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Wonderful Planet ~弱体化されまくった銃使いで頑張ります!~ Ver1.0  作者: ハーメルンホイッスル
ΖΩΗの楽園
73/329

黒き巨獣 1.2.3

黒き獣 連話第一回です。2か3まで続きます。


完成しました!投稿です!

 少年が来た方向から、草木を掻き分けて来る音の正体は複数の人間だった。その人間達の格好はフードを深くかぶり顔を隠す様に布が巻かれ、膝上まである長いマントを羽織った格好だった。そのマントから少し見えた防具は、全身革製で多数のナイフを装備していた。


「貴方達はどちらさんですか?」


「そいつを渡せ…帝国の犯罪者だ…」


「この少年がですか?信じられませんね…」


「そいつには重要人物殺害の嫌疑が掛かっている…だから早くそいつを渡せ…」


「はい?こんな細い腕で誰かを殺した?見た所、普通の少年だと思いますが?」


「少年だろうが何だろうが犯罪者には変わりはない…そいつを捕まえて監獄にぶち込むだけだ…」


「監獄?監獄ってアスカロン大監獄の事ですか?」


「そうだが?」


「少しお訪ねしますが、そのアスカロン大監獄で変わった事が起きましたか?」


「あぁ?知らないな?」


「(あれだけの事が起きたのに知らない?どういう事だ?)」


「もういいか?じゃあそいつを連れて行くぞ」


 男はソウルが抱きかかえた少年に近づいてきたが、ソウルは近づいて来た分だけ下がった。


「貴様…何のつもりだ?」


「最後に聞きたいのだが…この子を捕まえに来たのが帝国騎士じゃなくてなんで暗殺者なんだ?」


「!?」


 威圧する様に睨みソウルが疑問を口にすると、ソウルの言葉に男は驚き短剣を抜くと、同じ姿をした他の男達も短剣を抜いた。


「おいおい、カマかけたら見事に引っ掛かったよ…そんなんで大丈夫か?暗殺者?」


「ッチ!死ねぇ!」


「ウラァ!」


 ソウルに飛び掛かって来た暗殺者の一人が、アップルに殴られて吹っ飛び木に激突して動かなくなった。


「ソウル!こいつらやっていいのね?」


「ああ、お間抜けさんの暗殺者が先に(けしか)けて来たのだからやっても問題ない…この少年を守るぞ!」


「「「「「了解!!」」」」」


「皆さん、敵総数は15人です!ご注意を!」


「【ショット トリガー】」


 トマーチェが迫って来る暗殺者の一人に向けて剣先を向けた後、トリガーを引き魔力の塊を射出すると暗殺者は体を撃ち抜かれ地面に倒れた。


「γガンセット!連射する!」


 ソウルはβブレードを腰にある鞘にしまい、αトリガーを外した後ホルスターにしまってあったγガンに交換した。マガジンを装填しγガンの3つあるバレルが回転した後トリガーを引くと、まるでガトリングガンの様に射撃し、数人の暗殺者の体に幾つ物大きな穴を開けた。


「チィ!」


 最初にソウルに話しかけてきた暗殺者の男が、鳥の鳴き声に似た口笛を吹くと、他の暗殺者達が鞄の中から白い球体に短い紐の様な物を付けた物を取り出し、紐を着火させた後地面に放る様にして投げた。


「!煙幕か!全員密集して防御!マギアは攻撃を頼む!ティーは風魔法で煙幕を晴らしてくれ」


「「了解 (したわよう)」」


 βブレードに交換し、ソウル達は少年とマナリア、マギアとティーを中心に円陣を組んだ。煙幕がソウル達を包み込んでいき様々な方向からナイフが飛んできた。


「絶対にナイフには当たるなよ!毒が塗られてる可能性がある!」


「【水鉤爪】で叩き落として行くわ!」


「こういう暗殺者ってよく毒使うよね~芸がないって思うよ」


「対人特化職業なので仕方ないかと…そこ!私には見えていますよ!」


 ソウル、トマーチェ、アップルが飛んでくるナイフを落として行き、マギアが様々なセンサーを使って敵が居る場所に向けて左手の機関銃を発砲すると、暗殺者達の断末魔が聞こえてきた。


