クーデター
完成しました 投稿です!
お楽しみください!
「皆…グラスは持ったか?…よし、じゃあ~帝国潜入お疲れ様!乾杯!」
006が音頭を取り、ビールが入ったガラスのコップを掲げると、ソウル達もグラスを掲げた後、一口飲んだ。
「さてと…さっそくあれをするか」
拠点にいる生産プレイヤーから、ライ麦パンに似ているパンを購入したソウルは、ナイフを取り出し丁度いい大きさに切り分けた後、ホールチーズを大きめに切り分けた。
「ああ…そんな…大きい…それにこの匂いたまらないわ…」
「はぁ…はぁ…ソウル…早く頂戴…」
「もう少し待ってください…すぐ出しますから……今!今出ますよ!」
チーズを鉄串に刺し焚火で炙って蕩けたチーズを、切り分けたパンに乗せた後、女性二人に出した。
「熱!でも美味しい!」
「ウマウマ…」
「筍ご飯ももうすぐ出来るし、俺にもチーズパンを頼む」
「はいどうぞ!」
ネイ・ザンが、釜を火から降ろし蒸らしている中、女性二人がチーズパンを頬張っている姿を目にすると、お腹が鳴ってしまいソウルにチーズパンを要求した。
「ただパンにチーズを乗せただけなのにとてもおいしいです!なんでだろう?」
ノアールがチーズパンを頬張りながら首を傾げると、ソウルが少し笑いながら答えた。
「それは、皆と一緒に外で食べているからさ…と言ってもこのパンとチーズがすごく美味しい理由もあるんだけどね」
「ソウル!ミルクが飲みたいのよう!」
「牛乳か?誰か売ってたかな…」
「マスター牛乳は見た事ありませんが、飲むヨーグルトみたいな物ならあったはずですよ!」
「あ~じゃあ、買ってくるよ。マギア、代わりを頼む」
「お任せください!完璧な炙り加減をお約束しますよ!乳飲料はここから少し先に行った所で配っていました」
「あいよ~」
ソウルが飲み物を買いに向かうと、マギアが代わりにチーズを炙り始めた。
「チーズパンお代わり!…ってあれ?…ソウルは?」
ククルが夢中になってチーズパンを食べていたが、いつの間にかマギアに変わっていた事に気が付き、首を傾げながらマギアに聞いた。
「マスターは飲み物を貰いに行きました。チーズパンのお代わりですね!これをどうぞ!」
チーズを刺してある鉄串を両手に持ち、回転させながら炙って出来た一つをパンに乗せた後、ククルに渡した。
「ありがとう…そういえばアップルとマナリアは…どうしているの?」
「お二人共クエスト中ですよ。ですが、もうそろそろ此方へ向かって来ているのではないでしょうか?多分職業関連のクエストだと思うので、さらに強くなっていると思われます」
「皆…頑張っているんだ…いいね」
チーズパンを頬張り口元からチーズを伸ばしながら、ソウル達が順調に強くなっている事に感心し頷いていると、バーコードが別の焚火で焼いていたトマホークステーキをさらに乗せマギアの所までやって来た。
「これにチーズを頼む…」
「バーコード!それはいけないわ!」
「マジか!バーコード…それをやってしまえばもう戻れないぞ!」
「覚悟は…とうに出来ている…」
「どうそ!とろとろに蕩けていますよ!」
チーズが肉の上に乗せられ、極上の匂いと姿をしたトマホークステーキを、バーコードは骨の部位を掴み、そのままかぶりつくとヘブン状態になった。
「ああ、ダメだ…俺にもそのチーズがライドオンしたステーキを食わせてくれ…」
「そこに焼いてある肉があるからご自由に…」
バーコードの言葉に全員が反応し、我先にと争う様にして肉を取った後、マギアの炙ったチーズをかけて貰い、口の中に入れると全員がヘブン状態になった。
「ただいま~…おや?おいしそうなの食べていますね」
「ソウルさんもどうだい?旨すぎだぞ…こいつは…」
「そうですね。頂きましょう」
マギアにチーズをかけて貰い、トマホークステーキを口に入れようとした瞬間、グリムニルがソウルの名前を呼びながら慌てて向かってきたのが解った。
「ソウルさん!大変です!急いで会議テントへ来てください!」
「え…でも、肉が…」
「急いでください!」
ソウルは肉を置いてしょんぼりした後、会議テントへ向かって行った。
「すみません、皆さん。私も会議テントへ向かいますね」
「ああ、解った」
「チーズはここに置いておくのでご自由にどうぞ」
「やったぜ!」
マギアは鉄串を置いた後、喜んでいる仲間達を背にソウルを追って会議テントへ向かって行った。
