ネーバス文明遺跡で 2
完成しました!おたのしみくだにゃい!…失礼ワザと噛みました!
次回更新は、2月27日 0時更新です!
「届け!」
地面が陥没して、下に空いていた空洞に落下したソウルが、リリアナを胸に抱えながら右腕を上に向け、手首からブルーローズをひも状にした物を壁に目掛けて投げ飛ばした。
「よし!」
ブルーローズの先端がしっかりと壁に粘着した事で、ソウル達はこれ以上落下する事はなくなったが、物理法則で振り子の様になって目の前に岩壁が迫って来ると、ソウルは両足を少し曲げた形で壁に向けた後、衝突時に屈伸して勢いを殺した。
「ふぅ…大丈夫か?リリアナ?」
「…」
「リリアナ?」
ソウルは、何も答えないリリアナに視線を向けてみると、目を大きくさせて驚いた。
「気絶してるだと!?」
ソウルの腕の中にいるリリアナは、顔を赤く紅潮させながら気絶していた。
「何かのデバフを食らったのか?…でもデバフマークは無いし…なんだ?」
視界の左上に、簡易表示されてあるパーティーメンバーのステータスを見たが、リリアナの所には何のマークも付いていなかった為、ソウルは首を傾げた。
「…とりあえず降りるか」
ソウルは、今のこの状態考えても仕方がないと思った後、上を見上げて這い上がる事が出来るか目で確認してみたが、掴める所が少なく更には距離も空いている為、無理だと判断すると、ブルーローズを伸ばしながら下に降りて行った。
「これは!」
ブルーローズの残量を気にしながら下に降りて行き、更に大きく広がっている空洞に出ると、眼下に見えた風景にソウルは驚きの声を上げた。
「街か?…だが何か妙だな」
下に見えたのは、数百億の人々が暮らしていると思われる巨大な街だったが、ソウルはその街に驚きながらも何か違和感を感じた。
「お?」
感じた違和感が何なのか考えなら降りて行くと、ちょうど真下に金属とコンクリートの様な複合材料を使って作られた塔があったので、ソウルはその塔の屋根に降り立った。
「(ブルーローズが残り少しだったから助かったな)」
ゲージに残量が1割しかないのを見ながら、伸ばしたブルーローズを回収すると、ひも状のブルーローズが掃除機のコードを巻き取る様な形で高速に手首の中に戻り、表示されたゲージも回復して行ったが、全て回収するのに4分ぐらい掛かった。
「さてと…」
ブルーローズを全て回収したソウルは、未だ腕の中で気絶しているリリアナを休ませる為、塔の中に入ろうと辺りを見回すと、すぐ近くに円形の穴が開いているのを見つけ、その穴を通って塔の中に入って行った。
-ネーバーク王国・ネーバス文明遺跡・???-
「ん…あれ?ここは…」
「起きたか?」
「ソウルさん…ここは?」
「地面が陥没して落ちた穴の先にあった謎の街にある謎の塔の中だ」
「え?…え~っと…え?」
急に情報量が多い事を言われたリリアナは、頭の中でソウルの言葉を何度も繰り返して理解しようとしたが、何度繰り返しても理解できず、頭を傾げながら疑問符を浮かべた。
「えっと~…」
「地面が陥没して空洞に落ちたのは分かるな?」
「えっと~…あれ?」
「…リリアナ?何処から記憶が途切れてる?」
「えっと、敵が合体?でしたっけ?それをして飛び上がった時、ソウルさんが私を…」
リリアナは、何かを思い出して声が徐々に尻つぼんでいき、逆に顔が赤く紅潮していった。
「ん?どうした?何処か痛いのか?」
「な!何でもありましぇん!大丈夫でしゅ!」
「おい!ちゃんと呂律が回ってないじゃないか!?どこかで頭をぶつけたか!?クソ!ちゃんと守ったはずなのに何処で…」
「大丈夫でしゅから!!何処も怪我していましぇんから!」
「馬鹿言うな!明らかにおかしいだろうが!少し調べるぞ!」
「ピャァーーー!」
ソウルは、互いの鼻先が触れ合いそうな位置にまで顔を近づけながら言うと、リリアナは謎の声を上げながら目を回して気絶した。
