第3の部屋・後編
難産でしたが、お楽しみ頂けたらこれ幸いです。
次回更新は、10月9日 0時です!
「【トライデントランジ】」
「うひゃひょわぁぁ!」
マナリアがスキルを使うと、ガスライターの頭、左脇腹、右足を同時に貫く3段突きを放ったが、ガスライターは情けない声を上げながら、ギャグキャラのように体を柔らかくさせて突きを回避した。
「せい!」
突きが回避されたマナリアは、続けざまに槍を横に薙いで攻撃したが、ガスライターは槍が当たる寸前で体を仰向けに逸らし、すぐ上を通過していく槍を目で見送りながら回避した。
「【シールド・インパクト】」
「うわぁ!」
マナリアは横薙ぎの攻撃の後、盾を前に出しながら体ごとガスライターにぶつかると、ガスライターはまるで高速走行中の大型トラックに撥ねられたかのように弾き飛んで、床を転がって行った。
「何!?その威力!?」
「【蒼き血の矜持】【ランス・チャージ】」
ガスライターの言葉に答えず、マナリアはスキルを使って自身の攻撃力を上げた後、2つ目のスキルで槍に力を溜めながらガスライターに接近した。
「【バードラインスプラッシュ】」
ガスライターは、噴出器から白くネバネバした半液体を周囲に撒いて近づけないようにしたが、マナリアはその手前で高く跳躍し、更にエアリアルを使って白い半液体が撒かれた場所を飛び越えた後、ガスライターに槍を力強く突き出した。
「っちぃ!」
ガスライターは横に跳んで回避したが、マナリアの槍の穂先はガスライターを追い、左腕を貫いて飛ばした。
「腕が!」
「…ギャグキャラみたいな回避をしませんでしたね?」
「…」
マナリアの言葉に、ガスライターは顔を顰めた。
「このまま押し切らせてもらいます!」
「っく!こうなったら…」
マナリアは、ギャグキャラ避けはもうできないと察して武器を構え直して攻撃しようとしたが、ガスライターは後ろに下がりながらマナリアから距離を取り、腰のベルトに付けてあった黒い石を右手でもぎ取り、胸の心臓がある位置に押し当てた。
「【トランス・シャドウワーパンサー】」
ガスライターがスキル名を言うと、胸に押し当てた石が黒い光を放ちながら一瞬の内に液状化すると、液状化したものが意思がある様に動いて、ガスライターを飲みこむ様に包んでいった。
「(トランス?…もしかして何かに変身したのかな?それともまた何かのアーティファクト?何にしても注意しないと…)」
マナリアは、謎の液体に飲み込まれたガスライターを警戒を高めて観察したが、その数秒後に黒い液体が突然硬化して行った。そして、完全に固まった後にひび割れていくと、中から全身に影を纏った豹の獣人が現れた。
「ガァァァァ!!」
「黒いと…豹?」
体を包んでいた黒い物が全て剥がれ落ちた時、ガスライターは獣のような咆哮を上げた後、マナリアを鋭く睨んだ。
「(くる!)」
マナリアは、ガスライターの攻撃がくると察知して盾と槍を身構えたが、当然背中に大きな衝撃が走りHPが2割削られた。
「え!?」
突然、後ろから攻撃された事に驚きの声を上げたマナリアは、崩された体制を直しながら後ろを振りむいたが、そこには誰も居なかった。
「グラァ!」
接近して来たガスライターが右手の爪を鋭く伸ばし、アンダースローをする様に右手を下から大きく振り上げてマナリアを切り裂こうとしてきたが、マナリアはその攻撃を盾で防ぎ、反撃しようと槍を握る手に力を入れたその時、再び背後から攻撃されてしまい反撃できなかった。
「っぐ!(また後ろから!?)」
「ガァァァ!」
背後から攻撃で体勢を崩したマナリアに、ガスライターは畳みかけるように連続攻撃をしてくると、マナリアは、立て直しながら盾で攻撃を防ぎつつ、ガスライターを観察した。
「(あの体に纏ってるのは何だろう?なんか半透明だけど黒い物がユラユラしてて、まるで影みた…あれ?もしかして…)」
ガスライターを纏っている影を見て、マナリアは背後から攻撃して来たモノの正体が何となくだが分かると、ガスライターの攻撃を盾で防ぎながら一つの魔法を詠唱した。