「マギアの攻撃が当たっているのに、それでもまだ投げナイフを止めないか…」


「何か仕掛けているとか?」


「可能性はある…」


「ただこの煙幕で状況が解ってないんじゃないの?」


「…そんなお前まさかそんな…自分達の技で?…そんな馬鹿な暗殺者が?」


「そろそろ発動するわよう!」


 ティーが風魔法の詠唱を完了させ発動すると、ソウル達を中心にした竜巻が起こり煙幕が晴れて行った。


「!?…!??」


 暗殺者の男は煙幕が晴れた事に驚き、周りを見渡した後自分しか立っていない事に気が付き、さらに驚いた様子だった。


「おい、嘘だろ?…いたよ…」


「倒れている人数が14人、あれを入れれば15人なので逃げ出した奴はいませんね」


「あ!あいつ逃げた!」


「…マカセロー」


 ソウルは、敵のアホさに落胆してしまいやる気のない声を出すと、ブーメランを投げて操り最後の一人を仕留めた。


「15人の暗殺者に追われてよく無事だったなと思ったけど…納得したよ…」


 帰って来たブーメランをキャッチした後、ブルーローズに戻しながらつぶやいた。


「ソウルさん、少年が起きそうです!」


「お?」


 地面に寝ている少年の目が、ゆっくりと瞼を開いて行くと、何かを思い出したように急いで体を起こし走り出した。


「逃げなきゃ!」


「逃げるな!」


 慌てて逃げようとした少年は、ソウルが射出したワイヤー付きフックで体を縛られた後、引きずられなからソウルの場所に戻ってきた。


「殺さないで…」


「殺さないよ…」


「本当ですか…」


「…本当だ」


「今の間は何ですか!やっぱり僕は殺されるんだぁーウワァァァン」


「ソウルさん、泣かせてどうするんですか!」


「そんなつもりは無かったんだが…」


「とりあえず宥めるから、これ外したらソウルは少しあっち行ってて!」


「そんな!?」


 アップルの言葉に驚いきしぶしぶ従い拘束を解いた後、ソウルは離れた所で体育座りをして空を眺めた。


「ほら、怖い人はあっち行ったよ~」


「もう何も怖くないですよ~」


「マナリアっち…それは危ないフラグだと思うよ?」


「そうですか?」


 泣いている少年をアップル達はどうにか宥め、落ち着いて来ると話を聞く為、銃士ギルドへ向かう事になった。


「ほら、ソウル!いつまでも黄昏てないで行くわよ!」


「この扱い…泣けるぜ…」


 ソウルはため息を吐いた後、先に行くアップル達を追って行った。




「まずは、自己紹介から始めよう俺はソウル。こっちがマギアとティーだ」


「アップルよ」


「マナリアです」


「トマーチェだよ~!」


「僕は、帝国皇帝リアノス・エンラ・バルトスの第4子ノインです!」


「よろしくノイン君。じゃあ、何故追われていたか話してくれるかな?」


「それが判らないのです…公務中に帰還命令が下り、護衛の者達と急いで帝国へ向かっていたらあの者達が急に現れて…襲ってきて…爺や優しかった女中達も皆…」


「なるほど、襲われた理由はわからないと…わからないな…今この子を殺して何になる?帝位継承問題?…ノイン君の下に兄弟はいるかい?」


「いないです…」


「では、兄弟仲はどうだい?帝位を争うほど仲が悪いかい?」


「そんなまさか!兄様達は僕に優しくしてくれます!それに次の皇帝になるのは、アル兄様に決まっていますから!」


「う~ん…わからない…帝位継承を争っている訳でもない…殺したいほど憎んでいる訳でもない…サッパリだね」


「目標を間違えてた可能性はどう?」


「それは無いと思う、ああいう奴らは入念に調べた上で暗殺してくるからな…」


「へ~そうなんだ~…あれ?何でソウルは暗殺者に詳しいの?」


「トマーチェさん…聞きたいか?なぜ俺が詳しいか?」


「ききた…くないです」


 トマーチェが興味本位で聞こうとしたが、ソウルの目が本気でヤバイ目をしており、直感で察したトマーチェは首を振って聞くのを止めた。


「なにか、聞いてはいけない事を聞いてしまったとかどうです?」


「聞いてはいけない事ですか…うーん思い当たる物は無いですね…」


「公務に出る前、誰かが話している所に出くわしたとかないか?」


「公務に出る前ですか…?あ、そういえば…」


 マナリアの質問にノインは首を傾げて考えたが否定し、ソウルの質問には思い当たる節があるようだった。


「公務に出発する前に大臣が誰かと話していましたね…確かACQUIREの伝説についてだったと思います」


「…その話の内容は覚えているか?」


「えっと~確か巨獣ベヒーモスについてでしたね。父上達もその伝説が好きなので、その伝説で盛り上がりました」


「たぶん…それかな~?」


「え?」


「多分、警告されたんだと思うぞ?君にベヒーモスの話を聞かれた大臣は、皇帝に対して「お前の親族はいつでも殺せるぞ、だから何もするな」と警告したわけだ。あの暗殺者の弱さから見て失敗しようが成功しようがどっちでも良かったみたいだし」


「え?弱い!?護衛の騎士達が武器も抜けずにやられてしまったのに!?」


「抜けなかったではなく抜かなかったのが正しいかな~」


「そんな!それじゃあまるで!…」


「そうだね騎士団もグルだね」


「そ…そんな…」


 ノインは、ソウルの言葉に驚き声を上げ立ち上がったが、騎士団も奴らの仲間だと知ってしまうと絶望してまい力無く椅子に座ってしまった。


「そんな…そんな…僕のせいで爺達が殺されてしまったというのですか…僕が言いふらさなかったら…」


「うーん…確証は無いが、遅かれ早かれあいつらは皇族に対して何かしていたと思うぞ?たまたまノイン君だったという事だろうし」


「帝国内部で不穏な動きがある事は知っていました…でもそれが誰なのか全くわからなかったのです…まさか僕のすぐ近くにいたなんて…悔しい…」


 ノインが自分のズボンを握りしめ悔し涙を流すと、ソウルは立ち上がりノインの所へ向かった後、視線をノインに合わせしゃがんだ。


「じゃあどうするノイン君?このまま帝国に帰って知らぬ存ぜぬで生きて行くか、血反吐吐くような辛い思いして戦うか…どっちがいい?」


「…僕は…戦いたいです…帝国の為にも、僕を逃がす為に身を盾にして守ってくれた爺達に報いるためにも…でも…でも僕には戦う力が無い!」


「では、殿下!俺達を雇ってくれないか?殿下が望むなら俺達は帝国に巣くう魔を払う剣、殿下を守る盾となりましょう」


「雇う…?でも今僕持ち合わせが…」


「それはこの件が終ったらでいいですよ」


「…本当に僕の力になってくれるのですか?」


「それは殿下次第です。この件が終りこちらが提示する報酬をお約束していただけるのなら、俺らは決して裏切る事は無いでしょう」


「…わかりました。お願いします!僕に力を貸してください!」


依頼(オーダー)承りました」


 ソウルは立ち上がりメンバーに視線を向け全員を見渡した後口を開いた。


「Rebellionsメンバーに告げる!ノイン殿下から依頼が入った!依頼内容は今回の件に関わる者達の排除!それと殿下の護衛だ!それを邪魔する者は叩いて潰せ!一切の容赦はするな!これがRebellionsにとって最初の依頼だ。この依頼を成功すれば俺らのユニオンは賞賛されるが、失敗すれば未来永劫後ろ指刺されてこの世界に居場所がなくなるという事を心せよ!」