「おい!リリアナ!」
気絶したリリアナを心配したソウルは、熱や脈を図り、頭や体に負傷した所がないか調べてみたが、少し熱っぽいだけで体に異常は見当たらなかったので、とりあえずの応急処置として、アイテム欄から手ぬぐいと水がたっぷり入った革の水筒を取り出し、水筒の水で手ぬぐいを濡らして適度に絞った後、リリアナの額に乗せた。
「俺じゃこの程度しか出来ない…どうするか…」
ソウルはウィンドウを開き、従者・ペットタブからマギアを呼び出せないか試したが、チャット欄に赤い文字のアナウンスが流れた。
【アナウンス:現在 マギア は、パーティーメンバーと戦闘中なので呼び出せません。】
「駄目か…」
ウィンドウを閉じた後、どうしようかと考えながら、立っている場所から見える街に視線を向けた。
「何かないか探しに行こう」
そう思い立ったソウルは、街を探索している間にリリアナが目覚めてもいい様に書き置きを残した後、少し離れた場所に下に続いている螺旋構造の階段があるのを見つけ、その階段を使って下に降りて行った。
-ネーバーク王国・ネーバス文明遺跡・???-
「あ~そうか…」
階段を使って塔を降りたソウルは、最初に目についた建築物の中に入り、何か使えそうな物が無いか探してみたが、見つけた物は埃を被った食器や家具として使われていた物だけで、使えそう物は無かった。だが、埃を被った物を見た時に、この街を最初に目にした時に感じた違和感が何なのか分かった。
「この街には人…いや、生物がいないんだ。言わば死んだ街…ゴーズトタウンだ」
ソウルは、この街に居るのが1人だという事に少し孤独感を感じて、それを誤魔化す様に言葉にして出した。
「ここからホラー展開になるとか止めてくれよ…マジで…」
ゴーズトタウンがよくホラーの舞台になっているのを思い出したソウルは、周りに神経を注ぎながら、別の建築物に向かった。
「お?」
塔から少し離れた場所にある集合住宅の様な建築物に入り、部屋を1つ1つ調べて行くと、5番目の部屋で救急箱らしき物が押し入れとして使われていた場所にあるのを見つけて、箱を開けて中を確認してみると、現代で使われているプラスチックフィルムのような物でラッピングされた未使用の医療品が数多くあるのを見つけた。
「これは…未開封品だけど流石に使えないよな?」
救急箱の中にあった錠剤や粉薬、液体が入っている容器を見ながら言った後、すぐに使えそうな物が無いか探すと、薄い包装容器に入った小さい銃のおもちゃの様な物があるのを見つけた。
「これは…」
その銃のおもちゃのような物を手に取ってよく調べてみると、撃鉄部分に中身が入っていない小さな容器が付いており、銃口部分は金属の短い円柱があった。
「針が無い注射器…シリンジと言われる物か?」
包装容器の裏側を見たり、表側に戻しておもちゃの銃の底が見える角度に傾けながら、おもちゃの銃の正体に予想を立ていると、視界の右側でウィンドウが突然開き、着信音が鳴り始めた。
「マスター!大丈夫ですか!?」
「ああ、俺は大丈夫だがリリアナが何処か負傷したらしいからすぐ来てくれるか?」
「リリアナさんが!?分かりました!召喚してください!」
「分かった。それとアップル達にはマウントで降りてくる様に伝えてくれ。あの空洞結構深かったからな」
「了解しました」
マギアがそう言った後、ソウルは通信を切ってリリアナの所に戻ろうとした時、どこかで何かの金属が床に落ちた衝撃音が聞こえると、ソウルはその音に驚いて、咄嗟にリボルバーのグリップを握りながら音が聞こえた方向に体を向けた。
「おいおい…こんな風も揺れも無い所で物音がしただと?…ざけんな!何かいるって事じゃねぇか!」