「006達が仕掛けた監視ドローンの映像を録画してあるので先にそれを見てください」
「了解しました」
会議テントへやって来たソウルとグリムニルが、立体映像の着替えの前に立ち、グリムニルが立体映像を操作すると、ソウルの目の前にウィンドウが開き、録画された映像が流れ始めた。その映像にはどこかの応接室らしく豪華な調度品や家具が置いてあったが、部屋全体が薄暗くボトワンとダミアンがいた。その応接室にいるダミアンは落ち着きがなく、部屋の中を右往左往していたが、ボトワンは椅子に座り煙草を吹かしていた。
「おい!大将!どうするんだ?このままだと俺達は破滅するぞ?」
「落ち着けダミアン。もうすぐ皇帝を椅子から引きずり落とす準備が整うはずだ」
「!?…マジかよ大将!ついにやるのか?」
「ああ、こうなっては仕方がない…北に逃げた来訪者の足取りも見失ってしまった…だから、計画を前倒しにするしかあるまい…」
「おお!ついに大将が皇帝の椅子に!…それで前の皇帝はどうするつもりで?」
「抵抗するなら死んでもらう…妃や皇子、姫達も全員な…」
「大将…妃と姫は俺にくれないか?前から食ってみたいと思ってたんだよ…」
「お前もそういうの好きだな…好きにしろ。もう必要のない人間だ…」
「おお!感謝するぜ大将!徹底的に調教して完璧な肉奴隷に仕上げてやるぜ…」
「それに熱中して役目を忘れるなよ?」
「解ってますぜ大将…きっちりそっちの方もやりますから」
「頼むぞ…」
「ええ、それはもちろんですよ…そういえば大将、12天逢はどうするつもりですかい?」
「問題ない。例えあいつ等の目の前でクーデターを起こしても誓約があるから動けないんだ。所詮あいつ等は他国が攻めてきた時にしか動けない壁だからな」
「なるほど…では、何の邪魔もされずに皇帝の椅子に座る事が出来るんですね」
「ああ、そうだ。皇帝さえ居なくなれば何の憂いも無く事を運べるようになる」
「それは楽しみですね…大将」
「ああ…そうだな…」
ここで録画が止まり、ソウルは顔を顰めた。
「クーデターか…ダミアンと言う奴はとんだ下種野郎だな…グリムニルさん、これは何時撮った映像ですか?」
「ほんの6分前です」
「今現在、帝国で何か起きた居ますか?」
「今見た感じだと…まだ何も起きていないようですね。それで…どうしますか?」
「助けますよ。それ以外の選択はないですから」
「いや、そうではなく救出メンバーについてです。いま主要メンバー達は水探しに出発してしまったので戦闘力が微妙な留守番組しか拠点に残ってません。隊長達を呼び戻すと言っても、何時間後になるか…」
「今出発しないと間に合わないという事か…」
「マスター!水捜索に参加できないと言った隊長さん達に協力を要請してはどうでしょうか?」
「…無理だ…皆ログアウトしている」
ソウルはフレンド欄を確認してみると、ホープ、ブラッドローズ、ハピネスカラーの三人はログアウトしており、現実時間を見て見ると丁度夕飯時を指していた。
「こうなったら俺らでやるしかない…」
「本気ですか!?12天逢達と戦うかもしれないのに、ソウルさん達だけでやるというのですか?」
「ああ…やるしかない…マギア、アップルとマナリアは今どこに?」
「この拠点に丁度到着した様です。ここにお呼びしますね」
「ああ、ククルさん達とノアールも呼んできてくれ」
「了解しました」
マギアが急いで会議テントから出て皆を呼びに向かうと、ソウルはその姿を見ながらどう動けばいいか考え始めた。
「来たわよソウル。緊急だって聞いたけどどうしたの?」
「すまないアップル、皆が集まってから話すから少し待っていてくれ」
会議テントにアップルとマナリアが最初にやってきて、アップルがソウルに何事かと尋ねたが、ソウルはまだ全員が集まっていない為、二人に待つように言った。そしてその3分後、全員が集まり帝国で起ころうとしている事を全員に伝えた。
「そんな…父様達が…お願いしますソウルさん!父様達を助けてください」
「ああ、それはもちろんだ…だが問題は12天逢とどうやって救出するかだ…現在動けるのは今この場にいる俺達しかいない。もし、これ自体が俺達を呼ぶ罠も含んでいる可能性もあるし、その場合奴らも総出で来るだろうと予想される…」
「含んでいるって?」
アップルが首を傾げて言うと、ソウルは顎を触りながら質問に答えた。