「「「「了解!」」」」


「トマーチェさんはどうします?今回の件に参加するならすべて自己責任になりますが…」


「う~んここまで聞いてやらないって選択肢はないよ?何よりガンストライカーを広める絶好の機会だし参加させてもらうよ!」


「解りました。じゃあ、これからベヒーモスの話を聞きに行きますか」


「え?ソウルさんベヒーモスに詳しい人知っているんですか?」


「もちろんです。プロですから」


「プロ?」


「筋肉映画式冗談は、通じないと思うわよソウル…」


「…悲しいなぁ…」


 時代と共に忘れ去られてしまう物にソウルは涙した。




「最初の街アークライトに行かないといけないのだが…ジャバワークでは定員オーバーだな…」


「大丈夫です!マスター!お任せください!こんな事があろうかと用意していた物があります!」


「本当に?」


「真理者の塔の中にいろいろな設計図がありましたので、私の方で魔改z…アレンジしてみました」


「不穏な言葉が出たけど、とりあえず見せてくれ」


「初お披露目!輸送専用()()車両タイタスです!」


 マギアが展開したのは、路線バスに各種装甲を取り付けて、多関節の機械の足を付けた車両だった。


「‥‥‥ちょっと動かしてみてくれ…」


 タイタスの姿に顔を引きつらせたソウルは、マギアに言うとマギアはタイタスの操縦席に座り動かしてみた。タイタスを動かしてみると多関節の機械の足が動き出し、まるで台所の悪魔を彷彿とさせる動きで前に進んだ。


「マギア…ありがとうもう止めてくれ…残念だけどこれには乗れないな~これ飛ばないだろ?まさかこんなバスが飛ぶわ(飛びますよ?ほら!)飛んだぁ――!」


「どうです?マスター!私の魔改造は!」


「うん…すごくキモイ…」


「アレェー?」


「ソウル…これに乗って行くの?」


「本気ですか…ソウルさん…」


「動きがゴキ〇リなのよう!」


「あー!ティー言っちまったな!台所の悪魔だって言っちまったな!」


「なによう!本当の事じゃないよう!」


「マギア…他に乗り物は…」


「ありません」


「ック!…仕方ない、皆我慢して乗ってくれ…マギア、全員乗ったらアークライトに向かって出発だ」


「了解です」


 ソウル達はしぶしぶタイタスに乗り込んだ後、アークライトに向けて出発した。


 ~2~


「皆様、アークライトに到着しました!ご降車の際、お荷物お忘れなきようぅ…よぉろしくおぉねがいします」


 マギアがふざけながら言った後、ソウル達はタイタスから降りた。


「なかなか快適だったわね…地上走行はあれだけど…」


「そうですね…座席もちょうどいい柔らかさでした…あれですけど…」


「僕初めてです!あんな動きする乗り物に乗ったの!」


「だろうな…俺だって初めてだよ。とりあえずマギア…改善しておいてくれ…」


「何故です!?最高のデザインでしょう!?」


「台所の悪魔を思わせる仕様は全部変更しろ!今すぐ!ナウ!」


「ソンナァー」


 マギアは、渋々とウィンドウを開きタイタスを改造し始めると、ずっと黙っていたトマーチェが口に手を当てた。


「…酔った…」


「えぇぇ!?」


「状態異常を直す魔法をかけますね」


「ありがとう…マナリアっち…うぷっ」


「トマーチェさんとマナリアは暫く休んでてくれ、回復次第錬金術ギルドへ来てくれればいいから」


「ありがとう…そうする…」


「わかりました」


「他の皆は、錬金術ギルドへ出発!」


 ソウル達は、アークライトの門を守る衛兵にギルドカードを見せて城下町の中へと入り、錬金術ギルドに向かって行った。




「ノイン誤魔化せたわね…」


「まぁごり押ししたけど何とかなったよ!あっはっはっは!」


「ギルドカードが特別な物じゃなかったら危なかったですよマスター」


「そうだな…後で冒険者ギルドへ向かってノイン君のカード作るか…ギルドマスターに事情を話せば何とかなる…かもしれない」


「僕のせいで申し訳ないです…」


「気にするな~」


 ソウル達はそのまま錬金術ギルドがある場所に向かい、ギルドの扉を開け中に入って行った。


「こんにちは~」


「あ!ソウルさん!いらっしゃい!おばあちゃん呼んできますね!」


「アイシャさん申し訳ない、頼みます」


「はいは~い」


「おや?ソウルさん、今日は団体でですね」


「こんにちは、スクフォイさんちょっとアンジェラさんに聞きたい事があって訪ねてきました」


「おや?今回はどんな伝説を狙っているので?」


「ちょっとベヒーモスの事を調べています」


「おお!あの巨獣をですか!すごいですね!」


「おや?なんだいソウル?今度はベヒーモスを狙っているのさね?」


 スクフォイに挨拶をして話し合っていると、奥からアンジェラが出て来て会話に入って来た。


「ええ、そうです。ですが今回の場合ちょっと厄介な事になりまして…」


「聞かせてもらおうさね…アイシャ、スクフォイ!人数分の席とお茶を用意しな」


「は~い」


「解りました」


 アンジェラに言われた通り、二人は手際よくテーブルとイス、お茶を人数分出した。


「すみませんアイシャさん、後で二人増えますが大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ~」


「ありがとうございます。ではお話いたしますね」


 ソウルは、マッドパラサイトマザーの話から始めて行き、帝国、大監獄、と順番に話していった。ただΖΩΗの楽園の事は話さず、特別な宝が眠っている宝物庫の扉を開ける等の事にして誤魔化した。


「なるほど、大変だったみたいさね…それでその宝物庫の扉を開けるのに、ベヒーモスの角が必要なんさね?」


「はい。俺が調べた所、黒き巨獣の角が扉を開けるカギの一つだとわかっています。ただ…ベヒーモスがその黒き巨獣なのかはわかりませんが…」


「だからあたしの所に来たんさね?ベヒーモスを倒した事のあるあたしに詳しく聞こうと」


「はい」


「黒い巨獣ね…悪いけど今回は力になれそうにもないよ…あたしらACQUIREが倒したベヒーモスは希少種と呼ばれているゴールデン・レイジ・ベヒーモスと言う奴さね…通常種は紫色だし亜種と呼ばれる奴は赤い奴さね…」


