~サブクエスト[純人魚の涙]~ 前編
すみません!思った以上に執筆時間が取れませんでした!なので前編と後編に別れます!
次回更新は、2月6日0時です!
「おーいソウル~?ちょっといい~?ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど~」
「ん?なにを?」
ソウルが、製図台で大口径の銃の図面を引いていると、ホワイトローズから着信があり、緑色の通話マークを押して応答すると、開口一番で手伝いを頼んできた。
「今さ~皆でクエストをやってるんだけど、ちょーっと厄介な敵が出て来てさ~」
「そうなのか?まぁ、手伝うのはいいけど…俺で役に立てるのか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「…不安しか感じないんだが?」
「あはは!大丈夫大丈夫!今どこ?」
「アークライトのレンタル製作室だ」
「ん?レンタル製作室?なんか作ってたの?」
「今ちょっとデカい銃を作ろうとしててな」
「へぇ~そうなんだ~じゃあ、レンタル製作室の入り口前で待ってて~すぐ迎えに行くから」
「あいよ」
「あーい、じゃあまたあとでね~」
ホワイトローズとの通信が切れると、ソウルはウィンドウを消して首を傾げた。
「どうしました?マスター?」
「さっきホワイトローズから、厄介な敵が出てきたから助けてくれと言われたんだが、俺が力を貸さないと倒せない敵ってなんだろうなと思ってさ?」
「近接戦を仕掛けるのか難しい敵でしょうか?それとも遠い位置にあるギミックを作動させないと倒せない敵でしょうか?」
「前者は分かるが後者はどうだろうな?あっちにも何らかの遠距離手段を持つプレイヤーもいるだろ?」
「いえ、銃士ほど物を遠くに飛ばせる職業は他にありませんから、あり得る話かと思いますよ?」
「そうなのか?」
「はい、一応他の遠距離職も、スキル補正やアシスト等を使って遠くに飛ばせますが、飛距離によって威力が大幅に減衰しますので、遠くに飛ばしたとしてもスイッチ等のギミックを作動させる事は出来ないでしょう」
「銃士も飛ばした弾頭は威力が減衰するよな?」
「そうですが、他の遠距離職は数十%で下がる中、銃士だけがたったの数%だけなのです」
「火薬を使っているからか?」
「それとライフリングで弾を回転させて弾道を安定させているからですね」
「そう言う事か」
マギアの話に納得して頷いたソウルだったが、突然ハッとした表情をした。
「ここで話している場合じゃなかった!回復薬とかの準備しないと!急ぐぞ!」
「必要になりそうな物をリストアップしておきます」
「助かる!」
ソウル達は急いで競売所に向かい、回復薬などのアイテムを買い込んで準備を済ませた後、待ち合わせ場所のレンタル製作室入り口前に戻り、ホワイトローズと合流した。
-薔薇の女王・ブリッジ-
「それで厄介な敵ってなんだ?」
「この画像見て~」
ホワイトローズの飛行船のブリッジに移動したソウルが尋ねると、ホワイトローズはウィンドウを開いて、ブリッジの中心に向かって何かを投げる様な仕草をすると、中心に1枚の画像が大きく表示された。
「クラゲ…いや、タコか?」
ブリッジの中心に表示された画像には、巨大なクラゲにタコやイカの触手を、無理やりくっ付けた様な見た目のモンスターが映っていた。
「こいつの名前は、合成魔獣「スクイッドジェリーフィッシュ」。こいつに近づくと全体に雷属性のダメージフィールドを張って来るし、そのフィールドには麻痺のデバフもあるから厄介なんだよねぇ~…」
「弱点は分かってるのか?」
「サッパリだね~。調べるにしても雷のダメージフィールドですぐ全滅しちゃったし~」
「ホワイトローズ達が全滅?…そのダメージフィールドのダメージってどの位食らうんだ?」
「その事については、主様の代わりに私がお答えいたします」
ソウルが、ダメージフィールドの事について質問すると、ホワイトローズの後ろに立っていた1機のメイドが一歩前に出てきた。
「ご挨拶するのはこれが初めてですね。私、そちらの愚姉の妹で名前を「ヒフミ」と申します。今後ともよろしくお願い申し上げます」
「愚姉ですって!?いいでしょう!宣戦布告と判断します!…戦争だゴラァ!」
ヒフミにキレたマギアが、両手を武器に換装して暴れようとしたが、ソウルがウィンドウを操作して、従者・ペットタブの追従設定を解除すると、マギアは喊声を上げながら消えて行った。
「え~っと…失礼した。こちらこそよろしくお願いします。早速ですが教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、ご説明します。スクイッドジェリーフィッシュが張ったダメージフィールドは、毎秒8000~8900のダメージを負います。そして、発動から30秒後に解除されるのですが、攻撃しようと近づくと、再びダメージフィールドを張ってきます」
