11.日常
舞踏会の翌日 私はゆっくりするはずだった
そう
するはずだったのに…
なんでこうなったの?
いきなり店に呼び出され
朝からすり鉢・すり棒を相棒に
目の前の薬草と戦っていた
「つ、疲れる…。ルカさんの馬鹿!ひどいよ!」
動かす手を止めずに叫ぶも、
「仕方ないでしょう。ラティちゃんが忘れていた件なんですから。むしろ気づいたワタシに感謝しなさい!」
ルカさんは優雅にテーブルで紅茶を飲んでいる
…しかも、ニーナに給仕してもらっているのだ。
「お嬢様仕方ありません。こちらに非がある以上は要求に誠実に答えるべきかと思います。」
満面の笑みで告げるニーナ
「だって、解毒薬の数字20なっていたのに
本来は50だったとか…ありえないでしょう!」
「…それは、お嬢様が紅茶をこぼして依頼書のメモを
破棄してしまったせいでしょう。見間違いの勘違い。
最終確認もせず、ルカさんに渡したせいですよ。」
「そ、それはそうかもしれないけど...。
ルカさんも受け取ったとき確認しなかったから…。」
「ワタシはほら、ラティちゃんのことを信頼しているから。
信頼関係は大事よ、ね!ラティちゃん?」
急に声色を変えるルカさんに、私はもはや文句は言えず…
大人しく薬作りに勤しむことになった。
~・・・・2時間後~
「…やっと終わった。死ぬかと思った。」
机に突っ伏す私に、横からティーカップが置かれる。
「お疲れ様です、お嬢様。ハーブティーをどうぞ。」
「ありがとう、ニーナ。
自分のせいだけどこんなに多いのには驚いたよ。
解毒薬って言っても万能薬じゃないのに。
誰よこんなに発注する人は!」
ハーブティーを飲みながら私は文句を言う
「どうやら貴族の間で広まっているみたいよ。
ここの解毒薬は性能がいいって。」
急にルカさんが現れ、薬を確認しながら告げる
「ん、50オッケーね!」
出来具合を確認しニコニコなルカさん
「でも50なんて数、普通じゃないですよね?
1人の方の購入ですか?」
「そうよ。」
「どうしてそんなの請け負ったんですか?
…普段のルカさんならしないですよね?」
「ちょっとワタシにも事情があってね!
…ラティちゃんは気にしなくて大丈夫よ。
危ない橋ワタシは渡らないから、ね!」
楽しそうに話すルカさん。
「次大量の薬を作る依頼は、先に私に連絡してからにして下さい!」
「もちろんょ。」
ウインクするルカさん
思いのほか時間が経ってしまっていた
「さぁ、ニーナそろそろ帰りましょう!」
「はい、お嬢様。」
(カランカラン)
「あら、お客さんね♪ はぁーい!」
ルカさんは足早に店舗の方へ向かう。
私は身支度を整えルカさんが戻ってくるのを待っていると
「ラティちゃん、お兄さんがきてるけど…
レイさんかしら?」
「え、兄様が⁈」
「仕事で来てるみたい、部下の人と2人みたいだけど。
今は店の中見てるよ!」
「…珍しいけど、お仕事中ですよね。
でもちょっと覗き見してみます(笑)」
私はワクワクしながら店舗に顔を出す
そこには、レイ兄様と若い青年が薬を眺めていた。