「俺達が監視している事を知った上でクーデターを起こすといういう事だ」
「つまりは、私達が来ること前提で動いてくるって事?」
「そうだ。もし俺等が救出に行かなくても、俺らの為に用意した戦力はそのままクーデターの戦力になるという訳だな」
ソウルは険しい顔をしながら言うと、006が手を上げてソウルに質問した。
「ソウルさんの考えが外れている可能性もある?」
「それならいいのですが、12天逢は必ず出てくると思います。俺達は国に仕えてはいませんが、帝国から見れば他国の間者ですので動く理由としては確実ですね」
「12天逢との戦闘を極力避け、皇帝一家を救出し、国外へと逃亡…かなり厳しい作戦だな」
「そうね…厳しいわね…でも…」
クラフトが言いかけ、潜入メンバーを見渡すと全員が頷いた。
「私達ならやれるわ!」
「ああ、そうだ!俺達ならやれる!」
ネイ・ザンが同調し、他の皆も声を上げてやる気を見せた。
「では皆さん準備をお願いします!かなりの戦闘があると思うのでしっかり準備してきてください。今から5分後再び会議テントの前に集合でお願いします」
「「「「「「了解!」」」」」」
ククル達が準備をする為テントから出た後、ソウルはノアールに家族構成とどこにいるかを尋ねた。
「父様と母様は東側にある4階の寝室、アルベルト兄様は3階の東側に部屋があります。モモニア姉様とミカニア兄様は同じ階の西側に部屋があります!」
「他に家族はそれだけか?」
「はい!」
「珍しいな、皇族なら複数の側室がいると思うのだが…」
「先々代の皇帝様が皇族も妻は一人すべきだとお決めになったのです。なんでも先々代の時は国庫が空になる程の災害が立て続けに起きて、後宮の維持が出来なくなってしまったようなのです」
「なるほど、お金の問題か…今はその事に感謝だな…よし、人数は把握した。後は退路を決めないとな。ノアール、城に隠し通路とかあるのか?」
「はいあります」
「そうか…それは使わない様にな。きっとそこの通路も奴らに知られているから出来るなら閉鎖しておいてくれ」
「わかりました。ソウルさん父様達をお願いします!」
「ん?ノアールも一緒に着いて来るんだよ?」
「えぇ!?」
「いや、ノアールが居なかったらどうやって皇帝達を説得するんだ?救出に向かったのに敵と見られたら大変だろ?それに皇子の一人が、「俺はここに残って逆賊を討つ」って言い出したりしたら…」
「あわわ…ミカニア兄様ならいいそうです…解りました!首に縄付けてでも引っ張ってきます!」
「よし、その意気だ。そろそろ時間だな…行くぞ!」
「はい!」
「僕はここで監視しています!急な動きがあったら連絡しますね!」
「解りました。行って来ます!」
「御武運を!」
グリムニルと別れ、会議テントを出ると完全武装のククル達とアップル達が待機していた。
「救出目標と退避場所は移動中に説明する。マギア乗り物を展開してくれ」
「了解しました。マスター!」
マギアがウィンドウを操作して乗り物を展開すると、ソウル達の目の前に飛行ドローンの様な4つのプロペラがある胴長のヘリコプターが現れた。さらにそのヘリコプターにはジェットエンジンが付いた主翼もついており、かなりの速度で移動できる物だと理解できた。
「なぁ…マギア…なんでこういうかっこいい物があるのにゲテモノや色物のばっかり出すんだ?」
「それは…皆の嫌がるかぉ…いえ、ロマンです!」
「嫌がらせの為にGバスとかパンダカー出してたのかよ!」
「いえ!よくあるじゃないですか?最初の1つや2つ微妙な物を見せて、3つ目で本命を出す…ああいうのですよ!」
「本当にぃ?」
「はい、30%は本当です」
「残り七割はなんだ?!」
「ほら!ソウル急いで!みんな乗ったわよ!」
「マギア…帰ったら説教だ」
「ソンナー…」
「私を置いて行かないでって何度言えば気が済むのよう!」
ティーが怒りながらソウルとヘリコプターに乗り込むと、運転席に座ったマギアの操縦で帝国を目指していった。
チーズ大好きククルちゃん
トマホークステーキに厚切りチーズをライドオン!まずいわけがない!
モモニカとミカニアは双子なので部屋も隣同士。そしてその右2つ先に部屋はノインの部屋があります。
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