「夜闇を照らせ【ライトボール】」
魔法を発動させるとマナリアの背後に光の球が出現して、影の向きが正面に来たが、その影から影で形作られた大きな左腕が伸び出ていた。
「あ!やっぱり!【パリィ】」
背後から攻撃して来たモノの正体がガスライターの左腕だと分かると、マナリアはガスライターの攻撃を盾で弾いて大きく仰け反らせた後、自身の影から伸び出ている左腕を攻撃した。
「グゥゥ…」
攻撃された左腕はマナリアの影に倒れて沈んでいったあと、ガスライターの切断された部分から影の左腕が生え出てくると、ガスライターは悔しそうな唸り声を上げた。
「仕掛けが分かれば!」
マナリアは、ここで決めようと決意して槍を勢いよく突き出すと、ガスライターは体を逸らして回避しようとしたが、槍の動きは思ったよりも速かった為、左肩に深い切り傷を負った。
「(ここで引いたら負ける!)」
左肩を負傷した時、ガスライターは引いたら負けると直感し、両手の鋭い爪で反撃したが、マナリアはその攻撃を盾で防いで再び槍を突き出した。この、ガスライターはマナリアの攻撃を避けて反撃し、マナリアは盾で防いで槍を突き出す、という攻防を徐々に速くしながら続けて行った。
「グラァァァ!」
何十回と繰り返した攻防で、ガスライターの体には無数の切り傷が付き、そこから大量の血が流れ出ていたが、一切怯むことなく声を出しながら爪で攻撃すると、その攻撃を防いだマナリアの盾に大きな亀裂が走った。
「っく!」
「(行ける!)」
ガスライターは、マナリアの盾に大きな亀裂が入ったのを見て勝利を確信し、大ぶりの追撃をすると、マナリアの盾が砕け散った。
「(勝った!)」
ガスライターは、マナリアに向かって猫だましをする様に両手を合わせると、部屋中の影から無数の鋭い黒い棘が勢いよく伸び出て、マナリアを突き刺そうと向かって行った。
「【騎士の輝き】」
盾が砕かれたマナリアは叫ぶ様にスキル名を言うと、マナリアとガスライターの中間で閃光が走り、マナリアに向かって来ていた黒い棘を掻き消した。
「グアぁ!?」
閃光で目の前が暗くなったガスライターは、突然胸に不自然な衝撃が走ったのを感じて驚きの声を上げた。
「あ…」
ガスライターの暗闇は徐々に晴れて行き、視線を下に向けてみると、胸に槍が刺さっている事に気が付いた。
「私の勝ちです」
「…うわぁ…幼女っよぃ!」
ガスライターの言葉に、マナリアは最後の言葉がそれでいいの?思いながら、ガスライターの胸に突き刺した槍を引き抜いた。
「…ふぅ」
淡い光を出しながら消えていくガスライターを見ながら、マナリアは一息ついたあとアイテム欄を開いた。
「ソウルさん達は大丈夫かな?」
マナリアはそう呟きながら、アイテム欄からフレンド欄に切り替えた後、ソウルの名前をタップした。
【シールド・インパクト】 対象に体当たりして大きくノックバックさせる。
【蒼き血の矜持】 自身に攻撃力が20%上昇するバフを付与する。また、PTメンバーが【蒼き血の矜持】を同時に使用した場合、スキルの効果は発動した人数分強化される。効果3分
【トランス・○○】 「封印石」を使用し、中に封じられているモンスターに変身する。
「封印石」とは、モンスターを捕獲する事が出来るアイテムですが、1度使うと消費されてしまうので、有名なボールのようにモンスターを戻すような事は出来ません。また封印したモンスターは敵対したままなので封印石から出した場合、普通に襲われます。
モンスターを捕獲すると、封印石はモンスターの属性と同じ色になります。
【ライトボール】 自身に追従する光の球を出現させる。効果時間3分 効果範囲半径2m
この【ライトボール】は、ジョブ制限など制限は無くMPがあれば誰でも使えますが、キャラ作成時に最初に選んだジョブが魔法関係のジョブだった場合、デフォルトで付いています。
【騎士の光輝】 強烈な光閃を発して敵対している全ての対象に暗闇のデバフを付与する。効果時間5秒
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