バラックの港町 そして辿るべき道筋
お待たせしました。
それではお楽しみください!
「マスター、マスター!こんなものも作ってみました!」
ソウルが薬品類を錬金窯で作っている最中、マギアが円柱の上にキッチンタイマーの様なダイアルを付け、下には2本の管が付いた物を渡してきた。
「この中に回復薬やMP回復薬を入れて、ダイアルレバーを数字に合わせるとマスターのHMPが設定した数字以下なった時、自動的に回復薬が出る機械です!これの管先をこのパッドにつなげて使います」
「このパッドはどこに付ければ?」
「心臓に近い胸と肝臓がある位置に付けます」
ソウルは装備を一旦外し、言われた場所にパッドを付け管をつなげた後、装備を着直した。
「設定はそこのスイッチを切り替えてやります」
最初にHP設定のダイアルを一回転させ60に設定した後、スイッチをスライドさせMP設定を15に設定した。
「それでHPが60%を下回った時回復され、MPが15%以下になった時MP回復薬が出る設定になりました」
「便利だな、ありがとう」
円柱を捻って回転させるとダイアル部分が外れ、回復薬が入れられるようになっていた。
「さっそく回復薬を入れるか」
ソウルは出来たばかりの回復薬を入れていくと6本分入り、MP回復薬も同じくらい入った。
「60%下回ったら全快するまで出続けるのか?」
「はい、そうです」
「わかった」
ダイアル部分をきっちり閉め腰のベルトに引っかけた。
「よし、もう十分作ったし冒険に戻ろうか」
「了解です、マスター。 それではジャバワークを展開します」
マギアの姿が消え、ソウルの目の前にジャバワークが現れると、ソウルはジャバワークに乗った。
「マスター!前回の反省点を見直しシート付近に腰に付けるシートベルトをご用意しました、お使いください」
「これか?わかった」
マギアの指示で、座席の後方に有ったバックルを腰の中心に付けると磁石の様にくっ付き、トングをバックルに差し込んだ。
「よし、つなげた」
「では出発します!」
ジャバワークが垂直離陸を開始し、南西に向かって飛行していった。
「お!あれは…海か!」
「そのようですね」
二人は、遠くの方に見える海を見つけ、興奮した。
「じゃあ、あそこがバラックの港町か?」
ソウルは帽子の鍔を触り、遠くを見ようと目を細めると、多くの木造船が止まってる港が視界に入った。
「あの場所に真理者の腕の情報があるのですね!」
「多分な~」
「多分ですか?」
「確認した訳じゃないからな」
「なるほど」
ソウル達は、港町の入り口に着陸した後、衛兵にギルドカードを見せ、町の中に入っていった。
「よし、じゃあ冒険者ギルドに行って登録と情報がないか聞いてみるか」
「了解です、マスター。ルートを設定しますね」
マギアがウィンドウを操作し、ソウルの足元に光の線が現れた後、二人は光の線を辿り冒険者ギルドに入っていった。
「ようこそ、バラックの街の冒険者ギルド支部へ 本日は、どのような要件で?」
「すみません、この港町に初めて来たので登録お願いします。それと真理者の腕に関する情報は無いですか?」
「すみません、その…真理者?の腕と言う物は存じません…登録は出来ますが…」
「そうですか…では、登録だけお願いします」
受付の女性に、真理者の腕の情報を聞いてみたが首を横に振られ、登録だけを頼むとソウルのギルドカードをもって奥へ向かい数分後、スクロールとカードを持って戻ってきた。
「こちらが、バラックの港町の地図になります、カードもお返ししますね」
「ありがとうございます…う~んこれからどうするか…」
「もしかしたら、フォメルさんなら何か知っていかもしれませんよ?」
ソウルは、これからどうするか上を向いて悩んでいると受付の女性がソウルに声をかけた。
「フォメルさんとは?」
「なんでも昔、いろんな伝説について調べていた学者さんらしいです、今はお弟子さんがそれらを引き継ぎご隠居なさってますが気のいいお爺さんなんですよ」
「なるほど…その方は何処に居られますか?」
「えっと~この時間なら~…」
受付の女性が壁にかかってる時計を見ると午後2時を指していた。
「この時間なら公園で日向ぼっこしているか、喫茶店でお茶してますね」
「なるほど、では伺ってみますね」
ソウルは、受付嬢に軽く会釈した後、冒険者ギルドを出た。
「公園と喫茶店どちらから先に向かいますか?マスター?」
「公園から行ってみよう」
「わかりました」
ソウルは、地図を開き公園の場所を確認した後そこに向かった。
「それらしい人はいませんね」
「子供とカップルしかいないな…」
