学ぶこと、作る事
ロマサガの熱情の律動を聞きながら、陸に上がったカッパな気分で執筆しています。
2023/01/04 鍛冶屋を鍛冶ギルドに変更
「う~ん、金属が売ってるけど高いなぁ…いや、高くはないのだが自分としては高いなぁ…」
今手持ちのお金が少なく、ほんの少しの量を買っても素人な為、製作しても失敗してしまう事を考えると大量に必要だった。
「どうするか…うーん…金属の事なら鍛冶ギルドで相談してみるか…」
そう思い立ち、鍛冶ギルドに向けて歩いていると街の曲がり角で、勢いが乗った何かにぶつかった。
「きゃ!」
「おっと!」
ぶつかってきた何かが自分の方に倒れて来たので、足を踏ん張り衝撃を逃がす為左足を軸にした半回転をすると、ワルツのコントラチェックのような形になってしまった。もちろんソウルの手の形は支えるだけだったが。
「あ~大丈夫ですかアイシャさん?」
「え?…あ…ふぁ?」
ソウルの腕の中で両手を胸に置いて混乱しているアイシャは次第に顔が赤くなっていった。
「あひゃ―――!す!すみません! ソウルさん!かなり急いでたので!失礼しました~」
アイシャは、自分の体を起こし後ろを向くと、顔を手で抑えたり、扇いだりした後ソウルに体を向けた。
「ド…どうも失礼しました~」
「いやいや、こんなかわいらしい女性を腕の中に入れられてとても役得でしたよ」
「そ…そんな…」
ソウルは社交辞令を言うような少し笑った顔で言うと、アイシャは再び顔を赤くして恥ずかしがった。
「(錬金術…そういえば火薬も作らないといけなかったな…ちょうどいいかもしれない…)」
「ああ、いけない!急いでいるのでした!ソウルさん、失礼します~!」
「あ!少しお待ちください、向かっている先はギルドの方へ」
「え?あ、はい、そうですけど~?」
「俺も、一緒について行ってもよろしいですか?俺に、錬金術を教えてください」
「そういう事ならいいですよ~一緒に行きましょう!少し急ぎますが~」
ソウルは頷くと、アイシャと一緒にギルドへ向かった。
「戻りましたーおばあちゃ~ん」
「おや?アイシャ戻ったのかい?」
「うん、はいこれ~」
「うんうん、やっぱりこれがないとね~」
小さな紙袋をアイシャから受け取った、顔に少し皺があり白髪の祖母と思われる女性は、昔はかなり美人だったと思わせた。
「おや?アイシャ?ちょっと外にお使いに行ったと思ったら、男ひっかけてきたのかい?あれかい?思ひ人かい?」
「!?」
「違~い~ま~す~!錬金術を教えてほしいそうなのでつれてきたんです!」
「なんだい…あたしもようやくひ孫の顔が見れるかと期待したのに…」
「えっと、ソウルと言います。アイシャさんとは前、街の雑用をしていた時に商業ギルドの荷物配達で知り合いになりました。よろしくお願いします」
ソウルは帽子を取り、深く頭を下げ挨拶をすると、アイシャの祖母は口をにやけた。
「(この人がアンジェラさんかな?で…奥で(男をひっかけた)あたりから驚いてこっちを凝視している彼がスクフォイさんかな?)」
「ほう…いいね…礼節も弁えている様だ…気に入った!あんた!アイシャの婿にどうだい?」
「ひゃ!おばあちゃん何を言ってるの?!」
「いえ、とても魅力的なお話なのですが、私のような来訪者には勿体ない方でしょう、こちらに来てまだ自分の身さえ守れない弱輩者ですので今日は錬金の術を学びに参りました」
「あら、そうかい…残念だね…」
「ほら、ソウルさんもこう言ってるし彼氏じゃないってば~!…じゃあソウルさん準備するのでちょっと待っててくださいね~!…あ!スクフォイさんもちょっと荷物運ぶの手伝ってください~」
二人が奥に消えてくとソウルは何となく疑問を口にした。
「多分ですが…スクフォイさんはアイシャさんを恋人にしたいって思ってます?」
「…わかるかい?」
「ええ、男をひっかけた~辺りからすごく凝視してきましたし…」
「よく周りを見ているね…錬金術には必要な事さ、覚えておきな!まぁ…しかしあの男は優柔不断で気弱…見た目が丸すぎる…何とか気を引こうと努力はしているけど、あの娘錬金術ばっかりしてたから色恋にはうとすぎる…」
「とりあえず先にあの〇なフォルム…〇フォイ状態を解消すれば少しは自信が出るんじゃないですかね?(しらんけど)」