「も…もしかしてお婆さんは、あの伝説のACQUIREのメンバーだったのですか!?」


「メンバーも何もリーダーのアンジェラさんですよ?ノイン君?」


「ええ!あの【殲滅創鬼】と呼ばれ世界に名を轟かせたアンジェラ・アーミトゥース様ですか!僕大ファンなんです!後でサインください!」


 ノインは目を輝かせてアンジェラを見つめると、アンジェラは顔を真っ赤にさせて視線を外し、紅茶を啜った。


「うーん…おばあちゃん…もしかして黒い獣って異常種の事じゃないかな?」


「アイシャ馬鹿言うんじゃないさね!あんな噂話嘘にきまってるさね!」


「でもおばあちゃん、見た人が大勢いるって話だよ?」


「そんなものただ、噂話に尾ひれがついただけさね」


「すみませんアイシャさんその異常種についてお聞きしてもいいですか?」


「えっと~ギルドにいる冒険者の人から聞いたのですけど、その人がゴブリン討伐に向かった際ゴブリンの巣の中で真っ黒いゴブリンがいたんですって。その真っ黒いゴブリンは異常に強くて体も大きく、パーティーが半壊しながらもようやく倒せたって話ですよ?」


「その黒い奴が異常種だと?」


「はい、他にも黒いゴーレムやらスケルトンやらの話がありますね。その話はどれも「異常に強かった」という話ですよ」


 アイシャが得意げに話すと、アンジェラが悲しそうな顔でアイシャを見つめていた。


「…失礼ですがアンジェラさん…何か知っていますね?」


 ソウルがアンジェラの顔を見て何か隠しているのでは?と思い尋ねてみると、アンジェラは驚いた顔を一瞬してため息を吐いた。


「ここで黙っていても、いずれソウルには調べられちまうだろうさね…分かったよ…話してやろうじゃないさね。アイシャ…これはお前の両親にも関係する話だ、よくお聞き」


「え?パパとママに関係しているの!?」


「ああ、そうさね。実はね…異常種についてはもう何十年も前から確認されている個体なのさね…その異常種は希少種よりも希少な存在で5000年に一度一体出現するかと呼ばれている位希少な存在さね…異常種の強さは他の種よりも異常に強く知性も高い…いや高すぎるさね…あたしが確認した個体の中にはルーン魔法を使ってきたり、人語を理解して会話できる個体もいたさね…」


「なるほど、だから異常種と呼ばれているのですね」


 アンジェラは頷き、話を続けた。


「あたしが異常種と出会ったのは、アイシャがまだ3歳の時だったさね…冒険者ギルドからの救援要請であたしとあたしの息子ソールと嫁のアクアを連れてある砦へ向かったさね…そこの砦でではモンスターのスタンピードを止める為に集まった冒険者が居てね…あたしらは回復ポーションを作る為に呼ばれたのさ…」


 アンジェラは紅茶の飲み、口の中を潤した後話を続けた。


「砦の状況は劣勢で、幾ら回復ポーションを作っても足りない程だったさね…それでも何とか持ちこたえてはいたんだけど、モンスターの数が日に日に増してきてね…次第に対処できなくなって行っちまったのさ…でも、その時のリーダーがスタンピードの原因になっているモンスターを倒そうという話になってね…あたしらもその時のPTに組み込まれたのさね」


「スタンピードを起こしていたモンスターの情報ははいつ分かったのですか?」


「リーダーが原因となっているモンスターを倒そうと言い出すほんの1時間前さね…そのモンスターの情報は前線で戦っていた冒険者達が自分達の命と引き換えにしながら齎された情報で、情報を持ってきた冒険者もあたしらに伝えると息を引き取ってしまったさね」


「一時間前…それほど危機的な状況だったのですね…」


「そうさね…それであたしらは少数精鋭で砦から出発し、迫りくるモンスターを倒しながら異常種の元までたどり着いたさね。その異常種はクリムゾンオーガと呼ばれてる種で火のスキルや火耐性を持っているのだけど、あの異常種は6属性すべての攻撃をしてきたさね」


「おばあちゃん…私のパパとママはその異常種に…」


 アイシャがアンジェラに尋ねると、アンジェラはゆっくりと静かにうなずいた。


「あの異常種の攻撃は苛烈でね…二人共…即死だったさね…助ける事も盾になる事さえできなかったさね…」


「そう…」


 アンジェラが震える手でティーカップを持ちお茶を飲んだ後、深く深呼吸した。


「生き残ったメンバーで異常種を討ち取ったあたしは異常種の研究を始めたさね…息子と嫁の死を受け入れられなかったから、憎しみに支配されちまってね…倒れて体壊しても研究し続けたよ…でも、そんなあたしを見かねた仲間が「あんたには残された子がいるだろう!それを忘れてあの子を一人にするのか!それがあいつらの願いだったのか!」って怒られちまってさ…まだ幼いアイシャの顔見て涙が止まらなくなったさね」


「うろ覚えだけど、覚えてるよ…あの時おばあちゃん、私を抱きしめた後謝りながらすごく泣いていました…」


「ごめんよアイシャ、今の今まで黙っていて…あの時、あたし自身が受け入れられなかったから、どうしても息子と嫁の死を伝える事が出来なかったのさね…それで今のまま来ちまったのさね…」


「大丈夫だよ!おばあちゃん!私は、おばあちゃんに育てられたもん!昔なら泣いて暴れてたかもしれないけど、いまなら受け入れられるよ!」


「そうかい…そうかい…」


 アンジェラは目に溜まった涙を拭い、深呼吸した後ソウルの目に視線を向けた。


「あたしが知っている異常種の情報は、全身が黒い事、異常な強さそれと研究していて分かった事なのだけど、異常種は特殊な臭いに反応して呼び寄せられるって事さね」


「特殊な臭いですか?」


「そうさね、あたしが独自に作った香の臭いで呼び寄せられるけど…欲しいかいソウル?」


【アナウンス:超大規模レイド 黒き巨獣 ルイン・ベヒーモス を討伐せよ のクエストを発見しました。このクエストの推奨人数は 2000 人以上です。推奨レベルは 120 以上です。なおこのクエストは特別なクエストな為、一度キャンセルしてしまうと2度と受注することは出来ません。また同じユニオンに所属しているメンバーも受注できなくなります。ご注意ください】