その公園は、手入れされた芝生が広がっており複数のカップルが芝生の上でいちゃつき、その近くの木製のアスレチックで子供達が遊んでいた。 ソウル達は周りを見渡し、フォメルと思しき老人の姿が見えず、喫茶店に向かう事を決めた。だがその道中大通りに出た時、杖を突いて歩いている老人が、なぜか急いでいる若者とぶつかり転んでしまった場面に出くわした。
「爺ぃ!邪魔だ!」
「大丈夫ですか?」
悪態を吐いて走り去っていく若者を睨みながら、ソウル達は転んだ老人の下へ行くと、どうやら腰を痛めてしまい動けない様だった。
「イタタ…若い頃ならあんなのひょいって避けられたんじゃがなぁ…」
「とりあえず、治療できる場所へ運びますね、私の背に乗ってください」
「申し訳ないのぉ…家に薬があるから家まで運んでくれるかのぉ?」
「ええ、大丈夫ですよ、お家は何処ですか?」
「あっちじゃ」
老人が、ソウルの背に乗りT字路になっている大通りの左を杖で示すと、ソウルは示された方へ歩き出した。そうして、暫く歩き老人が右手にある脇道へ杖を示すとソウルはその脇道を歩いて行った。
「ここじゃ、ありがとさん すまないけど、このまま家に入ってそこで降ろしてくれるかの?」
「はい、わかりました」
脇道の先に、二階建ての家があり老人はその家を杖で指した後、ソウル達に家の中まで運んでもらう様に頼んだ。ソウルは老人に頷き、玄関から中に入ると少女が一人台所に立っていて、少女はソウルに背負われた老人を見て驚いた。
「おじいちゃん!どうしたの?!」
「おお、ミーコ、すまないけど薬撮って来てもらえるかの?あの悪ガキに突き飛ばされて、この人が親切にも儂をここまで運んでくれたのじゃ」
「タントが!?おじいちゃん、ちょっと出かけてくるね!タントをぶっk…お話してくるね…」
「いや、薬をじゃな…」
老人がミーコに薬を持ってくるように頼んだが、そのミーコは、暗い顔をして家を飛び出して行ってしまった。飛び出していったミーコを、目で追う事しかできなかった老人は、肩をすくめ首を振った。
「やれやれ…血の気の多いのはきっと嫁さんの血じゃな…」
「えっと…俺が薬を取ってきましょうか?」
「おお、すまないのう、二階に上がってすぐの部屋に薬箱があるからお願いできるかのう?」
「わかりました」
老人を椅子に降ろし、ソウル達は二階へ上がるとその近くに部屋があり、部屋の扉を開け入った。その部屋の中は本で溢れており、本棚に入りきらない程の量な為いたる所に本が積み上げられていた。ソウルとマギアは顔を見合わせた後、この中から薬箱を見つけなければいけない事に落胆した。
「それにしてもすごい本の量ですねマスター?」
「そうだなぁ…とりあえずあまり触らないでおこう…下手に触ってこの山が崩れたら大変だし」
「そうですね…」
マギアとソウルは、慎重に薬箱を探していくがどこにも見当たらず、ソウルは首を傾げながらそれでも探し続けた。それから探し続けて数十分が経ち、ふとソウルはマギアに目を向けるとマギアが一冊の本を熱心に見ている姿が見えた。
「マギア、何を見ている?薬箱あったか?」
「いえ、見つかっていません…ですが、すごい物を見つけました!」
「え?何?なにかいいレシピの本でもあったの?」
「いえ、そんなものよりいい物です!マスター!」
マギアが、熱心に見ていた本をソウルに見せるとそこに描かれていた物は、男女が絡み合っている絵だった。その絵は、江戸時代に描かれたような枕絵でかなりハードな内容だった。
「って、真剣に何を見ているかと思ったら春画じゃねーか!それも大昔に描かれて美術館にありそうな奴…」
「すごいですよ!ああ…こんな体位で?!…こっちは軟体生物?!…あたぁ!」
ソウルはマキアの球体にチョップした。
「真面目に薬箱を探せ…いいな?」
「あ…はい…(記録だけして後で熟読しよう…)」
ソウルの怒りがマギアを圧倒し、薬箱を探したが一向に見つからず、一度老人の元に戻ってもう一度聞いてみようとして二人は一階に降りていき、老人の方に顔を向けると、テーブルの上に薬箱と書かれた箱が空いてあり、老人が申し訳なさそうな顔をしていた。
「すまんのう…朝ここに置いたのをすっかり忘れて部屋の中にあると思い込んでたようじゃ…二人が二階へ上がった時にこのテーブルにある事に気が付いてのう…」
「‥‥‥そうですか」
「いやはや、年は取りたくないのう!物忘れがひどくてかなわん!あっはっはっは」
老人が笑いながら頭を軽くたたくが、二人はただ無言でいると、老人が小さくすまんと言った。
「とりあえず、薬箱が見つかってよかったですね、では俺らはここいらで失礼しますね」
「そうですね、マスター。早くフォメルさんを見つけて真理者の腕の事を聞かなければ!」
「ん?おぬしら儂に用があったのかの?」
「え?それはまさかあなたがフォメルさんですか?」
「いかにも、儂がフォメル・クーインじゃよ、真理者の腕について聞きたいとな?」
「はい、そうです」