「そのダメージフィールドは、床から伝わってきましたか?それとも空間から?」
「えっと~確か最初は床だったよね?」
「はい。次に空間か壁からでしたね」
「空間の時に何か変った事が無かったか?」
「何か変わった事~?…あ~そう言えば~空間の時はイカのゲソが、何もない空間を突いたら張られたね~」
「そうですね」
「ふむ…」
ヒフミとホワイトローズから話を聞いたソウルは、暫くブリッジの中心に表示された画像を見ながら考えると、1つの推測を言葉にした。
「多分だが、それぞれのクラゲの触手やタコの触手そしてタコの触手は、同じダメージフィールドを張って来るが、張る場所の違いがあるんだろうな」
「おー!説明と画像だけで良く分かったね~!僕達がそこに至るまで結構時間が掛かったよ~!」
「流石ですね」
驚く2人にソウルはリアクションせず、話を続けた。
「それとここの赤い玉みたいな奴…すごく怪しいよな?」
「ん?何それ?」
「クラゲの胴体部分ちょっと拡大してみ?」
「どれどれ…」
ソウルに言われた通り、ホワイトローズはウィンドウを操作して拡大していくと、クラゲの無数にある触手に隠れる様にして赤い玉らしき物が映っていた。
「あ!なんだこれ!?こんなのあったのか?!」
「すごく怪しいよな?」
「怪しいね~すごく怪しい…」
「まずはこれらの事を踏まえていろいろやってみよう」
「そうだね~」
ホワイトローズはソウルに頷き、雑談を交えながら他に何か映ってないか、画像を隅から隅まで探し始めた。
-深海ダンジョン・アリグナックの寝所-
「お帰りなさい隊長。彼は来てくれましたか?」
「連れて来たよ~。それにあいつについての新情報も見つけてくれたし~」
「それは凄いですね!それは何ですか?」
「全員集まってから話すよ~」
「了解です。すぐ呼んできます」
「お願い~」
海の底にあるダンジョンに到着すると、ダンジョン内で待機していたKUNIMOがホワイトローズに話しかけてきた。そして、攻略の糸口が見つかった事に驚いた後、仲間を呼びに向かった。
「なぁ?ちょっと聞いていいか?」
「なに~?」
「ホワイトローズ達の飛行船ってどの位かかった?」
「オカーネン?」
ホワイトローズの言葉に、ソウルは頷いた。
「えっと~全部で~…」
ホワイトローズは、頭の中でいくら掛かったか思い出しながら指折り数えて行き、全て計算し終わった後、ソウルに両手の指で8を作って向けた。
「これの大体10桁だね」
「80億…だと…」
「買ったらの話ね~私達でもそんなオカーネン用意できないから、ソウルをレイド戦に連れて行った時の敵を倒しまくってようやくってかんじだね~」
「そう言えばそんな事言っていたな…」
ソウルは薔薇の女王を見ながら呟き、ホワイトローズに連れられて塔にいた「機造龍・クイデゥスデウスコンテーレ」の事を思い出していると、仲間を呼びに向かっていたKUNIMOが戻ってきた。
「隊長!ソウルさん!集まりました。作戦会議テントにどうぞ」
「分かりました」
ソウルとホワイトローズは、KUNIMOの案内で、何十人も入れそうな大きなテントの中に入って行った。
-深海ダンジョン・アリグナックの寝所・作戦会議テント内-
「ここをよく見て欲しい」
KUNIMOに案内されたテントに入ったソウルとホワイトローズは、飛行船にいる時に見つけた情報をプレイヤー達に伝え、テントの中心にあるホログラム装置に表示された、スクイッドジェリーフィッシュの胴体部分を拡大して、よく見るように伝えた。
「そんな物があったんですね」
「ただの模様だと思ってたけどよく見ると玉だな」
「全然気が付かなかった」
スクイッドジェリーフィッシュの胴体に、赤い玉があるのを見たプレイヤー達は、それぞれ驚きの声を上げた。
「この赤い玉が何を意味するのか分かりませんが、何かがある事は確かだと思います。なのでそれを調べる為に2~3回くらい威力偵察したいと思うのですがどうでしょうか?」
「そうだね~」
「私も行きたいです」
「威力偵察か…なら損耗率が低い奴が行くべきか?」
「なら私はお留守番だなぁ…」
「私行けます!」
「はいはい~行ける人は3分後にボス前の扉に集合ね~」
ホワイトローズがそう言いながら、パン!と1拍すると、テントに集まったプレイヤー達は急いで準備を始めた。
ソウルがどういう飛行船を作ろうとしているのか…飛行船!ご期待ください!
予約投稿していると割り込み投稿が出来ないので、後日288話として移動させます。




