8.出会い(ルーク視点)
女性は苦手だ
もともと苦手で避けてたのに
なのに
信じたいと思った時もあったんだ
でも
自分が幼かったから
信じたのが馬鹿だった
嘘をつかれて…
それから気づくなんて…
…だから嫌いになったんだ
朝から気分は最悪だった。
勝手に婚約者探しの舞踏会なんて…最悪すぎる
毎日忙しく執務に励み、剣の鍛錬も欠かさず
兄弟仲も良く
これ以上何を俺に求めるんだ
第2王子執務室にて
「…ふざけて
「はぁー。」
自分が最後まで言葉を言う前に隣から漏れるため息
「…おい、ため息が漏れてるいぞ。
ロザリス卿。」
「すみません、失念してました。」
慌てる彼に対し、珍しい事もあるものだと思った
「何かあったのか?」
「いや、私情のことで少し…。
なんでもないので大丈夫ですよ殿下。」
「そうか、珍しいため息だったから気になってな。
詮索はしないが、私の気晴らしのためにも話してみたら
どうだ?」
頑なに拒んだ様子でもないので、聞いてみると
どうやら今日の舞踏会に妹が呼ばれたとのこと。
「安心しろ、私は誰も選ばないし、
むしろボイコットを考えている。」
自慢げに伝えるが
「それは心配もしてないです。
だって殿下ですからね。
ただ妹は…色々事情があって
できれば連れてきたくなかったんです。」
相変わらずため息をつく彼に
「悪いが舞踏会は中止にできないからな。
あの噂もあるから、良い機会だとも思ってる。」
淡々と述べるが、できれば尻尾を掴みたい希望がある
「知っています。
ただ何事もなく舞踏会が終わればと思っただけですから
殿下は気にせずに。
まぁ、自分がエスコートできれば良かったのですが、
弟に頼んだので問題はないかと思います。」
安心している様子の卿を見ながら、
「いや、レオはまずいだろう。女性が寄ってくるぞ!」
ロザリス卿の弟は兄上の側近
兄弟揃ってイケメンなのだ。
しかも婚約者がいないはずだから、余計だ。
ロザリス卿に注意を促すも
「だから、殿下の出番です。
大人しく出席しろとの陛下からの命ですよ。」
「無駄なことに国費使うなって感じだ…
まぁ顔は出す、多分…」
「私も警備がなければ…妹を守れるのに。はぁー。」
また最初のやりとりに戻る
(ロザリス卿はシスコンだな。
妹は…見たことなかったが、まぁ顔は整ってそうだな。)
とりあえずこれ以上ため息が出ないように
話をスルッと変えてみる
「そういえば、兄上が婚約者殿とその国から令嬢が
1人来日したと言ってたな…サプライズらしいが。
舞踏会始まる前に挨拶に行けと言われたな。」
「殿下自らですか⁇ …普通は逆では?」
「普通はな。だが私が女性嫌いだから、そのせいだろう。」
「行動はくれぐれも気をつけて下さいね。
誰か1人は連れて歩ってくださいよ!」
「分かってる。」
執務室を出て自室に戻り、一応舞踏会の装いをしてから
衛兵を1人連れて隣国の令嬢の元へ挨拶に向かった
しかし、その向かう途中で連れていた衛兵が急に呼び出され、代わりの兵を待つも行き違いがあったのかなかなか来ない
時間も迫っていたため、結局のところ1人で挨拶に訪れる事にした
トントン、
「イーリアス侯爵令嬢殿、私はアマリール国第2王子ルーク・アマリールと申します。挨拶に伺いたくまいりました。」
部屋の中からの返答はなく、誰の気配も感じない
付き人も居ないようだ
(おかしな?付き人がいないなんてことあるか…まさか中で倒れてるとかか⁇)
「非常事態のため失礼しますよ!」
ドアに特殊な魔術を放ち、施錠を解除し部屋に入るが
そこはすでに何もない状態であった
(おかしいな…とりあえず兄上の元に行ってみよう)
部屋をでて兄上の元に行き、隣国の令嬢の事を確認するが
「…いや今回はフィーリアだけの訪問だ。
誰がそんな話をしたんだ⁇」
兄上はまるで知らない様子
隣に座るフィーリア姫も同様に頷き
「今回の訪問はサプライズでしたから
ライン様にしか伝えませんでしたよ。
付き人もメイドが2人だけで、この部屋にいる者です。」
兄上の部屋を後にし、あの薬が使われた可能性がある事を考えた
兄上には悪いが…私のなかでフィーリア姫は
まだ信用できる存在ではない
一応その事を念頭に置き、もう一度あの部屋に向かう
だがその途中で
フィーリア姫のメイドから私宛に一通の物が届けられた
王宮内のメイドに渡された…ね
(宛先人不明…本来は無視だけど…
今回はしょうがないな)
その場で開けるのはやめ
適当に舞踏会用の客室で開けることにした
ただ…失敗だった
開け口に刃物付いており、驚いた拍子に中の
ガラス瓶を床に落として割ってしまった
割れた瓶からは、甘い匂いが漂ってきた
まずいな…
咄嗟に鼻を塞ぐも間に合わず嗅いでしまった…
やばいな…毒ではないようだがらある意味毒
…媚薬みたいだ
あの時のロザリス卿の言葉が脳裏に浮かぶも
すでに事が起きている状況
…反省は後にして…
とりあえず、ここから離れなければ…
王族として、醜態は晒せない
耐えろ…
舞踏会は始まってるが、あそこなら…
なんとか平常を保ちつつ
本来とは別の入り口から目立たないよう
バルコニーに入り酔いを覚ましていた
このバルコニーは、主に王族が使う頻度が高く滅多に立ち入る者がいなかった
だから油断してたんだ
…まさか令嬢がいるなんて
微塵も思わなかったんだ