご存じない?」
「ここにいる者しか知らない」
私は、またもや天を仰いだ。
マジか、第一王子!これ、放置しちゃアカンやつ!