ソウルは、高鳴った心臓を落ち着かせる為に深い呼吸をした後、手に持っていたシリンジを元の場所に戻して救急箱の蓋を閉じた後、アイテム欄の中に入れ、腰のホルスターから赤と緑の銃を両手で引き抜き、慎重にクリアリングしながら進んで行った。
「何も…いない?」
ソウルは、何かが突然飛び出して来てもいい様に慎重に進んで行ったが、出口に到着しても何も出てこなかった為、眉間に皺を寄せた。
「もし俺がここで「気のせいだったか?」みたいな事を言ったら何か起こるんだろう!?そうなんだろう!?俺はこういう事に詳しいんだ!出て来るなら早く出てきやがれ!」
苦手なホラー展開になった事に、ソウルは腹の底で重く冷たく暗い物を感じながら、その感覚を誤魔化す様にキレ声を上げたが、しばらく待っても、その声に反応した何かが出てくる事は無かった。
「くそ!なんなんだよ!」
何も出てこなかった事に悪態をついたソウルは、全力疾走でリリアナの所に戻ろうと思い立ち、リボルバーをホルスターに仕舞って出口を通ると、突然目の前に何かが落ちて来た。
「うわ!」
突然落ちてきた物に驚いたソウルは、バックステップで距離を取った後、落ちてきた物の正体を探る為に目を凝らしてみると、その落ちてきた物は人の形をしている事が分かった。更によく見てみると、その人の形をした物は上半身だけしか無く、胴体から金属製パーツや有機物に似た部品が伸び出ていた。
「…」
ソウルが、落ちてきた人型を観察していると、その人型が徐々に動き出し、ホラー系の映画やゲーム等で見る様な気持ち悪く動止する動きをした後、顔をソウルに向けて来ると、何かを求める様に這いずってきた。
「うわぁぁぁ!」
這いずって来る人型を見て、言葉に出来ない嫌悪感と恐怖で、全身に鳥肌が立つ様なゾワゾワ感が全身に広がって行くのを感じたソウルは、戦慄声を上げながら全力で走り出した。
「なんだよ!なんなんだよ!アレ!」
ソウルが、目尻に大粒の涙を浮かべながら叫ぶと、その言葉に反応したかの様に進行方向先の建築物から、先程の落ちて来た人型と同型の物だと思われる3体の人型が、滑らかさを失った機械の様にカクカクと不気味に動きながら続く様に出て来るのが見えると、ソウルは腰のホルスターから赤と緑のリボルバーを引き抜き、銃口をその3体の人型に向けた後、連続で引き金を引いた。
「倒せた!…ハハッ!なんだよ!攻撃が通るじゃねぇか!行ける!行けるぞ!」
ソウルが放った弾頭がが、3体の頭や胴体を撃ち貫いて部品を破壊すると、人型は力尽きた様に地面に倒れていった。そして、その姿を目にしたソウルは人型は倒せる敵だと分かり、徐々にテンションが上がっていき、先程まで感じていた嫌悪感や恐怖が消失していった。
「急がなければ!」
そのまま全力疾走で塔の中に入ったソウルは、塔にいるリリアナが無事でいる事を祈りながら、階段を駆け上がって行った。
ソウルが通った穴は、何か高温な物を使って開けた様な焦げ跡があります。何処からかジャズと女性が発狂した声が聞こえてきそうですが気のせいです。ここで何かが起こった事は事実ですが、今はもうただの穴です。何の事か分からない人は、起動する戦士の稲妻を見ましょう!見た後は甘々な稲妻を見て「ジャズの音が聞こえたら飯の時間だ」と言える資格を得てください。これを見ているのが女性だった場合は、稲妻なサッカーアニメを全話見て特殊な目覚めましょう。
どうだ!?ダイレクトかつステルス風なマーケティングだるぉ?
リリアナが気絶した理由?ソウルに抱き寄せられた時、初めて男と言う物を感じてしまったからです。まぁ、例の目覚めですね!
クリアリングには様々な意味合いがありますが、この場合は周囲に敵がいないか確認して進む事です。
謎の人型の正体は次回か次々回に分かると思います。
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