5.舞踏会②
順番に王族へ挨拶をする方々の様子を見ながら、自分達の順番を待つも周囲からは気になる視線やヒソヒソ話し声が聞こえる…
私は笑顔のままで「帰りたい…」と心の叫びが漏れる
「ティア、まだ来てほんの少しだろう?
流石に兄様でも連れ出すのは難しいぞ(笑)」
と、楽しそうに言う兄様
「…ただの本心です。
そもそも何故私は呼ばれたのでしょうか⁇
今更ではありませんか?しかもこんな場所に」
父様を見つめながら告げると、
「…。」
そっと視線を逸らす様子に、怪しさを感じ
「父様⁇」
「さ、さぁな。陛下にも思うところがあるのだろう…」
「⁈、父様やっぱり何か知ってますね。
今なら黙って…私聞きますよ。」
脅しのごとく笑顔で父様に迫るが、咳払いされ
「さぁ、陛下に挨拶だな。」
とあしらわれ自分達の順番になる
父様、兄様の順に最後の私の番に…
「お久しぶりにございます、陛下並びに王妃様。
この度はお招きいただきありがとうございます。
ティアラ・リラ・ロザリスにございます。」
満面の笑みで挨拶すると、陛下は驚いた表情をみせ
「久しぶりだな、ティアラ嬢。
見ない間に美しく育ったものだ。
レイシアとティオ両方の面影があって、実に…良いな。
ドレスも似合っていて素敵だな、なぁ王妃よ。」
「そうですね。
久しぶりにティアラ嬢に会えて嬉しいですよ。」
陛下と王妃様は仲睦まじそうに
私に会えた事を嬉しそうに話す
ただ私は陛下の「実に…良いな」の言葉が引っ掛かりながらも、困惑気味な私を隠し
「舞踏会は初めてで、それに…こんな素敵なドレスを贈っていただいたからには、何か良い知らせがあるのではと思い、積もる思いを胸に馳せ参じました。」
最後に微笑みつつ、鋭い眼光をむける
「そ、そうか。」
私の言葉や視線にやや困った表情を見せる陛下に対し
「陛下、きちんと説明なさらないと。
ティアラ嬢も不審がっていますよ。
こんな急な呼び出しから、そして贈り物も。」
王妃様からの言葉で陛下も平静を装いながら
「そうだった。そっちの件を王妃から説明してもらおう。」
(今回の件に関して色々自覚はあるみたいだけど、そっちの件⁇っていったい…)
王妃様はメイドを呼び
一通の手紙を受け取るとそれをそのまま私に差し出して
「実はレイシアから…貴方のお母様から手紙を頂いたの。
レイシアは貴方を本来の侯爵令嬢の立場に戻すために
私と陛下に頼み事をしてきたの。
これを…後でで良いから読んでみて、
今日の真実が分かるから。
本当はゆっくり色々説明したいこともあるけど
それはまた今度。」
王妃様は微笑みながら告げる
私は王妃様からその手紙を受け取り、その場を後にした