「あっはっは、そうだねぇ!それは間違いないね」
アンジェラが品のある笑いをすると道具を抱えた二人が帰ってきた。
「ん?何か楽しい話でもしてました?」
「何でもないさね…どれ久しぶりにあたしが教えてやろうさ」
「え!おばあちゃんが!?珍しい~!いつもだったら「あんたらがやっておきな!」って言って私達に丸投げするのに~」
「うるさいよ!…ったく…じゃあソウルはそこの釜の前に立って、この棒を持ってて」
言われた通りに釜の前に立ちアンジェラから渡されたオールのような棒を持つと三種類の素材を机の前に置いた。
「錬金術はいろんな素材を釜の中に入れて一つの物を作り出す術さね、本来はいろんな事をして金を作り出そうという試みなんだけど、今じゃもう物質変換する術っていうのが主流になってしまったね…でも基本は変わらないよ、素材を釜に入れた後、中和剤入れてかき混ぜる…これさね。一番最初は錬金術の基本素材 中和剤を作ってもらうよ」
「はい、解りました」
アンジェラの言葉に頷きソウルは三種類の素材に目を移した。
「中和剤は赤、緑、青が基本で赤が生物の素材、緑が植物の素材、青が金属の素材と水を入れてかき回す…じゃあさっそく作ってみな」
ソウルはまず最初に魚の鱗のような素材を釜に入れた後、水を入れ、棒でかき回し始めた。
「その調子、その調子」
そのままかき回し始めると虹色に光ってきた。
「虹色に光ったら完成さね、かき回すのは止めてそのままにして置くと、完成した物が浮いてくるからそれを取り出す…熱くはないから素手で取り出しても問題ないよ」
【アナウンス:中和剤(赤)が完成しました。 品質70】
チャット欄にアナウンスが表示され、釜の中から赤い液体が試験管に入っておりコルク栓された物を、アンジェラに渡した。
「・・・(試験管に入って出てくるのは謎だな…)」
「うん、いいね。次もやってごらん」
「はい」
緑、青と中和剤を続けて作り終えるとアンジェラは頷き、再び机に素材を置いた。
「次は作った中和剤を使って回復薬を作ってもらうよ。この中から体力を回復する素材があるから自分で選んでやってみな。レシピはこの中の素材2つと水、緑の中和剤さね」
「解りました」
机に乗せられた素材が5つあったが、ソウルはどれが正解か解らない為、鮮度がいい物を選んで窯に入れた。
「もう少し早くかき回せてごらん」
アンジェラに言われた通りにすると、釜の中から黒い煙が上がってきた。
「この状態になったらかき回すのが早かったっていう証拠さね、こういう場合は赤の中和剤を入れてごらん?」
「おお…徐々に虹色になっていきますね」
「材料と一緒にいれた中和剤の色で、安定させる中和剤が違うからよく覚えておきな…緑を入れたら赤、赤を入れたら青 青を入れたら緑、ってな具合さ、それとかき回すのが遅かったら白い煙が大量に出るからね、そういう時はさっき言った逆の中和剤を入れるさね」
「なるほど…三竦みの様な物ですね?」
「基本は、そうさね。だけど絶対じゃないからそれは自分で見極めるしかないね」
「奥が深いのですね…」
釜の中が完全に虹色に光だし、取り出してみると赤色の液体が入った小瓶ができていた。
「うん、ちゃんと回復薬だね、品質も高い」
【アナウンス:回復薬 が完成しました。品質80 HP回復200】
「実はね、さっきの素材はどれを使っても回復薬になる素材だったのさね…ソウルはどんな基準であの二つを選んだんだい?」
「えっと…どれを使っていいのか解らなかったので、鮮度がよさそうな物を選びました」
「なるほど、いい所に目を付けたね。素材には鮮度っていうものが付いてる事があって、品質に影響するから覚えておくといいさね。品質が高けりゃ効果も高くなるって訳さ」
アンジェラが椅子に座り、用意されていた紅茶をカップにそそぐと一息入れた。
「これで大体は教えたけど、後は自分で学んでいくしか道はないね」
「なるほど、ご教授ありがとうございました。一つ質問してもいいですか?」
「ん?なんだい?」
「錬金術で武器を作り出すことは、可能ですか?」
「できるよ、そういえば最初に身を守る術を持たないとか何とか言っていたね…特別に教えてあげるよ、あんた職業は何だい?」
「銃士です」