「な!2000人規模のレイドだと!」


「え!どうしたの急に!?」


「あ…何でもない大丈夫…アンジェラさんそのお香を譲ってください」


「分かったよ。ソウル…でも本当に気を付けなさいさね…異常種それもベヒーモス種を相手にするんだ…相当準備しないと倒せないよ」


 アンジェラはそう言った後立ち上がり、釜の前に立って錬金し始めた。


「皆…さっきアナウンスで2000人以上必要なレイドが見つかったと出た。やばいぞ…」


「え!?本当ですか!ソウルさん!?」


「に…二千人?…本気で?」


「これは…本気で強くならないとまずいわね…」


「マスター、これはご友人に連絡を取って協力してもらわないといけませんね…」


「ああ、そうだな…相当準備しないと勝てないそ………あ、鞄どうするか…取り返しに行くか…新しい物を用意するか…う~ん…」


 いつの間にか来ていたトマーチェとマナリアが驚き、アップルが自身の強さに不安を覚え、ソウルとマギアは準備作業をどうすれば効率よく出来るか考え始めた。それから数十分後、アンジェラが釜の中から金色の丸香炉を取り出し、ソウルのいるテーブルに座った。


「出来たさね…これを、ここからずっと北東にある「巨獣達の決闘場」と言う場所があるからそこの中心で香を焚くと来ると思うさね…」


「オカーネンはいくら払えばいいですか?」


「オカーネンはいらないよ、その代わり終わったら無事な姿を見せておくれさね…必ずだよ…」


 ソウルを見るアンジェラの目が、本気で心配する親の様な目で見られソウルは「必ず無事に戻ってきます」といい頷いた。


「ノイン君、どうする?俺らと来るか?それとも討伐が終るまでこの街で待つか?」


「え!連れて行ってくださいって言ったら連れて行ってくれるのですか!?」


「ああ、もちろん連れて行くよ?でも来るなら、命の保証は出来ないし俺らの指示に従ってもらう。まぁ付いて来ても遥か後方で見ているしかできないが…判断は君に任せる。だけどその判断は全て自己責任だ」


「お城の皆みたいに危険だからとか言わないのですね…」


「言わない!ノイン君…自分の道は自分で選択しないとな…そして選択したなら責任背負って進んでいくしかない…誰かの意志に任せたまま責任から逃げ続けるろくでなしになって行くか、責任を引きずりながら険しい道を行く勇者になるかはよく考えて自分で決めてくれ…俺らはただその道を支える事しかできないからな」


「自分の選択…責任…わかりました…ソウルさんの指示に従うので連れてってください!」


「…確認するが、その先のリスクも考えて選んだ選択なんだな?」


「はい!」


「よし、じゃあ連れて行くよ。でも、いろいろ準備しないといけないから出発は早くて2週間後、長くて一か月以内に出発だけど」


「ソウルさん!一か月だと私の夏休み終わっちゃいます!」


「あ~そうか…じゃあ2週間以内を目指して頑張るか…あいつら次第…か?」


 ソウルは友人二人を思い出しながら、これからやるべき事を考え始めた。


「とりあえず、これからノイン君のカードを作りに言って競売所で鞄の値段や素材を確認した後、SP稼ぎか?いや…先に連絡しておいた方がいいか…」


 ソウルは、フレンド欄を開いて友人二人の名前をタップし電話マークを押すと、数秒間コール音が鳴り二人が呼び出しに答えた。


「ハァーイ!ジョウジ's!」


 [え?人食いピエロ?]


 [謎のワイズがでたか!?]


「超大規模クエスト見つけて、それしなきゃいけないんだけど一緒にやらない?」


 [超大規模クエスト?]


 [不穏なワードが出たな…]


「オォーウ…二人は知らないか…楽園関係の黒い巨獣についてなんだが…」


 [見つかったのか!]


 [特定したの!?]


「うん、黒き巨獣 ルイン・ベヒーモスだってさ。異常種らしいよ」


 [異常種?聞いたことが無い奴だな…ベヒーモスって言うのは分かるが]


 [そうだね~…でどれ位の人数が必要なのか教えてもらえる?あと推奨レベルも]


「えっと~推奨人数は2000人以上、推奨レベルは120以上だね」


 [に…2000以上…だと…]


 [そ…そんなクエストある訳がない!…いや、ソウルだからあり得るのか!?…俺は騙されんぞ!]


「白薔薇さん驚きすぎて素に戻ってますよ~」


 [ハッ!イケナイ…いけない…ゴホン…うちのメンバーだけじゃ足りないなぁ…総団長に連絡して人出してもらうか~]


 [2000以上だと相当強いって事だな‥‥準備期間はどれくらいだ?]


「一か月と言いたいが、うちのメンバーに小学生がいるから一か月も準備してたら夏休みが終わってしまう…なので2週間以内だね」


 [2週間か‥‥急ぐしかないな…]


 [厳しい戦いになりそうだね…準備も含めて…]


「今解っている異常種の特徴も伝えるぞ。メモの準備はいいかい?」


 [まて、準備する‥‥‥‥‥‥おkだ]


 [はいはいっと~‥‥‥オッケー]


「異常種、元来の種よりも異常な力を持った個体。6属性全ての属性や耐性を持っており攻撃速度は苛烈。また、高い知性を持つ故人語を理解したり話したりする。さらにその高い知性から強力なスキルや高等魔法を使用してくる可能性あり…体力や保有魔力、各ステータスなんかも異常と言っていいほど高いと思った方がいいだろう…今、知っているのはこれだけだ」


 [やべぇな…本気で準備しないとすぐ全滅するぜ…それ…]


 [私も本気で総団長と話してみるよ…今回の敵はガチでやばいね…]


「ああ、相当やばいが見返りも相当でかい。最初の準備で勝敗が決まるという事言ってもいい位だ」


 [ソウル達はこれからSP稼ぎ?]


