お夜食です
襲撃があったから、今日の帰りは遅いだろうと夜食の差入れにきた。ドラゴン肉じゃないよ!
今回は、グレートピーコックの肉で作ったチキンバーガーとフライドポテトだ。
グレートピーコックは羽根が装飾品として人気の魔物。でも、肉が美味いんだ。体長3メートルもあるから食べれるところもたっぷり。
春は求愛行動の為に纏まって見つかるから狙い目!
「お疲れ様です。夜食の差入れです」
「アンジー!ありがとう!」
「うわっバーガーだ!」
「うまそ〜おかわりある?」
「ふむ、頂こう」
「殿下にバーガー差入れするのは、ハルトン伯爵だけだと思う」
ユルゲン卿、うるさい。
スッとバーガーを引っ込めたら、慌てて謝罪してきた。
ほら、食べたいんじゃないか。素直になりなさい。
文句言うとアリスター卿に取られるよ?
「美味いな」
「タレがたまらん」
「お肉ぷりぷり〜」
「…美味しいです」
「アンジー、これなんのお肉〜?」
「グレートピーコックです」
ピシッと動きが止まった。どうした、どうした?
「…美味いわけだな」
「サラッと高級肉使ってきますね」
「グレートピーコックって羽根が人気だけど、お肉は手に入らないって聞いたことある…」
「そうだぞ!討伐も解体も面倒くさいんだ。上手くやらないと肉に毒がまわって食えなくなる。だから、羽根だけとる奴が多い」
「へえ〜流石アンジー!」
毒ブレスを吐く前に首を落として、毒袋に結界張って抜き取るだけなのにな。
24時間以内に毒ブレス吐いた個体は、肉に毒が回ってる。毒持ちは眼の色が変わるから分かりやすいけど、毒が抜けるの待たなきゃいけない。そこが面倒くさい。
私は、春に纏まってるところを討伐する。そして、眼の色が違う個体だけ逃がす。全滅させないから、翌年も同じ場所で討伐出来て最高!
「「ごちそうさま」」
はい、お粗末さまです。食後の紅茶をいれましょう。
「ふぅ、アンジェリーナ嬢にも今わかってることを教えよう」
「はい。わかってると思いますが、奴等は盗賊ではありません」
「ええ、護衛があれだけついてる馬車をわざわざ狙う盗賊はいませんね」
「裏組織の下っ端でした。本人達は気づいてませんが、失敗するのを見越して、要らない連中を纏めて送ってきたようです。狙いが第一王子殿下という事も知りませんでしたし、有益な情報を持ってる者もいません。お手上げです」
「依頼主は上客だけど、狙いは第一王子。断れないから、時間稼ぎと逃げるのに邪魔になる奴らを始末って感じだな」
「連中の吐いた組織の場所は、既にもぬけの殻だったよ。魔力痕もなし。捨て駒用の場所だったんだろうね〜」
このまま雲隠れしちゃいそうですね。
依頼主は裏組織からも切られたっぽい。
「逃げるなら、依頼主売ってくれれば良かったのに」
「流石にそれは組織の矜持に反したのだろう」
「とりあえず、裏に噂を流して様子見ですね」
きっと、裏組織に潜入してる人いるんだろうな。
今回は別の組織だったっぽいけど。
やっぱりやり手の腹黒か。清濁併せ呑む人物なのか。
第二王子のことはよく知らないけど、第一王子殿下は王になっても仕えたい人物だな。
「アンジー、寮まで送るよ」
「ありがとうございます」
第一王子の執務室のある王宮から、独身寮まではそこそこ遠い。お城の敷地はかなり広いので。
でも、建物の外は転移可能なので、クロード様が送ると言ったのは、二人きりになりたい、ただの口実だ。
「ねえ、アンジー。私、今日頑張ったよね?」
「ええ、とても頑張りました」
「ご褒美が欲しいな」
「あら、何がいいですか?」
「抱きしめて、キスがしたい」
あらあら。最近、抱き着いてくることが増えたと思ってたけど、ヘタレなりに頑張ってたのかしら。
「いいですよ」
クロード様はいつもと違って、そっと抱きしめて啄むようなキスをした。不覚にも、キュンとした。
「アンジーは私に甘過ぎる」
私の肩に額をのせて、グリグリしながら照れてるクロード様は、やっぱり可愛い。
「あと数ヶ月で結婚するんですから、一線越えなきゃいいんですよ」
あら。首まで真っ赤だわ。可愛い。
ぎゅーぎゅー抱き締めるのはいいのだけど、体熱すぎない?大丈夫?
「アンジーが小悪魔だった…」
第一王子「次は魚が食べたいな」
ルーカス「いいね!」
ウィリアム「こないだ漁港行ったって聞いたな」
カルロス「全く貴方たちは…」
((食べたいくせに素直じゃないなー))