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3 おっさん、国王に会う

3 おっさん国王に会う


 おっさんが捕まえてきた魔物の四天王、風のブラキオスを尋問するためイリシャ達とおっさん勇者は王城に向かうこととなった。魔物の言葉を分かる者が王城にしか居なかった為である。

 正直なところイリシャは勇者を国王に合わせたくはなかった。いきなり「俺は世界を征服する」とか言い出し、更には魔王に何も考えず会おうとして取り敢えず四天王を拉致ってきた。こんな訳の分からない男を国王に合わせて良い物だろうか。

 しかし勇者召喚に成功し、その報告までしてしまい王城に来た以上国王との面会をしない訳には行かないだろう。考えれば考えるほど胃が痛くなってくるイリシャだった。


「何か調子悪そうだなイリシャ。胃薬でも飲むか?」


 おっさんがそう話しかけてくる。

 イリシャは「お前のせいだろう」とか思ったが、流石に面と向かってそう言う訳にはいかず「いえ、ご心配なく」と愛想笑いを浮かべ、そう答えるので精一杯だった。


「とにかく王の前では失礼のない様にお願いします。礼儀とかわからなければ、私達の真似をして頭を下げていればいいので、それ以上は何もしないで下さいね」


 イリシャはおっさん勇者が王に対して無礼を働かない様説明していた。


 エルンファストは広場に放置し、馬で王城に向かったおっさんとイリシャ達御一行は何事もなく王城に到着した。

 縄でぐるぐる巻にされたブラキオスを衛兵に渡す。


「後で話をするんだから丁重に扱ってね」


 おっさんはそう言うが、あんたが一番乱暴に扱っていただろうとイリシャは心の中でツッコミを入れた。


王の待つ面会場に向かう。式典などにも使用される面会場は石で作られた巨大な柱が並び、中央はかなり広く面積が取られ百人が入っても余裕そうである。フカフカの赤い絨毯がひかれ、奥には巨大な椅子に座った王が既に待っていた。


 イリシャ達は王の手前で跪き、おっさん勇者もそれに習って跪いていた。取り敢えず大人しくしてくれそうな勇者を見てイリシャはホッと胸を撫で下ろす。


「今回の貴公達の仕事、大義であった。さあ、顔を上げてくれ」


 王の言葉で全員が立ち上がった。全員を代表してイリシャが王に返答する。


「ありがたきお言葉、心より感謝いたします」


 王はその言葉に頷くと、おっさんに向かって声をかけた。


「其方がこの度召喚された勇者殿か。すでに四天王も一体捕まえたの事、誠に見事であった」


「いやあ、仕事はまだ始めたばかりでねえ、四天王も魔王との対話に必要だったから取り敢えず連れてきただけだ。まだ大した事はしていないよ」


 そう言っておっさんはガハハと笑う。


「こ、こら。王の前で失礼だぞ」


 イリシャが慌てておっさんに注意する。


「良い、気にするな。それより勇者殿はこれよりどうするおつもりかね?」


 王の眼付きが鋭くなった。不味い、此処で下手なことを勇者に喋らせるわけにはいかない。イリシャはそう思い勇者を遮って王に答えようとした。しかし既に遅かった。おっさん勇者は王に答えていた。


「俺は世界を征服しようと思う」


 その返答に対し王は言った。


「ほお、世界征服とな。この国も魔王の領土も含めた全てを支配するつもりかね」


「まあ、そうなるかな」


 おっさんはそう答える。


 終わった。イリシャはガクッと項垂れこの後の事を考えそう思った。勇者は魔王軍に対抗するため必要なので今は放置されるだろうが、私達は全員斬首か良くても永久に牢獄に閉じ込められることになるな。もう家族とも会えない、手紙くらい残しておけば良かった。


 だが、まだ王と勇者の対話は続いていた。


「全世界を征服した暁には其方が世界の王になるつもりか?」


「最初は仕方ないのでそうなると思うよ。でもずっとやるつもりはないんで、適当なところで即誰かに譲ろうと思う」


 何を言ってるんだコイツは。世界を統一した後、速攻で王を辞めるつもりらしい。本当に訳がわからない。イリシャはもう、考えることを放棄したくなった。


「世界を支配して何をするつもりだ」


「今、魔王軍と対立しているんでしょう?俺が世界を支配しちゃえばその対立も無くなって平和になるよ」


 言ってる事が無茶苦茶である。王も呆れている様だ。世界を征服する時点で争いが起こり、世界は平和どころじゃなくなるだろう。

 

「それに俺は武力で争うつもりは無い。まずは直接魔王と話してみるつもりだ」


 それは無理じゃ無いかなあ。あんた既に四天王の一人を拉致ってるし。魔王がまともに話を聞いてくれる訳がないよねえ。イリシャの脳内ではおっさん勇者の言葉にツッコミが入りまくっていた。


「うむ、わかった。其方の好きな様にやるが良い」


 えっ、何、許可しちゃうの!マジ!どういう事?why?


「流石に王様、話がわかるねえ。じゃあ、コイツらも俺のサポートという事で預からせてもらうよ」


 一応良くわからないが、私達の首も繋がったらしい。安心したら意識が急に薄れてきた。


「衛生兵、衛生兵、イリシャ様が倒れた。直ぐに来てくれ〜」


 エルフの少女の悲痛な叫びが響いた。


ーーーーー


 そして、その頃の魔王城。


「何!ブラキオスが拉致されただと」


「ふん、奴は四天王の中でも最弱」


「人間如きに拉致られるとは魔族の面汚しよ」


 などと言う会話があったとかなかったとか。



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