「ああ、そうだ」


 [じゃあ、うちの奴らも一緒にいいかな?私も稼ぎたいし、いい狩場教えるよ]


 [俺の所もいいか?戦力強化したい]


「おk!ようこそ!地獄の入り口へ!」


 [わぁぁぁ]


「わぁぁぁ]


 ソウルが、最後に人食いピエロのモノマネをしながら会話を締めてウィンドウを閉じた。それからソウル達は錬金術ギルドの三人に挨拶を済ませ、冒険者ギルドへと向かった。




「こんにちは、フェリさん。ギルドマスターいますか?」


「あ!ソウルさん!ユニオン結成したのですね!おめでとうございます!ギルドマスターに用事ですか?いま確認してきますね」


「お願いします」


 フェリが2階に上って行き、ギルドマスターがいる部屋に向かって行くのを見ながら横にいたアップルがソウルに話しかけてきた。


「カード作れるかしら?」


「わからない…けどうまく説得できれば行けるかもしれない」


「ソウルの交渉次第って訳なのね」


「お待たせしました~お会いになるそうです。ではこちらへ~」


 ソウルの所に戻ってきたフェリが、ソウル達を連れてギルドマスターのいる部屋に向かった。


「さぁて…どうやって話をうまく持って行くかな…」


 ソウルは誰にも聞かれない様につぶやき、部屋の扉を数回ノックした後、許可を得て中に入って行った。


 ~3~


「お?どうした、ソウル?そんな団体で?何か厄介事か?」


「そうです、実は…」


 ソウルは、ノイン君の事情を話すとアインは目を見開いて驚いていた。


「おお!渡りに船とはこの事!カードの件は任せてくれ。名前を変えた特別なギルドカードを作ってやろう。その代わりに帝国について情報をくれ、どんな些細な事でもいい」


「…もしかしてギルドでも帝国が問題になっていますか?」


「ああ、帝国のお偉方さん方は他国に戦争を仕掛けたい様なんだけど、妙なんだ…武器や防具等戦争に使う道具を大量に集めているのに戦争する相手が定まっていない…大量の毛皮を集めているから、北の国に攻め込むのか?と思いきや火山でも行くのかと思うほど耐熱性の高い革素材を集め出していたりて、どうにも容量を得ないんだ」


「ええ!?戦争!?僕そんな話初めて聞きましたよ!父上や兄様達だってそんな事一言も言ってなかったし公務に出発した時見た街の雰囲気も、これから戦争をする雰囲気じゃなかったですよ!」


「ノイン君には黙っていたとかは?」


「あり得ません!僕が公務に出たの理由は、隣国との貿易契約の更新や確認、関税の調整などでしたから戦争するならそんな事やらなくてもいいはずです!それにもし戦争をしてしまったら、いろいろな契約が帝国にとって不利に働きジリ貧になるのは目に見えてますよ!」


「なるほど…民衆にも気づかれず、皇族の目も欺いて秘密裏に物資を集めていると…」


「あ~…もしかして、今俺らが抱えている問題に関係があるかもしれないですね」


「…聞かせてもらえるか?」


「もちろんですよ」


 ソウルは、アンジェラに言ったように楽園の事を特別な宝物庫と誤魔化しながら、これまでの経緯を伝えた。


「…なるほど、大変だったな…それでソウル…君は具体的にどう動くんだい?」


「そうですね…まず、宝物庫の扉を開けるカギを帝国よりも早く獲得して、帝国との交渉に使いたいと思います。さらにノイン君や皇族の方の安全を確保しつつ、今回の件で悪さをしている輩の徹底的排除…最後に戦争の回避ですが…これはどうしようか考えている最中です」


「考えているとは?」


「戦争を利用し、悪さをしている奴らを一か所に集めて一掃したいとは考えてはいますが…この場合犠牲が大きい…何とかいい方法はないか探している状態ですね…基本回避の方向で話は進めますが、そんなにうまくはいかないでしょうし」


「戦争するって言うのは他国とかではなく、君達来訪者とか?」


「ええ、そうです。ただ…今だ3対帝国と言う形なのでうまく事を運んで行かないと、最悪…」


「最悪?」


「世界が滅びます」


「な!なにぃ馬鹿な事いっているんだ!?こんな時に冗談なんか…」


「冗談ではありません‥‥先ほど宝物庫の話をしましたね?」


「…もしかしてその宝物庫にある宝が世界にとって脅威な物だと?」


「そうです」


 アインはソウル達の本気な目を見て、冷や汗をかきながら喉を鳴らした。


「そんな危険な物を帝国の奴らが欲していると…ソウル…その宝の詳細を教えてはくれないか?」


「申し訳ないがそれは出来ません…この事を話してしまうと俺ら来訪者は、永遠の苦境に立たされてこの世界を去る事に成りかねませんから…」


「そうか…なら仕方ないな…よしわかった!何とか上と話し合って帝国の対応を決めるとしよう。もしかしたらソウルの手助けが出来るかも知れない」


「わかりました。よろしくお願いします」


「頑張ってみよう。もしダメでも俺個人が協力すると約束しよう」


「ありがとうございます」


「ギルドカード件はすぐ発行するから安心してくれ。俺はこれから登城して話し合って来る」


「はい、解りました。では、よろしくお願いしますね」


 ソウル達とアインは部屋から出て一階に降りて行き、アインはフェリにノインのギルドカードを作る様に指示を出した後城に向かって行った。指示されたフェリは、ノインを受付に呼んで書類を書かせた後、一枚のカードをノインに手渡した。


「えへへ…僕のギルドカード…」


「名前はそのままか?」


「いえ、ノアールって言う名前で登録しました」


「お?じゃあ、これからノイン君の事はノアールって呼ぼうか」


「はい、お願いします!」


「ノアール、改めてよろしくね!」


「ノアール君!よろしくです」


「ノアール…確かフランス語で黒って意味だっけ?じゃあ、装備類は黒一色にしようか?」


「トマーチェさん…それはどうかと…」


「お腹減ったわよう…何か持ってないのよう?」


 1体の妖精だけが別の理由だったが、他の女性陣がノアールを囲んでワイワイと賑わっていると、ソウルに電話マークの表示が出て確認してみると、どうやらホワイトローズからの様だった。


 [おっすー!こっちは準備できたからソウル達を回収したいけど、今アークライトかな?]


