13.情報家
レイ兄様と青年…、部下の方かしら
真剣な表情で会話する2人の姿は
とても絵になる
(どうしよう、声かけずらいな。)
私が躊躇っていると、兄様の方が私に気がつき近づいてくる
「ティ、ラティ!今日は仕事だったのか?」
やや慌てる兄様
「ふふふ、今日はたまたま仕事だったんです!
そちらの方は…部下の方ですか?」
私たちの会話が聞こえたのか青年はゆっくり近づいてきて
(…なんか見たことあるような方)
「ラティ!こちらは部下のルーだ、今日は調べごとでここに来たんだ。」
「ルーです。お世話になってます。」
一礼する姿は無駄がなく綺麗な所作
「ルーさんですね。
初めまして、私はラティと申します。」
ルーさんは私を上から下まで観察し
「…あの、どこかで、会ったことありますか?」
急にナンパのようなことを聞いてくる。
さすがに私も兄様もびっくりして
驚いた表情をすると
「あ、いや、すま、すみません。なんでもないです。」
と改まり、そのまま黙り込んでしまった。
(兄様が「ラティ」で紹介したのなら、ここでの私はただの知り合いだ)
とりあえず私は
「今からニーナと帰宅する予定だったので、失礼しますね。」
そう一言告げてその場をルカさんに任せ
(仕事のことなら邪魔は出来ないし、ちょうど帰るところだったから。)
私はそのまま店を後にした。
ラティが店を出た後、ルカは2人の前に立ち
「来るなら一言伝言して欲しいですよ。
レイ、それに…殿下。」
「久々だから驚かしたくてな、ロザリス卿には無理矢理頼んで連れてきてもらったんだ。」
楽しそうに言うルークと呆れ顔のロザリス卿
ルカは久々に面白いと思いながらも表情に出さないように、2人を店の最奥に案内する。
そこは、簡素なテーブルと椅子しかなく、窓もない部屋だった。
「お茶なんて洒落た物は出ないですよ。
話を先にしましょうか?」
ルカは普段の口調に戻る
「ルカ殿助かる。
最近の薬の噂と媚薬に関する情報を頂きたい。」
ロザリス卿は淡々と要件を述べる
「最近の薬は分かるとして、媚薬って…急にどうしたの?そっちの心配⁇まず意中の子が見つからないとダメよ。レイに媚薬は早すぎる。」
楽しそうにからかうルカ
ロザリス卿はため息混じりでルークの顔を見た
ルークも重い口を開け、説明する
「…実は先日王宮で媚薬騒動があってな」
「あらまぁ、ワタシの知らない情報だわ。」
頷きながら聞くルカ
「…だが使われた媚薬というか、
物的証拠自体を紛失してしまって…。
事件自体が現状無かったことになっている。
わた、…いや被害者の持っている情報だけでは
解決出来なくて、できれば協力して欲しい。」
ルークは自分が被害者である事は隠し
情報協力を頼んだが…
「え〜、協力自体はしたいけど…殿下が盛られたなんて…ふふ。でもね、媚薬は基本的に正規の店では取り扱いしないのよ。ほら、効能がトラブルのもとになるから。薬師から直接作ってもらうか、後ろ暗い何かの手段で入手するしかないのよ。
…でも殿下の場合国お抱えの薬師に作ってもらえばいいんじゃない⁇
それに情報って言われても、貴族の誰が所持してるとかは調べないと分からないは。でも製法とかなら薬師しか知らないわよ。」
話す様子で被害者が誰か把握したのか、
ルカは笑いながら言う
(わざわざ隠した分ある意味恥ずかしいが、
今はスルーしよう。)
「そうなのか…。」
話を聞いて、ルークも王宮の薬師に頼む事は確かに最初考えた。
だができれば内密に調べたい、王宮で起きた事で逆に誰が絡んでいるか分からないからだ。
「やっぱり、薬師に依頼するしかないか…誰か
「ちなみに薬師の紹介はできないわよ。ここは薬草販売店!本業に関わっちゃうからね。」
ルカはちらりとレイを見て、そのまま殿下に告げる。
「噂の方は、相変わらずだけど…ちょうど解毒薬を大量に購入した貴族がいるのよ。もちろん直接じゃなく、何人か人を介してだけど。行方を辿れば何か情報が入ると思うのよね。とりあえず今持っている情報はこれくらいかしら。」
ルークもロザリス卿もルカに感謝し、店を後にし王宮に戻った。