閑話 デートプラン1
話してみると、クロード様はデートの経験がなかった。ちなみに、私もない。
異性とお茶会しか経験がない二人。
これは、由々しき事態である。
カフェでお茶をして、買い物をする。
毎回は、飽きるよね。
さて、困った。そして、考えた。
「本日は、空を飛びましょう」
「ん?…えっ?」
「行きますよー」
問答無用で、手を繋いで転移した。
大樹海の空に。
「ひゃっ!わ!え!」
「あ、晴れてて良かったですね。大樹海が一望できて綺麗でしょう」
「アンジー!高い!怖い!」
「ふむ、高所恐怖症でしたか」
「ふわああ!足下がないってこんな不安なの?!」
「なるほど、絨毯でもしきましょう」
手持ちの絨毯を足下に浮かせる。
あ、これ、本人を浮かせるより楽かも。
「…納得行かないけど、これならあんまり怖くないかも」
「私は自分で飛ぶ方が気持ちいいですが、次回からクロード様がいる時はこちらにしましょう」
それから、絨毯の上でお茶しながら大樹海を一周した。次はお弁当持ってこよう。いや、屋台の持ち帰りの方がいいかな?
たまに大きな鳥型の魔物が襲ってきたが、私が出向いて討伐したので問題ない。
「アンジーは強いねえ」
「そりゃドラゴンスレイヤーですからね」
「そうだった」
少しお腹もいっぱいになって、絨毯に寝転がるクロード様。
「空が広い。気持ちいいね〜」
「そうですね。あっあの雲、妖精みたい」
「あっちは猫っぽいよ!」
「確かに猫耳ありますね!」
二人は顔を見合わせてクスクス笑った。
「アンジーとのデートは護衛をつけないで出掛けられる。ありがとう」
「確かに、護衛のいらない婚約者は少なそうですね」
「こんなデートじゃ護衛はついてこれないけどね!」
「ふふっ、これから色んな所に行きましょう」
「うん。視察でどこかに行くことはあったけど、決められたルートだったし、護衛もいっぱいいた。普段から護衛がいるのが当たり前で、こんな自由なお出かけがあるなんて想像できなかったなあ〜」
クロードは空を見上げながら、しみじみと呟いた。
大丈夫だ、クロード。大樹海を絨毯で飛んで散歩するなんて、誰も想像できない。