「ああ、そうだ」


 [了解~今からそっち向かうね~到着予定時間は3分]


「3分間舞ってやる!」


 [ソウルのフリーダンスは邪神に捧げるやばい奴だから止めておいた方がいいよ!いやむしろやるな…]


「なん…だと…」


 [HMP絶対吸われてるよあの踊りは…]


「ショボーン…」


「踊りの話は置いといて、そこでやる事あるなら急いでね~それじゃ」


 ホワイトローズからの通話が切れソウルは首を傾げていた。


「…そんなにおかしかったかな?俺のよさこい…」


 昔、仲間内で披露したダンスを思い出しながらソウルはそう呟いた。




 ホワイトローズの飛行船「薔薇の女王」がアークライトに到着し、ソウル達を回収した後、飛行船は南に向かって行った。


「何処に向かっているんだ?」


「30分で5万SP以上稼げる狩場だよ~二足歩行のトカゲやら蟹やミミズとかの雑魚がめっちゃ沸くから大人数が必要なんだよね。飛行船じゃないと行けない場所にあって、その場所の名前は特に無いっぽいから私達は「I乱島(あいらんとう)」って呼んでる」


「アイランド?」


「いや、I乱島。乱闘とアイランドを掛けた駄洒落だね!ちなみに命名はうちの総団長」


「左様で…そういえばその総団長と連絡とれたのか?」


「明日ログインするからそこで全部話してくれってさ~他の隊長達も報告しないと行けない事が沢山あるから私…頑張るよ!」


「何?お前んとこの報告は合戦でもするのか?」


「いや、順番を争って乱闘が始まる…」


「マジかよ…パネェな…」


「今回はデルタクロスって言う最大の武器と異常種ベヒーモスと言う強力なカードがあるから勝てると思う」


「思う…なんだな…報告するのにも大変なんだね…」


「…うん」


 ホワイトローズは明日始まる激闘にうんざりしながらつぶやいた。その後、ソウル達は雑談しながら目的の島に到着すると、ホワイトローズや隊員達は下船の準備に取り掛かった。


「なるほど…島の周りが高波や岩礁地帯が多くて船ではたどり着けないな…」


 島全体を飛行船から見下ろして確認すると、島の形は団扇の様な形になっており、島の周りは岩礁地帯が多くとても海から上陸できる場所では無かった。また波も高く3mを超える高波が島の崖にぶつかる様に波打っているのが見えた。


「お?ユメミルクの飛行船も来たか」


 下を向いていた視線を元の位置に戻すと、視界にユメミルクの飛行船がこちらに向かっているのが見えた。


「ソウルさん、下船の準備出来ましたって」


「あ、今行く~」


 マナリアが、ソウルを呼びに来るとソウルは返事を返して、スカイキャリーがある格納庫に向かって行き、隊員の操縦するスカイキャリーで島に降り立った。


「着いたわね、ソウル」


「稼ぎますよ~目指せ!騎士ジョブ!」


「ヤッテヤルデスヨ!」


「マスターこの先に敵が居ます!大量に!」


「乱狩りよう!」


「あ!皆落ち着いて!行くなら説明を聞いてから!あーまって!アー!」


 ソウルは、仲間達を止めようとしたが止められず、仕方なくワイヤー付きフックで全員を縛ったが、アップル達は逸る気持ちを抑えられず、敵が居る方へ全力ダッシュしソウルを引きずって行った。


「拠点は此処だよー!休憩したいならここで休んでねー!」


 ホワイトローズは、引きずられて行ったソウルに向けて大声で伝えると、遠くから「分かったァァァァオウフ!…」と言う声が聞こえてきた。


「とんだ暴走PTだな!」


「SPに飢えてたんだね」


 友人二人が頷きながらしみじみと言った。




「オラァ!」


 アップルが、膝位の大きさの蟹を殴って黒い霧に変えると、他のメンバーもモンスターを討伐していった。


「アップル、敵の強さは問題ないかい?」


「ええ、これならいくらでも行けるわ」


「それはよかった。ユメミルクとホワイトローズのPTがもうすぐこっちに来るから、さらに稼げると思うよっと!」


 ソウルが飛び掛かって来たゴブリンに銃弾を数発撃ち込みながらアップルに伝えると、さらにSPが稼げることにアップルはニヤリと笑った。


「いいわね!さらに暴れさせてもらうわ!」


 アップルは変身した後、胴回し回転蹴りから回し蹴りを繋げゴブリン一体を屠り、そのまま走り出すとその先にいる二体目のゴブリンの顔面に掌打を叩き付け、そのまま頭部を掴んで地面に押し倒し、ゴブリンの頭に膝を落とした。


「‥‥嘘だろ…陸〇の技をこの目に出来るなんて…」


「リアルじゃ教えて貰っても出来なかったけど、この世界なら出来たわ!」


「え?教え?…え?」


「私が通っている道場で教えてくれたの!門下生は私しかいないけど…」


「アップルさんの通う道場名前って圓〇流とか名乗ってたりします?」


「さぁ?知らないわ。うちの執事がやってる道場なんだけど…そういえば名前とか知らずに通ってたわね…」


「マジか…(一子相伝で伝えられてきた技も他人の子に伝えないと行けない事情が出来た?…これも時代のせいか?…深く聞くのは止めとこ…)」


 ソウルは視界にアップルを入れながら銃を撃ち続け、アップルの繰り出す技を観察していた。そしてその10分後、準備が出来た友人二人のPTがソウル達がいる場所に来ると戦闘を開始した。


