17.開始
次の日からルーさんと私は媚薬作りのため行動を開始した
まず活動場所に関しては…ルーさんがルカさんに頼んで何とかなった
問題は私の活動時間だ
実際仕事時間ではない時間の確保は難しい
私には
ニーナという兄様からの監視役がいるから
そこでルカさんに頼んでしばらくの間本来の仕事を減らしてもらい
そこに媚薬作りを仕事として入れてみた
実際に媚薬作り自体はそんなに難しくはない
ただ
問題は媚薬で使う薬草の種類
私は以前から自分の記憶戻しのためあらゆる薬を研究してきた
薬は主に、薬草の種類、効能、量、そして組み合わせで大きく変わる。さらにそこからどのようなかたちで処方するかにより効果の発現時間や持続時間がまた変化する。
そのため薬師自身が独自で作った薬は、他の人がその薬師の助言なく完全に模倣するのは難しい
私の場合、ルカさんに研究する薬を取り寄せてもらい、薬草・薬効鑑定を独自で行いそこからほとんど同じ薬やその薬の解毒薬、さらに改良を加えた薬を地味に販売している。
研究が意外に時間もかかるため、中々新薬までは開発できない状況ではある。むしろ目的が決まっているからそんなことは最初からしていないが、研究過程での副産物という物はよく出来上がっていた(ただ、それは販売できる物ではないため私的な保管庫に厳重管理している。その一つは私が持ち歩いている解毒薬だよ!)。
そして媚薬に関して私は国内の主な5つを研究した
(あくまで薬師の中でのもの‼︎)。
どれも作った薬師は違うが、薬草自体はほとんど同じ。違うのはその地方にある一種類の薬草だけ。
それだけで微妙に効果が違う…らしい。
ちなみにその時の研究で私が作った媚薬はルカさんが全部試し、情報として主観的な効果を教えてくれた。
(もちろんその時は解毒薬も渡して(笑))
だから私は被害にあった人の反応を聞きたくて、ルーさんに頼むとその被害者さんからの詳細な内容の手紙を預かってきてくれた。
「(身体がほてり、やや意識が朦朧として、口渇感、焦燥感があった。いきなりこみ上げてくる感覚があったが、徐々そのに感覚は落ち着いてくる。)か…、効能的に見ればなかなか絞れない。でも、発現時間が急激だと考えると別な3つの方が考えられるな。」
研究室で貰った手紙を読み返していると
ルーさんがやって来る
「調子はどうかな?」
「…少し停滞しています。」
ため息をする私に
「無理を言って申し訳ない。」
なんとも言えない顔で謝ってくる
「ルーさんのせいじゃないですよ。
これは中々難しいんです。
感覚は人それぞれですから…それに媚薬作りは私実際に薬飲んでないのでそもそも分からないんですよ。」
苦笑いをする私
「じゃあ、今は何をしているのかかな?」
「実は被害者さんの感覚と私が作った媚薬を飲んだルカさんの感覚を比較して、試す種類を絞ろうと思っています。」
「絞るとは?」
「初めてですが、私飲んでみようかと思います。」
笑顔で楽しみに告げる私
ガタン‼︎
ルーさんが机におもいっきりぶつかる
何故かあわてて
「それは駄目だ!安易に飲む物じゃないだろう‼︎」
急に真剣に諭してくるルーさん
「でも、実際に試さないと分からないですし。
本当は被害者さんにお願いできるといいんですが…
また同じ思いをするのは辛いですから。たとえ意図して飲んだとしても…。だから私が飲むのが1番効率もいいと思うんです!」
私は頷きながら告げると
「…何故そうなるんだ…」
しばらくしてから
「やっぱり被害者にしか分からない感覚もあると思う…そうだな、」
と独り言のような発言が聞かれ
「分かった、3日後にその被害者を連れて来るから、その時に試してくれないか?」
とルーさんは私に告げて来る
「え⁈でも、
「決まりだな、それまでに薬の準備よろしく頼むよ!」
ルーさんは勝手に納得し、要件を告げそのまま1人で帰っていった。
(彼は有無を言わさず決めてしまったな…)
私はびっくりしながらも、とりあえず作業を進めた
その日
私は初めてルーさんの別な一面を垣間見た瞬間だった