突撃!執務室
あの夜会から2週間、手紙の返事がこない。
誰からって?アレだよ、アレ。
公開プロポーズしてきたヤツだよ、ヤツ。
ホント、困るんですけど。
しょーがないから、第一王子の執務室に突撃だ!
部下の管理は上司(王子)がしろ!
後から考えると、勢いって怖い。
王宮の廊下を歩いてたら、ヤツと同じ第一王子の側近の伯爵子息に会ったので一緒に入室した。
「俺は結婚なんかしたくない!!!」
先日プロポーズしてきたクロード・ハイエンドル公爵子息が叫んでいた。
思わず満面の笑みが浮かぶ。
連れてきてくれた伯爵子息が慌てだした。
「ちょ、おま、なにいってんのー?!」
「まあまあ、これは僥倖」
ボソリと私は呟いた。
「ええええ」
「なんでいるんだ!」
「な、な、な、な!」
「凄いタイミングできたな」
王子と他の側近も私に気づいて、その場がカオスに。
とりあえず、仕切り直しましょう。
「本日は急な訪問、申し訳ございません。アンジェリーナ・ロウウェルと申します。そちらのハイエンドル卿と連絡が取れないので参じました」
「あ、はい」
何故か、全員でのお話になりました。
ヤツは顔色悪く、今にも倒れそう。
第一王子が場を仕切る流れになった。
「ああー、ロウウェル伯爵令嬢、クロードに話とはなんだろうか」
「ええ、先日はお断りできない状況で婚約を申し込まれましたので、私の話を聞いてから判断頂きたく参りました」
まず、私の魔術学院の卒業は4ヶ月後ですが、既に卒業単位の取得と卒業研究が終了しています。
学院入学前からの活動で、現在の冒険者ランクはAランク。
また、学院入学前に魔道具師資格を取得し、いくつか特許を取得済みです。
そして、在学中に文官資格と代官資格に合格致しました。
これらを評価いただき、二学年目の早々に王宮魔術師団への就職が内定。
卒業前ですが、来週から王宮魔術師団の独身寮に入り、仮入団となります。
半年程、各部署を研修し、その後は副師団長補佐になることが決まっております。
「あの場では、公爵家の面子を潰さない為に婚約をお受けしましたが、婚約しても、数年は婚約者としての交流はほぼできません。
今まで家に婚約を申し込まれた方には説明してお断りしておりましたので、ハイエンドル卿にも説明しに参りました。
さて、先程の雄叫びを聞いたところ、ハイエンドル卿は婚約をする気はない、ということで宜しいですか?」ニッコリ
淡々と説明して、口は挟ませませんでした。
ヤツは真っ白な顔をしています。
第一王子がヤツを、残念なモノを見る目で見ています。
「あー、ロウウェル伯爵令嬢は結婚する気はないってことかな?」
「私のライフプランでは、結婚は10年後を予定しています。これから、社交界の出席は護衛任務のみの予定ですし、休日は訓練と研究に費やしますので」
コソッ
「めちゃくちゃ優秀じゃん」
「5歳も年下のはずなのに」
「文官資格と代官資格持ってて護衛も出来るって」
「うちに欲しい」
いや、うん、聞こえてるから。
第一王子と仲間たち、迂闊すぎない?
「コホンッ、ロウウェル伯爵令嬢には大変失礼な内容もあるんだが、クロードの話を少ししてもいいかな?」