「やぁ!おまたせ!ユニオン連携の承認送るね~」


「俺も送っておいたぞ!」


「はいよっと」


「おk~」


「さぁて…暴れるかな!」


 2人のPTが戦闘に入って来た事で、その場は様々なスキルや魔法が飛び交い、まさに大乱闘と言えるほど激しくなっていった。


「あっはっは!エフェクトで敵が見えねぇ…」


「何故か皆さん争う様に敵に攻撃を与えていますね…まるで早い者勝ちだと言わんばかりに…」


「マギア、こうなったら俺らも近接で行くしかないな!銃だと味方に誤射しそうだ」


「そうですね!では、私が索敵して先導しますので着いて来てください」


「了解」


 ソウルは、βブレードに付け替えマギアに付いて行き、今だ戦闘状態になっていない地面から上に向かって蠢いている股下位の長さのミミズに、攻撃が当たる瞬間に引き金を引いて大ダメージを与えた。


「中途半端なジョブスキルじゃ一撃必殺にはならないか…」


「それでも2撃か3撃で倒せますよ?」


「そうだけど、一撃必殺でどんどん倒していった方が効率はいいよな?」


「そうですね…今獲得しているSPでスキル獲得しますか?」


「そうする、ちょっと護衛頼むわ」


「了解です」


 ソウルはウィンドウを開き、撮影時ではSPが足らず取れなかったスキルや、中途半端に上げていたスキルLvを上げていった。


「まだSPが足りなくて取れない奴が結構あるな…まぁやって行けば貯まるか…よし!マギアありがとう」


「では、先程と同じ様に先導しますね」


「頼む」


 マギアが、先頭で敵を探して見つけた敵をソウルが倒していくと、ソウルの視界に友人二人が競い合う様にして一匹の蟹に向かって行くのが見えた。その光景に、ソウルは悪戯心で二人が狙っている蟹に剣先を向けた後、魔力の塊を発射して蟹を黒い霧に変えた。すぐ目の前にいた獲物を取られた友人二人は、振り返るとソウルがしてやったりという表情でニヤついていた。


「おうおう!Nerf職の癖にやってくれるじゃんよ!」


「貧弱職の癖に私らに挑もうというの?これはもう、合意と見てよろしいですね?」


「俺の弾丸がお前らを超える所を見せてやんよ!」


「ほ~そこまで言うなら勝負してやろうじゃん!」


「最下位の奴は、この前行ったラーメン屋を奢ってもらおうか」


「いいだろう!」


「こっちもいいぜ!」


「勝負ですか?勝負ですね!では、私が御三方の討伐数をカウントしますね!」


「マギア、頼む」


「じゃあこのコインが落ちたら……スタートなんていうものか!」


「貴様!」


「あ!ずるい!」


 ホワイトローズが抜け駆けし、2人を置いて行くと慌てて二人も後を追って行った。ホワイトローズが最初の一体を倒したが、その後に続くユメミルクが範囲攻撃で数体倒しカウント数を増やしたが、その範囲攻撃で仕留めきれなかった敵をソウルが攻撃して止めを刺した。


「おのれ!ソウルゥ!」


「はっはっは!範囲攻撃は俺にとって最大のチャンスだ!」


「じゃあ私は、自己強化させてもらう!」


「なん…だと…」


「俺も強化するか!」


「チィ!…とでもいうと思ったか?」


「何!まさか!」


「俺が自己強化できないといつ錯覚していた?」


 ソウルは、Σウェポンに魔力を通すとβブレードに刻印されたルーンが光り出し、引き金を引くとソウルにSTR、DEF、AGIが上がるバフが付いた。


「これならもう遅れを(じゃあ、もう手加減する必要はないな!)…なにぃ!?」


「悪魔の力を見せてやるよ…」


 ユメミルクが指を鳴らすよ、全身が異形な者の姿に変身した。


「天使の力とくと見よ!」


 ホワイトローズが剣を上に掲げると、白金に輝く鎧を身に着け3対6枚の天使の翼が生えていた。


「な…なんだそれは…」


「今はまだ秘密だ…行くぞ!Nerf職!おいて行かれる準備は十分か!」


「お…おめぇらなんかこわかぁねぇ!へへへ…ハジキも必要ねぇ…野郎オブクラッシャー!」


 三人は全力でふざけ合い、暴走列車の様に敵に向かって突撃して多くの敵を倒していったが、暴走列車と化した三人は、敵味方関係なく吹き飛ばしてしまいミミランジェ、アップル、グリムニルに頭をひっぱたかれ地面に埋まってしまった。


「「「いい加減にしろ!3馬鹿!」」」


「「「申し訳ございませんでした」」」


 3馬鹿はそれから2時間説教された。


暗殺者はソウル達のレベルより下です。20位離れてます。


若い世代に自分達が流行った物が「は?何それ?」と言われる悲しみ…これが時が見えるって事なんだね…


ガンブレードってそのまま使うと怒られそうなので、銃機剣って言っています!



~2~


明かされるアイシャの両親の過去そして全く似ていないソウルのモノマネ!


異常種の強さをFF11で例えるなら、黒いゴブリン一匹と戦う場合LV70キャップのプレイヤー達がガチ装備でフルアラで挑んで勝てるかどうかわからない位の強さ…あれ?この例えだと強さが判らないか?とりあえずビックバーガー80個分の強さ…これも伝わらないかw


~3~


ギルドマスターアインも帝国に不穏な動き有として、いろいろ調べています。


総一郎はおばあちゃんの英才強化教育で社交ダンスやブレイクダンスなど様々な踊りが出来ますが、フリーで踊れと言われると途端に邪教崇拝のヤバイ踊りをします。弊害かも知れない。


I乱島は時間制限や人数制限のないアビセアで乱狩りするイメージをしてもらえればいいです。わからない人は、敵を倒すと2秒でリポップする場所と思ってください。なおこういう稼ぎ場所は世界中の至る所にあります。


βブレードに刻印されているルーンを日本語にすれば、力、速さ、強靭です。さらに文字を部分的に使うことが出来て他の効果がある魔法も使えます。


陸奥の技は雷と旋が好きです。


3馬鹿が騒げば地面に埋まる…これ世の理なり…


モチベ維持に評価お願いします! 頑張ります!


ブックマーク登録もよろしくね! 登録ありがとうございます!さらに精進していきたいです!



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[一言] 陸奥か~ 奥義で分身したり四神とかで派手に暴れるのかな?
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