「おや?珍しいね、そういえばここんとこ銃士やってる奴、見なくなったね…スクフォイ!あんたの分野だろう?教えてやんな!」
「ふひぃ…わかりましたぁ…ふぅ…」
熱いのか、スクフォイはタオルで汗を拭きながら準備を始めた。
「見てくれはアレだけど、腕は確かだからそこは信頼しな」
「あ、はい」
スクフォイが素材を入れた箱を抱えて釜の前に立った。
「ふぅ…じゃあさっそく作るよ…ふひぃ…」
「よろしくお願いします」
ソウルは軽く頭を下げ釜の前に立った。
「武器錬金で一番大切なのはイメージが大切なんですよ…ふぅ…頭の中でイメージが固まってないと形にはならないのですよ…頭のイメージがかき回し棒を伝って釜の中に反映される…これは錬金術の神秘!」
急にテンションが上がったスクフォイに驚きつつも説明を聞き続けた。
「じゃあ、実際にやってみましょう!ソウルさんは銃士ということで銃をイメージしながら素材を釜に入れてください。金属素材二つと植物素材、緑と青の中和剤 火薬です」
机に置かれた素材を取り釜の中に入れて、パッと思いついたモーゼルM712を思い浮かべた。
「これは…少し難しいですね…」
かき回すのが少しでも遅いと白い煙が大量に出てしまい、早ければ黒い煙が出てくるのを何度も繰り返し中和剤を入れて安定させた後、ひたすら適切な速さでかき回していった。
「ソウルさんは初めてで錬金スキルも育っていないので難しいのは当たり前ですよ!でも、失敗しない手前を見ていると才能を感じますね!」
次第に釜の中が虹色になっていき、光だした。
「おお!完成しましたね!初めてで成功するのはすごい事ですよ!」
「(これは、社交辞令なのか本当にすごいのか解らないな…)ありがとうございます!」
釜の中から銃を取り出すと確かにイメージしたモーゼルM712が出来ていた。
「これは…面白い!」
「そう!面白いのです!楽しいのです!不思議なのです!」
ソウルの顔に汗まみれの顔が近づき興奮しているスクフォイから二歩下がった。
「おっと!思わず興奮してしまいました!…ふぅ…失礼、完成した物は差し上げますよ!」
引き気味のソウルの顔を見たスクフォイは、汗をタオルで拭い落ち着いた。
「ありがとうございます!スクフォイさんのおかげで少し前に進むことができました」
「そうですか?そういってもらえると嬉しい限りですよ!武器錬金の事に困ったらいつでも来てください!んふー」
鼻息を出し、はにかんだスクフォイは椅子に座り休憩を始めた。
「じゃあ、そろそろお開きにしようかね、ソウル…錬金術はすごい力を秘めている術さ…極めればものすごい物を作れたりするだろうさね…でも忘れちゃいけないよ、大きな力にはそれと同じ代償や責任が付いて回る…身勝手に使えば何もかも失うよ、心しな」
「はい!心に刻みます!ありがとうございました!」
「あれ?もう終わりですか~?私の出番は~?」
「無いさね」
「そんな~!準備して待ってたのに~!」
「うるさいよ!アイシャ!今度来た時教えればいいだろう!あたしゃもうお腹がすいたよ!飯にしてくれ」
「う~絶対ですよ!絶対にここにきて私の錬金術ならって行ってくださいね!」
「あ、はい、その時はお願いします。では、今日は本当にありがとうございました。失礼します」
「またいつでも来な」
ソウルはアンジェラの言葉に会釈で返し錬金術ギルドを後にした。
「錬金術、楽しかったなぁ…侮りがたし」
自分が作った銃を眺め、悦に浸った。
「まさか錬金術を学んで銃が手に入るとは…何が起こるか解らない物だなぁ…あ!弾…」
銃に必要な弾のことを思い出しどうするか考えた。
「弾製作にも金属が必要か…最初の目的通りに鍛冶ギルドに向かうか…」
ソウルはいい気分で鍛冶ギルドに向かって行った。
感想にご指摘がありました中和剤の事なのですが、基本は三竦み方式で入れる中和剤を変えます。ただ適切な速度でかき回せば、追加の中和剤は不要になる為、必ず入れる必要はありません。また、最初に入れた同じ色の中和剤を煙が出ている状態で追加すると、爆発します。
今回は緑と青の中和剤を最初に入れたので、赤の中和剤を入れるしかないという訳です。
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