ソウルは頷き、フォメルが顎に手を当て何かを考えていた。そうして二分が経過しフォメルがソウルの顔を見て口を開いた。
「すまん、思い出せん」
「神妙に待たせてそれかよ…」
思わず、ずっこけたくなる衝動を抑えながらソウルは、ため息を吐いた。
「マギアどうしようか…他の手がかりを探すか?」
「そうですね…アンジェラさんに頭を下げて別のヒントを聞くって言う方法もありますが…」
「いや、それはさすがに…」
「アンジェラさん?…アンジェラ?…」
二人が話し合っている中、フォメルがつぶやきながらソウルの鞄を見つめると、フォメルの目が見開いた。
「ああぁ…!思い出した!アンジェラ・アーミトゥース!そうだ!そうだ!あの時の恐怖が元ですべての記憶を封印したのじゃった!」
「恐怖ですか?」
「そう、あれは昔儂がまだ若かった頃じゃ、急に現れて腕の事について教えろ!って言われてな…当時、真理者の腕の事については少ししか解らずそれを教えたら、「それっぽっちかい?そんなのあたしでも知ってるよ!あぁ、もうめんどくさいからそれっぽい所に連れてく!」なんて言われて、何の関係もないドラゴンの墓場へ行ったり、氷山の中にある巨人が住む神殿に無理やり連れていかれたんじゃ…そこでやることなす事滅茶苦茶で腐った死体を凍らせて素手で砕くわ、巨人が入ってはだめだって言っているのに、正面突破で入って行くわで大変じゃったんじゃ…」
フォメルが、体を震わせ頭を抱えながら言うと、ソウルは憐みの目を向けた。しばらくの後フォメルが落ち着きを取り戻し、ソウルは改めて真理者の腕について聞いてみた。
「思い出されたという事で、真理者の腕について何か教えていただけますでしょうか?」
「そうじゃのう…まず場所について話そうかのう…真理者の腕がある場所は、ここから東へ海を渡って行き骸骨島と言う場所まで向かうんじゃ、その島で嵐越えの儀式をした後、今度は北に真っ直ぐ進むんじゃ 北にずっと進んでいくと黒い雲が空にあるからその雲の中に入って上昇し続けると、六芒星の形をした6つの塔があり、そこの中心の7つ目の塔の最上階に祀られてあるはずなのじゃ…」
「なるほど…あるはずっという事は確認はしてないのですね?」
「そうじゃ…とある理由で撤退しなければ行けなくなっての…」
フォメルが悲しそうな顔になり理由を話さない事に、ソウルはとてもつらい事があったのだろうと思い、深くは聞こうとはせず別の質問をした。
「塔があると言いましたがその6つの塔は何の塔なのですか?」
「各塔の最上階には中心の塔へ入る為の鍵の素材があるのじゃ…だから塔を一つ一つ攻略して行かねば中心の塔へは入れないという仕掛けじゃな」
「鍵は錬金術で合成するのですか?」
「そうじゃ…そういえばあの時、正しい順番で合成しなければいけない、とアンジェラが言っていたのう…儂は錬金術士ではないからその辺の事はさっぱりじゃ…」
「なるほど…ありがとうございます、マギアは何か質問あるか?」
「一つ程…あの春画の続きはあr…あいたぁ!」
「失礼した、大体の事はわかったのでさっそく向かってみたいと思います」
「困った事になったらいつでも訪ねて来てくるのじゃ、相談に乗るからのう」
「はい、その時はお願いします、では失礼します」
アホな事をを言ったマギアに、チョップを入れて黙らせた後マギアを横に抱え、フォメルの家を出た。その後、脇道から大通りに出ると、血だらけの角材を持ったミーアが左から歩いてくるのが見え、何かを引きずりながらソウルに近づいてきた。
「あ、貴方は!すみません!おじいちゃんを助けてもらったにもかかわらず挨拶もしないまま飛び出しちゃって…あの…おじいちゃんを助けてくれてありがとうございました!」
「い…いえ、俺の方でもフォメルさんを探していたので大丈夫ですよ、有用な話を聞けました」
「それって何か伝説にまつわる話ですか?」
「ええ、そうです」
「なるほど…もしよかったら今度伝説についてお話ししましょう!私好きなんです…おとぎ話や伝承って…」
「そ…そうですか、その機会があればぜひ」
「そうですか!じゃあ楽しみにしてますね!」
ソウルが、チラチラと引きずっている者を見ながら話していると、その引きずっている者はフォメルさん突き飛ばした青年で、「ユルシテ‥‥スミマセン…ゴメンナサイ…」とつぶやき、顔面がボコボコにされ体も血と痣だらけだった。その事にソウルは、血の気を引きながら会話を終えると、脇道に消えていくミーナを見送り視線を上に向けた。
「この世界の女子怖いわぁ…」
ソウルのつぶやきは空へと消えていった。
お絵描きパッドなるものありけり…これなら落ちてテータが飛ぶって言う現象もないかな?
まぁお金ないから買えませんが!
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